ルビ地獄

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(とりあえず、この世を去ってまで苦痛に襲われるのは避けたいから、読んでおこうか・・・)

 

わたしはとある一冊の本を開いた。鮮やかな赤色とゴールドで飾られた、縁起の良さそうなその本のタイトルは「地獄の法」。

これだけ華やかな表紙で「地獄」はないでしょ!と、突っ込みたくなる気持ちを抑えて(いや、抑えられない)、立派なハードカバーの表紙を持ち上げた。

「この一冊の本を読んだか、読まなかったか。あなたは、もうすぐ、別の世界の入り口で尋ねられることだろう。」

このようにソデに大きく書かれてあった。こんなことを言われては、読まない選択肢はないだろう。なぜなら、読んだか否かで死後に行くべき場所が変わるのであれば、断然、読んでおいたほうがお得だからだ。

 

要するに、「この本の内容に賛同しろ」とは書かれていないので、まずは地獄における決まりごと(法)をさらっておこうと考えたのである。

 

ところで、まず最初に声を大にして伝えておきたいことがある。それは「小学生向けの本じゃないんだから、あらゆる漢字にルビを振らないでもらいたい」ということだ。

目次からすでにルビのオンパレードとなっており、ルビなしの行はほぼ存在しないほど、すべての目次がルビと合わせて二行で構成されているのだ。この見にくさといったら、もう本当に筆舌に尽くしがたい、というべきだろう。

 

ここまでルビが振られた図書を読んだのは、それこそ小学校低学年くらいではなかろうか。あの頃は、漢字をあまり知らない年代だったからこそ、ルビを読むことで文章を音読することができた。

だがよくよく考えてみると、それは「ルビのおかげで文字を読むことができた」というだけで、内容を理解したことにはならないのだ。たとえ難解な漢字が並んでいても、ルビさえ振られていれば、誰でも日本語として読み上げることは可能。・・ただそれだけのことなのだ。

小難しい漢字や熟語、表現があればいちいち辞書で調べて噛み砕かなければ、そこに何が書かれているのかを理解することはできない。つまり、表面上はスラスラと読むことができたとて、中身を理解したことにはならないのである。

 

そして仮にも、「お坊さん」「反省」「呼び方」「現代」「失恋」「子供」「永久」「簡単」「別として」「信じて」「基本的に」「忘れては」「炎のような」「最初から」・・・。この程度の漢字が読めないレベルの人(ほとんどが子どもだと思われるが)に、ルビを振ってまで読ませること自体に無理がある。

読めない漢字を発音させることと、漢字の意味を理解させることとは全くの別物。そこまでして、「発音させる」ことを徹底したところで、一ミリも効果はないだろう。

だったら、それらの漢字が読めない世代向けに、平易な言葉で記した本を発行するほうがよっぽど親切で理解度も上がるわけで。

 

・・おっと、ここまで辛辣な批判をするのには訳がある。わたし自身が「非常に読みにくい」と感じているのは当然だが、驚くべきことに、ルビのせいで内容がまったく頭に入ってこないのだ。まさに「文字を読んでいるだけ」で、その真髄に触れようにも気持ちがそこへ入っていかないのだ。

ただひたすらツラツラと文字を追うだけで、著者の言葉がまったく、これっぽっちも沁み込んでこない。

(これじゃ、せっかく「地獄の法」を読んだとしても、質問されたところで答えられないな・・・)

わたしは幸福の科学の信者ではないので、当該宗教への思い入れや信仰心というのは皆無である。それでもこの「ルビ攻撃」は、ある意味「理解させない攻撃」でもあるので、故・大川隆法氏が可哀そうである。

 

そしてもう一つ、この本の内容は意外と現実的、かつ、ひた隠しにされてきた「事実」に触れている点が評価できる。

「あれ、よく知ってんじゃん」とか「へぇ、宗教家なのに珍しい視点で捉えていたんだね」などと、身の程知らずのわたしが思わず感心してしまうような、この手の立場の人ならばそうは考えないであろう、政治的思想というか社会風刺がサラッと記されてあった。

 

無宗教で唯物論的思想に近いわたしからすると、どうしても精神論(唯心論)的な話は身構えてしまう。とはいえ、聞く耳もあるし理解もできる。

だが、それがすべてだとは思えず、ある時は唯物論で、またある時は唯心論…といった感じで、都合のいい「論者」として立ち振る舞いたいのである。

 

宗教に限らずなんでも、知っていて批判するのと、知らずに「思い込み」で批判するのとでは、天と地ほどの差がある。そして一つだけいえるのは、故・大川隆法氏は「宗教に関しては相当勉強したんだな」ということである。

「その解釈云々が、どうのこうの」という話は置いておいて、少なくとも、論議に値するだけの知識はあったということが、著書から伝わってきたわけだ。

 

(よし、ここまで言えたら、地獄行きは免れるだろう!)

 

Illustrated by 希鳳

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