もうすでに春ですよね?

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洗濯にまつわる話で、どうしても我慢できなかったことが二つある。いずれも納得はしていないが、そうせざるを得ない状況を耐え忍んだ末、満を持して下した苦渋の決断であることを理解してもらいたい。

 

 

まず一つは布団カバーの話だ。昨年購入した高級羽布団にくるまって、幸せな睡眠時間を満喫する私。春も本番を迎え、たまに寝汗をかく季節となった。そこで、布団カバーを洗濯することにした。

天気は快晴、気温も20℃を超える洗濯日和の朝を選んで、私は張り切って洗濯機を回した。じつは先月あたりから「深夜の騒音について」という注意書きが、これ見よがしにエレベーターに貼り付けられている。まさか私ではないと思うが、若干のビビりと万が一のため、夜間に洗濯機を回すことを控えてきた。

だが朝ならばさすがに文句は言われまい、ということでなおさら張り切って「スタート」を押したのだ。

 

(とはいえ我がマンションは、ベランダに洗濯物を干してはならない掟があるため、天気が良かろうが悪かろうが、洗濯物の乾きには直結しないのだが)

 

洗濯後、浴室に設置されている突っ張り棒に布団カバーを干すと、乾燥ボタンを押して家を出た。

 

帰宅する頃には、布団カバーはカラカラに乾いていた。さっそく羽布団を押し込むと、カバーの四つ角の輪っかに布団を留めて、フワフワで清潔な掛布団を完成させた。

あまりの手触りの良さに小躍りしながらベッドへダイブすると、フカフカの羽布団にしっかりとくるまった。

(あぁ!いい夢が見られそうだ!)

――5分後、私は異変に気がついた。なんと、つま先が布団からはみ出ているのだ。足を隠そうと布団を下げると、今度は胸のあたりまでスースーする。再び布団をずり上げると、やっぱりつま先がスースーするではないか。

(おかしいな、布団が横なのか?)

仰向けになったまま、足を使って布団を90度時計回りにずらしてみる。さて、どうか。

(・・・やっぱり足が出る)

いったい何が起きているのだ?布団を縦にしようが横にしようが、肩まで潜るとつま先が出る。つま先を隠せば首が出る。

さらに、90度回転させた布団にはファスナーが確認できる。つまりこれは「横」を意味する。ということは、最初の方向で正しかったのだ。ではなぜ、正しい方向でつま先が出るのだ――。

 

そんなことを考えるうちに、いつしか眠りについてしまった。そして翌日も同じ悩みを抱えながら、身体を丸めて寒さをしのいだ。さらにその翌日は、つま先の保温のために靴下を履いて眠った。

(つまり、布団と布団カバーの向きが合っていないということだ)

そんなことは分かっている。分かっているが、面倒くさくて直すことができないのだ。大したことではないが、それなりに苦労して布団をセットしたわけで、あの苦労を再び繰り返すことなど断じてお断りだ。

 

とはいえ、さすがにこんな茶番を毎晩繰り返す無駄を考えると、意を決して布団を入れ直すことにした。サイズが大きい羽布団のため、縦横の長さに大きな差がないことがそもそもの原因。

今度は慎重に冷静に、カバー内で布団を90度回転させると、すかさず四隅を留めて正しい位置に布団を収めた。

 

その夜、心の底から気持ちよく眠ることができたことなど、言うまでもない。

 

 

もう一つはスウェットパンツの話だ。ここ数日、春を通り過ぎて夏に近い気温が続いている。日中など半袖半ズボンでちょうどいいくらいに、十分な日差しと気温に恵まれている。

気の早い私は、もはや部屋着としての長ズボンはいらないと判断した。いつまでもグズグズ過去にすがるのはみっともない。いっそのことバサッと切り捨てて、振り返ることなく前進するのが女の生き様――。

そう呟きながら、部屋着のスウェットパンツを次々と洗濯機へ放り込んだ。

 

洗濯後、3本のスウェットパンツを干すと、昨年の秋口まで履いていたハーフパンツを引っ張り出す。今シーズン初の生足を披露しながら、私はデスクへと向かった。

 

そして今、深夜を迎えているわけだが、ハーフパンツ一枚では正直まだ寒い。とりあえず靴下を履いて様子をうかがうも、寒さは改善されない。そこで、クリーニングへ出そうと袋詰めにしておいたジャケットで生足を包んでみる。

(・・・温かい)

とはいえ、いま干してあるスウェットパンツを履くことはできない。なぜならまだ濡れているからだ。いや、仮に乾いていたとしても、一度決めた意思を覆すようなことはしたくないからだ。

ではいつまで、ジャケットを足に巻き付ける生活を送るというのか――。

 

考えあぐねた私は、そっと、カーボンヒーターのスイッチを入れた。

(あぁ、温かい!!)

生足にしみこむような温かさに、生きていることを実感する。温かいって、なんて幸せなんだ。

 

 

とどのつまりは、人間とは寒さに弱い生き物なのである。

 

サムネイル by 希鳳

 

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