ビジネスパーソン(笑)

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ハッキリ言わせてもらおう。わたしは頭のいい人間が嫌いだ。

アイツらは難しい言葉を使う。それと横文字や略語を使いたがる。

 

さらに、賢いことをひけらかす。まぁ事実だから仕方ないのだが、バカ側からするとムカムカする。

意味の分からない難しい単語を並べて、それをあたかも簡単なことのように書いたりしゃべったりする。

 

中でもムズムズが止まらない言葉がある。それは「ビジネスパーソン」だ。

 

一昔前ならば「ビジネスマン」と呼ばれていたであろう人々が、いまでは「ビジネスパーソン」に格上げされている。

まぁこれは「ビジネスマンじゃ男性を指すため、女性差別にあたる!」などという、言葉尻を捉えたつまらないトラブルが発端と思われるが。

 

しかしなんだよ、ビジネスパーソンって。

その呼び方だけで「仕事ができる人」って、勘違いしちゃいないか?

 

あー、ムズムズする。

 

 

たまたまSNSで見かけた「ビジネスパーソン」が登場する記事に目が留まった。

ーーうむ、サッパリわからない。

 

金融や経済、政治や世界情勢にめっぽう疎いわたしは、この手の内容の記事はまったく頭に入ってこない。

さらには「ビジネスパーソン」などというキーワードが出てきたら、もはやニヤニヤが止まらない。

 

ーーダメだ、これは笑わせるためのワードではない、真面目なワードなんだ。

そう言い聞かせながら読むので、なおさら意味不明で理解できない。

 

とそこへ、何とも魅力的なオモシロワードが飛び込んできた。

「農業パーソン」

このキーワードにわたしは食いついた。

 

当然ながら読み間違えだ。農家の話で「営業パーソン」という単語が登場したため、勝手に組み合わせてしまったのだ。

しかしわたしはこの言葉が気に入った。

 

「ビジネスパーソン」というと、スーツ姿でツンとすました偉そうな奴のイメージ。

しかし「農業パーソン」はどうだ。麦わら帽子に首から手ぬぐい、フフンと得意げな表情の、どこかカワイらしい人物像が浮かぶ。

 

まして、台風の中で収穫作業を命じられるような農業パーソンからすれば、たまったものではないだろう。

ププーッ!!

たしかに、台風の中で収穫作業なんぞを命じられたら、農業パーソンもキレるわ。

 

こうして、記事の内容は難しくて理解できなかったが、「農業パーソン」というオモシロワードを入手したわたしは、満足を得ることができた。

 

(正確には、「営業パーソン」の誤読)

 

 

「台風の中で収穫作業」の件(くだり)で思い出したことがある。

 

数年前のこと。台風直撃の那珂川は大雨で増水し、川の上を歩けるんじゃないかと勘違いするほどの、重たいチョコレート色の濁流がザブザブと渦巻いていた。

そんな危険な状況だが、わたしは鮎をとりに梁(やな)へと向かった。

 

梁とは、木や竹で編んだ「すのこ」のような滑り台を川の中に設置し、上流から流れてきた鮎が打ち上げられる仕掛けのこと。

ちょうど産卵期にある鮎は、水かさの増えた川を下って海へと向かうはず。その途中にある梁で、鮎を捕まえるのだ。

 

叩きつける豪雨に逆らいながら、わたしは濁流をかき分け突き進む。

梁には大量の鮎がビチビチと跳ねている。

 

ーーこれこそが、台風の中で収穫作業を命じられる「漁業パーソン」というやつだろう。

 

 

誤解のないように言っておくが、記事の著者をディスる気など毛頭ない。

ただ、面白い造語(農業パーソン)を発見した喜びを表すために、過去の思い出を引っ張り出したまでだ。

 

人間、なにごとも「面白い」と思うところに成長があり可能性がある。

 

このブログの読者ほぼ全員が「ビジネスパーソン」であろう諸兄諸姉。

自分にしか分からない、くだらない面白さで構わない。人生のちょっとしたスパイスとして、クスっと笑えるオモシロワードを探してみてくれたまえ。

 

 

Illustrated by 希鳳

 

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