雷雨がきっかけで始まる恋

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日中、自宅の近くで雷が鳴っていた。いや、落ちていた。空が光った瞬間、バリバリバリっと分厚いカーボンを破り割くような、けたたましい音が空を駆け巡り、すぐさまドゴゴゴゴーっという地響きとなって伝わって来た。

これは恐ろしい。こんなものにやられたら一たまりもないだろう。雷の電圧は1億ボルト、温度は3万℃と言われている(音羽電機工業株式会社より)。ちなみに、空中での雷は1億ボルトだが、落雷の場合は10億ボルトにも及ぶという説もある。

いずれにせよ、静電気で死にそうになる私にとって、電気というのは恐ろしい存在である。コンロやライターなどの火も怖いが、電気も同じくらい怖いのだ。

 

そんな激しい落雷の地響きを感じながら、ふと思った。

(Amazonの商品、今日の午前に到着予定だったな)

いやいや、むしろ配達に来ないでもらいたい。ぜひとも車の中でじっとしていてもらいたい。

もしも私の家に向かう途中で落雷にあって亡くなったりしたら、なんというか責任を感じるし後味もわるい。配達員は労災適用となるだろうが、それでも30分も待っていれば免れた災害にもかかわらず、仕事熱心であるがゆえに命を落とすようなことが、あってはならない。

 

もしもこの状況で、

「時間通りに届かなかったじゃねーか!」

などとクレームをつけるカスがいるならば、ちょっと代わりに私が話をつけてやろう。逆に聞くが、オマエはこの雷雨の中、平気な顔で外出できるのか?と。配達員も人間だ。雷に直撃されれば命だって落とす。それとも何か、配達員はゴムでできているとでも思っているのか?

人間は天変地異の前には無力である。いいじゃないか、少しくらい遅れたって。

 

たとえばウーバーイーツの配達員などは、自ら配達の可否を選択できるため、雷雨を避けたければ配達を拒否できる。台風の日などにウーバーイーツを注文しようとすると、配達料がとんでもない金額になるから納得がいく。

中には「今こそが稼ぎ時!」と割り切って配達を選ぶ人もいるようだが、それでも雷に打たれては元も子もない。十分に気を付けてもらいたい。

 

しかし郵便局や宅配業者の従業員は、与えられた配送物とルートを回るのが仕事のため、途中で「やーめた」と帰社することは許されない。許されないというか、さすがにその方法を選択しないだろう。

実情は知らないが、仮に事業所へ戻ったとしても雷雨がおさまれば再び配達に出るはず。そうなると、ただ単に自分の終業時刻が遅くなるだけで、配り終わらなければ意味がない=雷ごときで帰社などという選択肢は存在しないのだろう。

なにもそこまで体を張って仕事をさせなくても…と思ってしまうのは、配送業に従事していないからなのかもしれない。

 

かつてこんなやりとりがあった。大雨の中、ずぶぬれになりながら帰宅を急いでいると、自宅の近くで宅配業者のトラックを見つけた。配達員がコンテナの中へ荷物を戻す姿に、なんとなく気になった私は声をかけた。

「あの、そこのマンションの×××号室のURABEですが、荷物はありませんでしたか?」

すると配達員の男性は積み直していた荷物を漁りながら、

「あ、ありますね。一つあります」

と答えた。おぉ、これはラッキーだ。もし私が声をかけなければ、このトラックは事業所へ戻っていただろう。みすみす荷物を受け取り損ねるところであった。

そこで私は、荷物をここで受け取ることを告げた。すると配達員の男性は申し訳なさそうにこう言った。

「すみません。本人確認もできないですし、荷物をこの住所へ届けないといけないので、ここで渡すことはできないんです」

なんと、私がURABEであるにもかかわらず、わざわざ自宅のチャイムを鳴らし、ドア越しに受け取らなければ荷物を引き渡すことができないというのだ。

 

まぁたしかに理解できなくもない。偽物のURABEが本物のURABEを装って荷物を略奪するという可能性もあるわけで、それを回避するためにも配送先の住所へ届ける必要がある。

「え、でも私URABEですよ。昨日も届けてくれたじゃないですか」

さすがにこの辺りのエリア担当は一人のため、この男性とは頻繁に顔を合わせる仲なのだ。あちらも当然、私を認識している。一瞬、動きを止めて考えた配達員は、

「じゃあ一緒にマンションまで運びます」

という妥協策を編み出した。荷物自体は大した重さではないのだが、そこは彼自身の「規則を守りたい」というプライドを優先して、我々二人は大雨の中を、相合(あいあい)傘でマンションへと向かった。

・・・その配達員こそが、今の主人である。

 

とはならないあたりに、現実を感じるのであった。

 

サムネイル by 希鳳

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