生命維持装置クライシス

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(・・・そんなはずはない)

きっと数字を見間違えたのか、あるいは東京電力の検針が間違っていたのか、少なくともわたしが大量に電気を使用した覚えはないので、この請求金額は間違っていると思った。——なんせ、先月と比べて6千円も高くなっているのだから。

 

もしも、現在の暖房事情を変更しなければならないとすれば、わたしはシベリアにいるのと同じ状況になるだろう。なんせ、エアコンだけでは室内の安寧を維持することはできず、必ずもう一つの暖房器具が必要となるからだ。

仮に、二つ目の暖房器具を稼働させなかったとすれば、わたしはずっと布団の中でうずくまっていなければならない。そうなると、まともに社会生活を送ることができなくなるため、選択肢としてはあり得ないのである。

 

それにしても、世界情勢や日本の原発事情などを含む様々な要因により、電気代が高騰しているのは少なからず見聞きしていた。だが、まさか月々1万2千円ほど支払っていた電気代が、一気に1万8千円に跳ね上がったことには驚きを隠せなかった。

そもそも電気代が一か月に1万2千円というのも、一人暮らしのわたしにとっては相当な高額である。だが、エアコンをフル活用している現状からすれば決して文句は言えないわけで、甘んじて受け入れてきたわけだ。

それが、もはや2万円台が目前となる金額を叩きつけられたわけで、なにをどう節約すればいいのか脳内はフリーズしてしまった。

 

(それにしたって、一人暮らしで電気代が1万8千円って・・なにかの間違いだろう)

「電気代が上がった」と一言でいっても、そのうちの何が上がったのかを知っておかなければならない。単純に電力使用量が上がったのならば、それはわたしの無駄遣いによるものであり改善の余地がある。

だが、燃料調整額や規制料金の上昇については、個人的な問題ではないので打つ手はない。とはいえ、あまりに高額な電気料金に驚いたわたしは、その内訳を確認せずに粉々に破いてしまったのだから後の祭り。

 

いったい何に気をつければいいのか、何に怯えればいいのかも分からぬまま、今日も寒々とした室内で一人震えているのである。

 

 

それにしても、欧米人しかりやたらと暑がりな人間というのが存在する。さらに、短絡的に括ってはいけないが、そのほとんどが太っちょで見るからに暑苦しい風貌をしているが、あれはいったい、わたしと比べてなにが違うのだろうか。

 

よく聞くのは「平均体温が違うから」という理由だ。欧米人の平熱は37度であるのに対して、日本人は36度程度・・どうやらこの差が大きいのだそう。たしかに、1度違えば水は氷になるわけで、たかが1度されど1度である。

加えて、日本人よりも筋肉量が多いことから発熱量が増えて、体が熱くなりやすいとの説もある。とはいえ日本人のマッチョなお兄さんは、厚手のダウンジャケットに身を包み寒さに抗っているわけで、必ずしも筋肉量の問題ではなさそうだ。

 

それよりなにより、薄着の人間というのはたいてい「見るからに暑苦しい」という共通点がある。「うわぁ、寒くないのかな・・」と心配する必要などないほど、納得の暑苦しいフォルムをしている場合が多い。

あのフィジカル(?)が努力で手に入るのならば、ぜひともトライしたいがわたしには無理だろう。なんせ、痩せているわけでもないのに極度の寒がりだからだ。

 

ちなみに、「猛暑」というのも熱中症やら脱水症状やら命の危険に晒される状況ではあるが、「極寒」というのは"凍死"という死因が用意されているほど、ストレートに死と直結した環境といえる。

そしてわたしは、海や川などの水中に恐怖を抱いている。これは説明するまでもなく"呼吸ができない"からだ。そのため「海と山ならばどっちを選ぶ?」と問われれば、「山」と即答するのは当たり前のこと。

これと同じで、「寒い状況と暑い状況ならば、どっちを選ぶ?」と聞かれれば、間髪入れずに「暑いほう!」と答えるだろう。理由は先に述べたとおり、寒さは死に直結するからだ。

 

 

そんなこんなで、真冬の寒さに脅かされる"生命の危機"から脱するには、「暖房」という生命維持装置に頼るしかないわけだ。それが高額であろうがなんだろうが、そうしなければ社会生活が成立しないのだから背に腹は代えられない。

(今日から、スタバを調整しようかな・・・)

命にかかわることだからこそ、嗜好品は我慢するしかなさそうだ。

 

サムネイル by 希鳳

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