右足親指氏

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本日は、わたしの右足の親指について考察してみようと思う。いったい今、氏(親指)に何が起きているのかを――。

 

なぜこのようなことを思いついたのかというと、一週間ほど前に「氏」を怪我したことによる。わたしが趣味の一つで続けている「ブラジリアン柔術」という競技は、格闘技の側面もあるため怪我はつきもの。そして4年もやっていると、突き指やちょっとした靭帯損傷は怪我のうちに入らなくなる。肋骨や手足の指にヒビが入ったとしても、「あ、やっちゃったかな?」くらいの感覚。

頚椎や腰椎、膝など主要な椎間板や靭帯を痛めた場合はさすがに怪我と認識するが、それ以外は「慣れ」で解決できてしまう対応力こそが、柔術の素晴らしい点といえる。

 

さて、わたしの右足親指氏は現在、絶賛肥大中である。痛めたきっかけは、練習中に相手の尻とわたしの氏がクラッシュしたことによる。しかしこれは完全に自爆だった。同じことを違う人がやったならば、クラッシュせずに親指は相手の尻の下へ滑り込んだはずだからだ。

なぜなら、わたしの親指はやや上向きに固まっているのだ。

 

その昔、あまりのムカつきを抑えられずに右足で大木を蹴ったところ、不運にも親指を骨折した。しかしドクターから怪我の原因を聞かれた際に、正直に答える勇気がなかったわたしは、病院を受診しなかった。そのため受傷部位の固定もリハビリも怠り、結果的にわたしの右足親指はそのまま固まってしまったのだ。

さほど困ることもないだろう、とたかを括っていたのだが、たとえば床に落ちたペンや靴下を拾う時、左足では拾えても右足では拾えない。あるいは、足でジャンケンをしようとしても、右足で「グー」は作れない。

このように、日常生活において微妙に困る人生を強いられることとなってしまったわけだ。

 

さらに悲惨なのは、真っ直ぐに硬直した親指氏に付着する「爪」が、柔術を始めてからやや上向に生えてくるようになったこと。そう、天井に向かって爪が開いていくかのような、美しくないカタチになってしまったのだ。イメージするならば「三味線のバチ」のようで、湾曲せずにピーンと平らな爪はとてもカッコ悪い。

そのカッコ悪さを紛らわすためにも、足の爪にジェルネイルを施すことにした。現在は、美しい赤の象徴である「フェラーリレッド」に染めている。これならば爪の形が悪くてもモテるに違いない、と踏んでいるわけで。

 

そんな右足親指氏は今、横から見ると「いなり寿司」のような膨らみを見せる。元からいびつな形をしていた氏だが、先日のクラッシュ後にさらに肥大し、いなり寿司を彷彿とさせるぼってりとした不格好な姿となってしまったのだ。

そして問題は、あの衝撃で痛めたのは「爪」なのか「靭帯」なのか「両方」なのかということ。爪は真っ赤に染まっており、内出血や色の変化が確認できない。氏の第二関節はやや青く変色しているが、さすがに折れてはいない。しかしぶっとく腫れあがった氏は、根元からパタパタ動かすことはできても、途中で曲げることや力を入れることはできない。

 

この状況でもっとも厄介なのは、いずれ爪が剥がれることだ。せっかくのジェルネイルが無駄になる。よって、今回のクラッシュにより爪に被害が及んでいないことを、心から祈りつつ過ごしている。

爪がクラッシュすると、数日~数週間後に爪が丸ごとポロっと剥がれる。これまでも何度かジムの若い男子に、

「あ、あの。爪が落ちてました…」

と、恐る恐る剥がれた爪(ジェルネイル)を届けてもらったことがある。爪が剥がれる頃には新たな爪が生えてきているので、実際に爪が取れても痛くはない。だが親指のデカい爪、しかもジェルでキレイに色付けされた爪が、白いマットにちょこんと落ちていたら、男子にとっては恐怖だろう。

 

というわけで、爪の様子は分からないが、どうかくっ付いていてもらいたいと切に願うのである。

 

サムネイル by 希鳳

 

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