人外阿呆暴食決戦

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——わたしは間違いなく、どうかしている。

いったい、いつからこのようにおかしくなってしまったのか、記憶をさかのぼっても明確には思い出せない。ただ、気がつけばわたしは理性のコントロールができない「獣」になっていた。

ある種の"闇落ち"というべきか、とにかく、こんな毎日を繰り返していたらわたしは廃人と化すだろう。

 

 

(ポテトチップスマヨチーズ味?うーん、とりあえず試してみるか)

インドカレーのテイクアウトを待つ間、わたしは目の前のセブンイレブンで菓子を物色していた。

 

コンビニといえば、普段は自宅からすぐのナチュラルローソンを利用している。そのため、ナチュロならではの一風変わったラインナップばかりで、一般的な菓子と触れ合う機会は少ない。

たとえばオーガニック、ロカボ、外国製など珍しさと値段は一級品だが、"一般的な菓子"を求めるわたしにとっては、なんというか性に合わない。

それでも、自宅とは逆方向にあるセブンを訪れるのは月に一回程度なので、なかなかの貴重なタイミングといえるだろう。

 

(白いダース・香る苺、三層仕立てのチョコだと!?)

セブンに陳列されている菓子は、どれもこれも懐かしいようなホッとするような、あれこれ目移りしてしまう庶民派揃い。どうせならこの機会に、興味のある菓子をすべて買い漁っておこう——。

 

さらにセブンイレブンは、PB(プライベートブランド)の商品が幅を利かせているため、見覚えのある菓子が不思議な名称で並べられているのも面白い。そして、本質を見抜くわたしはメーカーやブランドにこだわらないので、同じ味で値段が安いのならば言うことナシ!ということで、セブンプレミアムを目一杯カゴへ放り込むのであった。

このような事情からも、およそ一週間分のチョコやスナック、クッキー、バウムクーヘンを購入したわたしは、注文しておいたカレーをピックアップするといそいそと帰宅した。

 

 

テーブルにずらりとならんだセブンイレブンの菓子たち。目のやり場に困るほど魅力的な商品ばかりで、これはまさに圧巻である。

 

菓子はさておき、わたしはほうれん草とマッシュルームのカレーとエッグキーマカレーをすすりながら、チーズナンを頬張った。

「え?ナンを別に食べるの!?」

たしかに、ナンにカレーをつけて食べるのが普通かもしれないが、チーズナンに限ってはチーズナンだけで食べるのがわたし流。

そのため、ライス代わりにオニオンキャベツサラダ(といっても、大量のスライスオニオンと千切りキャベツが詰め込まれただけのパック)をカレーに浸し、辛さを紛らわせる工夫を施しているのだ。

 

二種類のカレーを食べ終えたわたしは、テーブルを埋め尽くす大量の菓子たちに一瞥をくれた。

(一週間はもたなくても、数日は凌げるだろう)

そう思いながら、「濃厚で香り豊かなバタークッキー」に手を伸ばした。クッキーといえば、ウォーカーのショートブレッドフィンガーが大好物だが、たまには安物のクッキーを味わうのもわるくない。

続いて、お口直しに「とろけるくちどけ抹茶生チョコトリュフ」をポイポイと放り込んだ。生チョコのとろけるような食感と抹茶パウダーの粉っぽさが、抹茶という高貴な存在を際立たせている。

甘いもの二連チャンの次は、さすがにしょっぱいものだろう。「ポテトチップス濃厚コンソメ味」をバリっと開封すると、手を汚さないようにガサガサと口へと流し込んだ。——まさに、濃厚コンソメ味である。他に感想などないほど、濃厚なコンソメの味がする。

 

こうしてわたしは、その後も「マカダミアチョコレート」「カルビーポテトチップスマヨチーズ味」「ドリトスメキシカン・タコス味」「ジャイアントカプリコいちご」「ドリトス マイルドソルト味」などなど、手当たり次第に菓子を食い漁った。

まるでなにかに憑りつかれたかのように、次から次へと目に入った菓子を破っては口へと放り込むわたしは、もはや獣のよう。言わずもがな、理性が欠落してしまった以上、本能むき出しの"人ならざるもの"と化してしまったのだ。

 

(一週間分の菓子が、たったの一時間で姿を消してしまった・・・)

 

 

こんな驚きと後悔を、ここ数日、いや、ここ数週間繰り返しているわたしは、確実にどうかしている。胃袋が肥大しているのは前からだが、輪をかけて中枢神経が麻痺しているのだ。

それでもきっと、きっといつかは、この「極ノ番・くいすぎ」の呪力が切れる時がくる。その時まで、どうかヒトとしての意識を保ち続けられるよう、今はただ祈るのみである。

 

——助けてくれ、五条先生。

 

サムネイル by 希鳳

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