スマホに入れている天気予報アプリから、こんな通知が届いた。
「5~15分ほどかかりますが、サービス改善のためのアンケートにお答えいただけませんか?」
5分ならば答えてやってもいいが、15分はさすがにかかりすぎだろう。まぁいい、途中で嫌になったらやめればいいだけのことだ。
そしてわたしは設問サイトへと飛んだ。質問数は5~6問しかないので、よっぽどのろまじゃない限りは3分あれば十分だろう。――そのくらいの軽い気持ちで進めていったところ、思わず指が止まる質問に出くわした。
「天気予報が外れて、最も困るのはどれですか?」
この問いは一見、答えが一つに集約しそうに思えるが、実際に自らの喜怒哀楽を辿ってみると、一般的な答えとは異なる選択肢が浮かんでくるのだ。
一般的には、「晴れの予報が外れて雨だった場合」がこれに該当するだろう。たとえば運動会やコンサートなど屋外でのイベントの際に、雨だけはなんとか避けたいと祈っていたところ、天気予報が見事に晴れを示したにもかかわらず、当日シトシトと悲しい雨に降られたならば、むしろこっちが泣きたい気分になる。
それは困るので、雨なら雨と予報してくれ!というのが大方の考えではないかと推測する。
だが、冷静に考えてみてくれ。屋外イベントという非日常的な状況よりも、ごく普通の日々のケースで考えると、晴れが雨で困るよりも、雨の予報で晴れたほうがよっぽど困るというか、気分が悪いのではなかろうか。
なぜなら、雨の日は雨なりの服装をするわけで、足元から髪の毛まで防水・湿気対策を施す人が多いはず。それなのに、すがすがしい青空をバックに太陽が燦燦と輝いていたら、怒りと後悔とでその日がすべて台無しになるからだ。
それはまるで、ライバルに騙された哀れな主人公の心境だろう。
意中の相手を誘ってのダンスパーティー当日に、友人から「今日のパーティーは延期になった。その代わりに大掃除をするからそれなりの身支度で来るように」と言われた主人公は、その言葉通りにジャージで会場を訪れた。
ところがどうだ、周りはみんな派手に着飾ったパーティー衣装でウキウキしているではないか。その時初めて悟ったのだ、「アタシは騙されたんだ」と。
・・これに近い怒りと悔しさに見舞われるのが、「雨予報の晴れ」ではなかろうか。
長いこと考えあぐねた末に、わたしは正直な想いをフィードバックしてやった。そして次の質問へ進んだところ、これまた頭を悩ませる難しい選択を突きつけられたのだ。
「気温予報が外れて、最も困るのはどれですか?」
またもや難問ではないか。暑いと思いきや寒いパターンが最も困るのは間違いないが、たとえば気温差が10度も外れることはないだろう。となると、そこまで困る状況にはならない。
その逆はどうだろうか。寒いといわれて厚着をして出かけたところ、上着なんていらないじゃないか!という陽気な気候だった場合、これも許しがたい。とくに女性にとって、ファッションは自己実現のための重要なアイテムとなるため、上着を着用してのトータルコーディネートが踏みにじられるわけだ。
しかし今、まさに春本番を迎えようとしているこの時期においては、寒いはずが普通だったときのギャップこそが許しがたいともいえる。
さすがに、最高気温12度の予報が18度になることは考えにくい。しかし、15度ならばあり得る誤差だろう。繰り返しになるが、この時期の女性は冬物と春物との狭間でナーバスになっている。
――最高気温が15度ならば、少し背伸びをして春の装いで出かけるが、最高気温12度という予報を信じて、渋々クリーニング前の冬服に袖を通したところ、なんだこの春めいた気温は!?
・・これこそが許されざる天気予報のミスだろう。
そんなことをイメージするうちに、時間はあっという間に過ぎていった。「5~15分かかる」という本当の意味を、わたしは15分経った時点で理解したのだ。
果たしてどのパターンが、最も腹の立つ外れ方なのだろうか――。今もなお考えがまとまらないのである。
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