悪魔に憧れた私の末路

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結局、なぜ人さし指のツメに亀裂が入ったのかを考えてみたところ、"十年ぶりくらいに施したネイルのせいだ"という結論に至った。

 

 

日頃から"モテるオンナ"となることを渇望するわたしは、オシャレの基本である足のツメだけは、いつも欠かさずネイルを載せてオンナらしさを保っている。

なんせ冬でも裸足になる機会が多いため、いつどんな時に運命の出会いが訪れてもいいように、足の手入れは怠らないようにしているのである。

 

ちなみにわたしが施しているネイルは、ジェルネイルとマニキュアの間の子であるシェラックだ。

巷で人気のジェルネイルは、厚みを出せたり様々なアートが可能だったりと、オシャレなデザインで指先を飾ることができる。その一方、ツメの表面を傷つけてジェルを載せることでツメに負担がかかったり、ネイルの厚みで巻き爪になりやすかったりする。

そんなデメリットを解消したのが「シェラック」というわけだ。費用もジェルより安価でマニキュアよりも長持ちするため、ゴテゴテのアートを希望しなければ、シェラックのほうが圧倒的にオススメである。

 

ではなぜ、足のツメだけにネイルを施しているのかというと、手に比べて足のツメは伸びるのが遅いため、根元の自爪が気にならないからだ。

しかし手のツメは日々着々と伸びるため、すぐに根元が現れて残念な状態になってしまう。それに加えてわたしは、手のツメは爪切りではなくヤスリで削る習慣があるため、二日に一度ツメ研ぎを行っているのだ。

 

そのため、せっかくのネイルもすぐに見た目が崩れることを懸念し、足だけにとどめていたのである。

(正確には、手足両方まかなえるだけの予算がない・・という理由だが、そこはシロガネーゼの面子を保つためにも伏せさせてもらおう)

 

そんなわたしが突然、手の指に真っ黒なシェラックを載せたことには事情がある。そう、悪魔になりたかったからだ。

 

アニメ「黒執事」を見たわたしは、その主人公であるセバスチャン・ミカエリスに興味を示した。「あくまで、執事ですから」が口癖の彼は、日常的には完璧な執事をこなしているが、その実態は"悪魔"である。

13歳で名門貴族・ファントムハイヴ家の当主となった、シエル・ファントムハイヴと契約を交わしたセバスチャンは、「シエルが復讐を遂げるまでは、必ず守り抜く」という条件の元、復讐が終わったらシエルの命をもらうことになっていた。

 

そんなこんなで、イギリス女王陛下からの命令を受けて、様々な事件解決や奇妙な現象の真相を暴く・・というストーリーなのだが、普段は白い手袋をしているセバスチャンが素手になると、そのツメには黒いマニキュアが施されていた。

それを見たわたしは、こう思った——カッコイイ。

 

こうして厨二病を発症したわたしは、居ても立っても居られずに友人のサロンで真っ黒なツメへと変身を遂げたのだ。

 

 

ツメの先っぽが剥がれてしまうのは、ピアノのせいなのかはたまた柔術のせいなのか——。

 

悪魔になったわたしは、わずか数日で人さし指と中指の先端のシェラックが削れてしまったことに、ショックを隠せなかった。

ラグビーボールのような形に剥がれたシェラックの下から、自爪が見えている。しかも黒色の一部が欠落しているため、妙に目立つのだ。

 

ネイリストの友人からは「黒いマニキュアでカバーして!」といわれたが、そんな手間のかかることができるならば既にやっているわけで、当然ながら放置した。

こうしてわたしは、先っぽだけ自爪の状態でピアノの練習を繰り返した。しかも発表会を控えているため、毎日せっせと指先に負担をかけ続けたところ、いつの間にかシェラックと自爪との境い目あたりに白い線が現れたのだ。

 

そして3週間が経過した頃、人さし指と中指のシェラックは完全に剥がれ落ち、自爪に刻まれた白い線は亀裂となって、わたしの肉に攻撃を始めたのである。

 

(ネイルはダメなのか・・・)

 

この微妙な苛立ちと苦痛を考えれば、少なくともピアノを続けるうちはネイルなどするべきではない。だがわたしは、悪魔になることも諦めきれなかった。

痛みからの解放か、悪魔への憧れか——。

6月6日6時生まれのわたしは、真剣に悩むのであった。

 

Illustrated by 希鳳

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