薬物依存に匹敵するほどの多幸感と現実逃避、そして常習性を兼ね備えた行為とは

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(・・あぁ、またこの季節がやってきたのか)

気が付けばあと二日で12月。ところが今日の都内は暖かく、冬用ジャケットでは暑すぎるほどの穏やかな気候に恵まれた。だが夜になるとさすがに冷え込み、気温は一気に一桁台へと突入。

そんな中、冷え冷えとした分厚いコンクリート壁の自宅へ帰還したわたしは、帰宅と同時にエアコンのスイッチを押した。

(あったかくなるまでに、10分はかかるな・・)

設計ミスというか杜撰な施工のため、壁の内側に設置された壁掛け式のエアコンの風は、自身が埋め込まれた小部屋の中を暖めることはできても、我が家全体を暖めることはできない。とんだ欠陥住宅である。

 

仕事に取り掛かるにも、寒さに震えながらでは効率がわるい。ある程度、部屋が暖まってからでなければ気分も乗らない——。

・・いや、一つだけいい方法がある。だがアレをやるとその後が辛い。ものすごく辛いのだ。しかし今日は少し余裕があるため、仮に失敗したとしても取り返せるかもしれない。・・よし、やるか。

 

こうしてわたしは、今シーズン初となる"アレ"を敢行した。そう、「布団に潜り込む作戦」だ。

この行為は、冷えた体を温めるには即効性がある上に、安心・安全・確実に暖を取る手法といえる。とはいえ、その効力を凌駕するだけの"強烈な後悔"が付き物であることを、忘れてはならない。よって、その後悔を受け入れるだけの、懐の広さと覚悟が必要なのだ。

 

しかしこの行為は、薬物に匹敵するほどの圧倒的な多幸感とパーフェクトな現実逃避、さらに、恐ろしいほどの常習性を兼ね備えているわけで、一度味わってしまうとその甘い罠から抜け出すことは困難となる。

そんなことは百も承知で、愚かなニンゲンどもは冬が来るたびに布団へ潜り込んでしまうのだ。そして例外なく、わたしもこの罠に足を突っ込ん・・いや、柔らかな羽布団へと足を突っ込んだのである。

「アレクサ、30分後に起こして」

しっかりとアラームをセットすると、わたしはしばし保温行為に身を委ねることにした。

 

 

(・・まぁ、こうなるわな)

幸せな夢、いや、懐かしい夢を見ていたような、どこか甘酸っぱい感覚に溺れながら、スマホに手を伸ばすと時間を確認した。言うまでもなく、翌日を迎えていた。

 

およそこうなることは承知していた、というか、30分のアラームできちんと布団から抜け出たことなど、一度たりともなかったではないか。それなのにまた、同じ過ちを繰り返してしまったのだ——。

 

後悔に打ちひしがれるわたしは、ふと、ぬくぬくの足元に気がついた。

(そうか、このヤクの靴下のせいか!)

先日、友人から「ヤクの毛でできた靴下」を購入したわたしは、その恩恵に与っている。断トツで温かい、肌に触れてもチクチクしない、感動的な高保湿というのは言うまでもないが、ヤクの実力は「蒸れない」「抗菌効果」の二点に集約される。

これまでの厚手ソックスは、保温性が高いほど足も蒸れて不快な思いをさせられた。そのため、靴下を履いたまま布団に潜り込めば、しばらくすると足先の暑さで目が覚めて、寝ぼけまなこで脱ぎ捨てるのがお決まりだった。

ところがヤクの靴下は、布団の中でも足が蒸れないのだ。つま先までポカポカであるにもかかわらず、靴下に包まれた生足はサラサラで、快適な状態を保っているから素晴らしい。

 

——このような幸せを、たかが靴下一つで手に入れることができるとは。まさに、モンゴル発"ヤクの奇跡"というやつか。

 

 

今年の冬はヤクのせいで、幸せと不安が同居するに違いない。

それにしても、足元を温めることでここまで快適な睡眠が得られるとは、大して期待もしていなかったが結果的に超ラッキーである。

 

サムネイル by 希鳳

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