訪問客など皆無の我が家ではあるが、もしもわたしが呪術や魔力で不可解な死を遂げたなら、救急隊なり警察なりが部屋へと侵入することになる。そして、もしもその中にイケメンがいた場合、
「こいつんち、くせぇな」
などと思われたら、死んでも死にきれない。
そんな不安を打ち消すためにも、わたしは考えた。市販の芳香剤を置いたところで、化学物質クサくて具合が悪くなる。さらに、言葉は悪いが安っぽい香りが室内に広がるのはご免である。
もっとこう、なんというか大人のオンナらしい、そしてシロガネーゼらしい上品で高貴なフレグランスによって空間を満たしたいのだ。万が一のためにも、ここは出し惜しみせずオシャレな香りを手に入れておきたい。
芳香剤みたいなちんけなものは嫌だ。お、なんか名前がカッコイイから、これにしよう――。
こうしてわたしは、ニトリで「アロマディフューザー」を購入したのである。
アロマディフューザーという言葉の響きだけで、いい匂いが漂ってくるじゃないか。これさえあれば、なにがあっても我が家は大丈夫だ。
わたしは早速、リモコンを失ってオブジェとなったテレビの前に、アロマディフューザーを置いた。見た目は薬剤を入れる茶色の瓶に、紙パック飲料ほどの液体が入っている。そのフタを開けて、長い竹串を8本挿したら完成である。
(おぉ、なんと上品でかぐわしいんだ・・・)
オシャレなエステサロンか高級ブティックの香りがする。殺風景なコンクリートジャングルでしかないこの部屋が、一瞬にしてセレブのリビングに変身したのだ。
ソファに座ってもデスクで仕事をしても、ただ単にウロウロしていても、アロマディフューザーからラベンダーバニラの素晴らしい香りが漂ってくる。なにもしなくても勝手にテンションが上がり、ついでに女子力まで上がるじゃないか!!
――数時間後。アロマディフューザーの虜となったわたしは、テレビモニターを後ろに動かして、茶瓶の周辺を広くしようと考えた。そしてテレビの上部に手を掛けた瞬間、
(ぬあああああああ!!!!!!)
羽織っていたパーカーの裾が、アロマディフューザーに挿してある竹串に引っ掛かり、茶瓶が床に落下してしまったのだ。あっ!と思った時には、フレグランスオイルの半分以上が床にぶちまけられていた。
(購入初日、しかも香りを解放してから数時間しか経過していないというのに、なんたる失態っ!!)
怒りと悲しみを抑えつつ、わたしは慌てて茶瓶を起こすと、ばら撒かれた竹串を拾い集めて再び挿した。あぁ、フローリングがラベンダーバニラのいい香りで、無駄に染まってしまったじゃないか。
(悔しいが致し方ない。床を拭くためにもさっさと茶瓶を戻して、ペーパータオルを取りに行かねば――)
そう思って茶瓶を持ち上げた瞬間、
(ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)
まさかの「二度目の茶瓶落下」が起きたのだ。なぜなら、瓶からこぼれ出たのはフレグランスオイル、そう、オイルなのだ。
いい匂いの油まみれとなった床や茶瓶は、触れるだけでツルツル滑ってどうしようもない。それを知らずに適当につまみ上げたら、そりゃツルっと落とすに決まっている。
*
こうして不幸にも、購入当日にほとんどのフレグランスオイルを無駄に流出させたわたしは、たった数時間だけいい匂いを満喫して終わったのである。
やはり、慣れないことはしないほうがいいのかもしれない。あぁ、分相応に消臭力で我慢するしかないのか・・・。
アロマディフューザー、倒したらどうしようって考えて買えなかったクチです(笑)
オイルだからこぼれると厄介ですよねー
市販の消臭剤だと、これはいい香りでした!
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E6%B6%88%E8%87%AD%E8%8A%B3%E9%A6%99%E5%89%A4-W%E6%B6%88%E8%87%AD-%E7%8E%84%E9%96%A2%E7%94%A8-%E3%83%9B%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC/dp/B08R16D9MJ/ref=asc_df_B08R16D9MJ/?tag=jpgo-22&linkCode=df0&hvadid=342450197003&hvpos=&hvnetw=g&hvrand=10363317550265727731&hvpone=&hvptwo=&hvqmt=&hvdev=m&hvdvcmdl=&hvlocint=&hvlocphy=1009280&hvtargid=pla-1169971600553&psc=1&th=1&psc=1
ほー。ちょっと検討してみる。
でもさ、アロマディフューザーって、名前がもうカッコいいじゃん?そういうのに弱いもんで・・・