「フォートナイトやめてエーペックスはじめた」
突然、友人が宣言してきた。
見た目は上品で気立てのいい彼女、なんとゴリゴリのゲーマーだ。
なにを言っているのかよくわかっていない私に説明が始まる。
「ゲームで自分の成長をみるならTPSよりFPSなんだ」
用語解説をしよう。
TPSとはThird Person Shooterの略で、視点が第三者となるスタイルのシューティングゲーム。
一方、
FPSとはFirst Person Shooterの略で、キャラクター視点で操作することを指す。
オンラインゲーム界で名を轟かせる彼女は、フォートナイトでビクロイ(ビクトリー・ロイヤル)を量産するスゴ腕。
ちなみにフォートナイトは有名なTPSのゲーム。
そしてビクロイは、フォートナイトのバトルロワイヤルで最後の一人に勝ち残ることを意味する。
ビクロイするにはそんじょそこらのゲームスキルでは無理。
仮に一般人が、一日2時間フォートナイトにかじりついたとして、コツを掴めれば3か月、鈍い人なら一生無理というレベル。
それを彼女はたった2日でビクロイし、その後も毎日記録更新している。
ビクロイすることに飽きた友人は、自分自身のプレイヤースキルを再確認するためにFPSのゲームへ移った。
その選んだゲームこそがエーペックスだ。
「弱い武器やアイテムで勝つのが美しい。そのためにはプレイヤースキルが必要」
これが彼女のポリシーらしい。
FPSならば攻撃の精度が確認できる。
たとえば「ヘッドショット」が確実ならば、威力の低い武器でも敵を倒せる。
そのためには瞬時に敵の頭を狙えるスキルが必要。
自分自身でプレイヤースキルの成長を感じられる点がFPSの醍醐味だという。
単なるバトロワで終わらせないあたりに、ゲーマーのプライドとシューティングゲームの奥深さを感じた。
FPSはキャラクター視点のため、ゲームへの没入感が著しい。
これに対してTPSは、ゲーム全体を俯瞰しつつ客観的に進めるのが特徴。
この「視点の違い」について、ふと思うことがあった。
*
私が憧れる記事のテイストは、強い口調でビシっと言い切るロジカルな一本だ。
しかしどう見てもロジカルというよりエモーショナルな私。
かつ、ライティングスキルも低い。
そんな私が背伸びをした原稿を出すと、編集長から嫌味を頂戴する。
「なにが言いたいのかわからない」
バッサリ斬られてごっそり手直しされるのがオチ。
読み直してみると、たしかに何が言いたいのか自分でもわからない。
じゃあ一体、どんな原稿なら私は書けるんだ?
自己分析した結果、私目線の勝手気ままなテイストであれば書ける、というところへ着地した。
ゲームモードでいうところの、FPSだ。
自分目線で深部までもぐり込むことができ、エビデンスや他人の意見を必要としない。
その反面、原稿への没入感が先行するため客観性を欠き説得力に乏しい。
さらにキャラクターとの一体感が強いので、視点変化についていけず読み手が3D酔い(いわゆる画面酔い)しやすい。
全体を見渡せるTPSモードならば、一目で状況を把握できるので理解が早い
また第三者目線ゆえ、誰もが自分自身に落とし込みやすく、消化しやすい。
この「視点のちがい」というやつが、私が目指す記事の本質的な違いだったのかーー
*
「FPSとTPSは視界がまるで違うから、プレイヤー側も得手不得手はあるよ」
ゲーマーの友人は言う。
もちろん好き嫌いのレベルも重要だし、プレイしたいゲームのモードが限られていれば選択の余地などない。
しかしそのゲームに何を求めるのか、自分はどういう目的でゲームをするのか、を考えると自ずと好きなモードが決まる。
・・なんてカッコいいことを言っても、実際はやりたいゲームをやるしかないわけで、モードによってゲームを選ぶわけではないだろう。
自分目線で主観的に相手を見ることと、自分と相手を一歩引いたところから客観的に見ることと、そもそもの目線が異なる。
それを同じモノサシで比較すること自体に無理がある。
私は、苦手なモードを攻略するより得意なモードで戦うことを選ばせてもらう。
なぜなら、常に圧倒的に勝ち続けたいから。
Illustrated by 希鳳
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