事件は警察署で起きるんじゃない、射撃場で起きるんだ!

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スポーツ競技の裏側というのは、必ずと言っていいほどアクシデントがつきもの。

 

今回のオリンピックで、まったく放映されなかった我が競技、射撃。

この競技も、予想だにしない事態に見舞われることがある。

 

 

エアピストルの所持許可が下りた2日後、わたしはぶっつけ本番で大会に出場した。

 

大会へのエントリーは銃の許可がなくてもできるため、許可を見越して事前に申し込んでおいたのだ。

所轄警察署を急かしてなんとかギリギリ、金曜日の夕方にピストルを手にすることができた。

 

大会は日曜日、場所はオリンピック競技会場でもある陸上自衛隊朝霞訓練場内。

すべてが初めてであり右も左も分からないわたしは、日本ライフル射撃協会の役員や自衛隊体育学校の自衛官らに手ほどきを受け、試合の準備を進めた。

 

とそこで、現場が凍り付く事態が発覚。

 

「こ、これ。ピストルの許可じゃなくて、散弾銃の許可なんだけど」

 

例えるならば、バイクの免許で車を運転するようなもの。許可の種類が違うのだ。

 

だがこれは警察側の手違いにより誤って交付されたもので、手続きとしては正しく処理されており問題はないとのこと。

担当警察官と日本ライフル射撃協会の役員が電話で話し合った結果、わたしは無事、大会へ参加することができた。

 

ピストルの許可証は横長でカードより少し大きいサイズ。散弾銃の許可証は縦長で手帳ほどの大きさ。

見慣れない許可証が珍しかったのか、多くの人が入れ替わり立ち替わり訪れ、散弾銃の許可証を手に取ってペラペラめくっては戻っていった。

 

散弾銃の所持許可証でピストルを所持していたのは、後にも先にもわたしくらいだろう。

 

 

そして今度は散弾銃の話。

 

クレー射撃の試合で海外へ行ったときのこと。あと6発撃てばそのラウンドが終了する、というところで、レフリーが急にわたしの横へやってきた。

なんだなんだ?と思っていると、彼はニコニコしながらわたしのポケットへと手を突っ込んできた。

 

ーーポケットとは、射撃の際に着用するベストがあり、そのベストの両側に付いているポケットのこと。ポケットの中には弾が入っており、撃つたびにポケットから弾を取り出すのだ。

 

太ったレフリーはわたしのポケットからおもむろに弾を掴むと、持っていた袋へと移した。しかも1個や2個ではない。手がデカいからか、大量の弾を持っていかれた。

 

(ウソだろ?!足りるのか、コレ)

 

軽くなったポケットを覗き込みながら、わたしは不安に襲われた。

レフリーのこの行為は「弾の抜き打ちチェック」で、規定通りの弾を使用しているかどうかの確認。

ただしランダムにチェックされるので、いつ、誰の弾を持っていかれるかは分からない。そして今回はたまたま、わたしだったのだ。

 

残す射撃は6発だが、仮にクレーが割れた状態で放出されたり、同射したりすると6発以上撃つことになる。

ポケットの中にはちょうど6個の弾が残っている。つまり、アクシデントが起きたらわたしは終わり。

 

言うまでもないが、弾がなければクレーを撃つことができないからだ。

 

こういうことを見越して選手は、1ラウンドで必要な弾数である25発以上の弾を、ポケットに入れている。

もちろんわたしもそうしていたし、30個以上は入れていた。

 

だがとにかく、レフリーの手がデカかったのだ。

 

むんずと鷲掴みした手の中には、5個以上の弾が余裕で入っている。

とっさにわたしは、隣りに並ぶクウェートの選手のポケットを見た。たっぷりと盛り上がるほどの弾が見える。

 

ーーいざとなったら、この弾を拝借するしかない。

 

そんなことを企みながらも、アクシデントは起きることなくラウンドを終えた。とはいえ、どうせなら何か起きてほしかった。

 

なぜなら、ビリに近いこの成績について「説得力のある言い訳」を熱弁したかったからだ。

 

 

競技にアクシデントはつきもの。

まさかの事態が勃発する可能性があるからこそ、試合中に不安や緊張が途切れることはない。

 

とはいえ、稀にほのぼの(?)としたアクシデントもある。

 

タイの射撃場では、敷地内の池に住むワニが顔を出し、ノッシノッシと射撃エリアを散歩することがある。

そのたびにしばし休憩となるのだが、誰一人として驚きもうろたえもしない。そしてワニの散歩が終わるまで、選手同士で談笑しながら時間を潰す。

 

自然と野生には抗(あらが)えないものなのだ。

 

 

Illustrated by オリカ

 

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