グレート・ムダ/水平器とガンダムの浪漫

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現在の住み家へ引っ越した当時、棚やベッドを作ってくれた友人の水平器を借りパクし、インテリアとして飾っている私。

他人のことを言えた義理ではないが、大工でもないしDIYが趣味でもないのに水平器を持っている人間は珍しい。

 

「俺も水平器は2つ持ってるぞ。

しかも一つはレーザー照射できるスグレモノだ」

 

でたでた。

「オレ自慢」で名をはせるポールの登場。

(レーザー水平器って、オマエは大工か?)

 

「しかし特段、使い道はないのだが」

 

一般家庭に水平器があること自体珍しいが、レーザー水平器という全く使いこなせない代物を所有するポール。

 

仮に子どもが、

 

「レーザーかっこいいから水平器ほしい!」

 

なら分からなくもない。

ましてや「使い道」などというつまらない理由もいらない。

 

しかし大のオトナが、しかもほぼ引きこもりのオッサンがレーザー水平器など、宝の持ち腐れ以外にどう表現したらいいのか。

 

実際にレーザー水平器を仕事で使用している友人に尋ねてみた。

 

「ふつうの水平器は実物に対してレベル(水平)を測るもの。

レーザーが出る水平器は、実際に測れない場所で使うものだね」

 

たとえば、建築現場や電気工事など規模の大きな作業において、図面通りの正確な寸法を再現するためにレーザー水平器を使う。

 

地面は水平ではない。

よって基準点に水平器を設置し、そこからレーザー光を飛ばして遠距離のレベル(水平)を確認する。

 

具体的には、測定が必要な場所へ数メートル間隔で杭を打つ。

基準点から杭に向かってレーザーを照射し、光が当たる部分に印をつける。

そして杭と杭の印をつなぐことで水平が保てる、という仕組みだ。

 

室内での使用方法としては、ポスターや壁紙を貼るときに活躍する。

大きな壁紙や複数のポスターを貼る際にレーザー光で高さを揃え、それに沿って貼ればいい。

 

このようにレーザー水平器を使うことで、離れた距離の高さや角度を調整することが可能となる。

 

作業現場の必需品ともいえるレーザー水平器。

その使い方について「間違えてる」を通り越した愚か者こそが、ポールだ。

 

「壁にレーザー発射して『かっけー!』以外に、使い道あるか?」

 

さらに間髪入れず、

 

「っていうか俺の持ってるやつ、(十字に)赤いレーザー発射するんだぞ、マジかっけぇ!」

 

現場で水平器を使って仕事をしている人々に謝れ。

 

 

そういえば「ガンダム携帯」を持っている友人がいる。

 

2010年に限定販売されたものだが、この10年間で一度も使ったことはない。

それどころか基本料金を毎月払い、決して鳴ることのない携帯電話を大切に充電器に載せているとのこと。

 

これまでに支払った基本料金を計算したところ、ざっと15万円は超えている。

 

「だって着信音がカッコイイんだもん」

 

本人しか知らない電話番号ゆえ、自分で自分に電話をかけて着信音を堪能する。

しかし最初の数回以降、その着信音すら聞いていないらしい。

 

「基本料金を払う必要って、あったの?」

 

私が尋ねると、

 

「当たり前だよ、そうでなきゃ死んでるのと同じじゃん」

 

目を輝かせながら友人は断言する。

 

携帯電話は生き物ではないだろう。

しかし彼のなかでは「生きている」のだ。

 

電波を受信する=ガンダム携帯は生きている、ということらしい。

 

ちなみに電波を受信しなくてもアラームや計算機、電話帳の機能は使える。

さらにアラームには「戦いへの恐怖」という、ガンダムが出撃するときに流れる有名な曲が入っている。

 

それだけでも十分楽しめるじゃないかーー

 

本体価格10万円、3G通信のガンダム携帯。

時代は5G通信へ移行しつつあり、ガンダムの死期は近い。

3Gが強制終了となったとき、友人はどうするのだろうか。

 

「いまは電波がつながってるから生きてる。

3Gが終わったら『充電してれば生きてる』ということにするよ」

 

(だったら今までも・・)

 

野暮なツッコミは禁物。

俗にいうガンヲタの神髄に触れた瞬間だった。

 

 

人は「無駄にカッコいい」という要素で満たされる部分がある。

そこには根拠も理由も存在しない。

 

意味のない無駄こそが、彼らの人生を豊かに潤しているのだと信じたい。

 

 

Illustrated by オリケン

 

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