(冷やし中華風に)ピストル射撃、やってました。

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私は現在クレー射撃をしているが、10年前はピストル射撃をしていた。

いや、5年前まではピストルもやっていたみたいだ(ピストルに貼られてる認定シールが、2015になってるから…)。

 

**

 

クレー射撃で使用する「散弾銃」は、素行不良さえなければ、比較的だれでも所持できる。

 

しかし「ピストル」はそうもいかない。

 

ピストルを所持するには「一定以上の腕前があること」が条件となる。具体的には、DP(デジタルピストル)かハンドライフルで、初段以上の段位を取得し、日本体育協会から推薦をもらう。コレが第一条件。

私はDPで2段まで取得していたので、その実績を引っ提げて強引にピストル推薦枠に入れてもらった。

 

 

ピストルは、国内で所持できる数が決まっている。

エアピストル(300気圧の空気で鉛の弾を撃つ)は500丁、装薬拳銃は50丁しか許可が下りない。

 

つまり、すでに定員いっぱいだと空きが出るのを「待つ」しかないのだ。長いと2年半待って、まだ許可が出ない人もいる。

(自衛隊や警察にも「省庁銃」と呼ばれるピストル枠があるため、民間人はなおさら所持しにくい)

 

しかし、ここで「強運」と「公安」を味方につけた私は、ピストルの所持申請を出してから1か月という、異例のスピードで許可が下りた。

 

 

ピストル所持の許可というのは、ピストルごとに必要となる。

自動車の運転免許のように「人」に対して出されるものではない。そのため許可をもらうには、ピストルの「現物」を警察署で確認してもらう必要がある。

 

ご存知のとおり、日本では銃を作っていない。つまり自分が使用するピストルを輸入しなければならないため、すぐさま所持許可が下りるということは、現実的に難しいのだ。

 

~以下、しばらく余談~

 

私が購入したピストルは、STEYR/ステイヤー社製(オーストリア)のLP10E。

「E」は、Electricの「E」で、トリガーの重さを電子制御できる、という意味(だと思う)。

(ちなみにエレクトリックかどうかは、撃ってても分からない)

 

「トリガーの重さなんて、エレクトリックにする必要あるの?」

と思うだろう。これは正直よくわからないが、電子制御のほうが信用できるから、そうしたほうが良いのだと思う。

 

だがエレクトリックトリガーにも関わらず、試合開始前のトリガーチェック※で、派手に暴発(ぼうはつ)させて試合会場をザワつかせた私からすると、

「規定以上の重さにセットしたのに、落ちたじゃないか!!」

と、ステイヤーへクレームを入れたい気分だった。

 

※トリガーチェック・・・トリガーは500g以上の重さでないといけないため、トリガーチェッカーと呼ばれる500gの鉄の塊みたいな物をぶら下げて、トリガーが落ちる=暴発すると失格。その際、空砲だが「パンッ」とデカい音で鳴るので、会場内に響き渡り気不味いムードになる。

 

実際は、トリガーにぶら下げる「チェッカー」を引っかける位置(トリガーの根元か先端化、でテコの原理が働く)によっても若干の差が出る。

そこで選手は、規定の500g+50g程度重いセッティングにする。それを私はケチって、プラス20gにしかしなかったから暴発させてしまったのだ。

(チキショー)

 

~余談、終わり~

 

購入したピストルが「3月末の試合までに届く」と勝手に予想した私は、まだ許可も下りていない段階で、初試合の申し込みを済ませた。

それを警察にも告げ、とにかく許可を間に合わせてくれ!と懇願した。

(無論、警察は粛々と手続きを進めるだけなので、私が試合に出ようが出まいが知ったこっちゃない)

 

しかし世の中、願えば叶うものだ。

なんと、試合前々日の金曜日にめでたく許可が下りた。所轄の銃砲担当がいい人だったこともデカい。今だに感謝してる。

 

 

試合前日(土曜日)。

300気圧の空気はその辺からは集められない。さらに、今どきの湿った空気なんか入れたら、故障の原因にもなりかねない。

――そう、エアピストルを撃つには、「乾燥した300気圧の空気」が必要なのだ。

 

実際は、専用の空気入れ(自転車の空気入れに似てる)を使い、部屋でエアコンをガンガンに効かせ、空気をカラッカラに乾燥させてから、シュコシュコと空気を詰め込むことが多い。

しかし銃砲店や射撃場、ダイビングショップなどで「乾燥した理想的な空気」を購入することができる。そのため試合時はゲンカツギも込めて、有料の空気を買うことにした。

 

空気の次は、弾。

弾は大きさ(直径)が超微妙に違うのが3種類あり、4.48㎜、4.49㎜、4.50㎜というラインナップ。

(0.1㎜の差で、3種類・・・)

 

先輩方のアドバイスは、以下のとおりだった。

 

4.48㎜がオススメの人:

やっぱ「抜け」が違うよ。キレイに弾が飛んでく感覚が、断トツであるんだよ。

 

4.49㎜がオススメの人:

.48だと(弾が0.1㎜小さいから)ブレる感じがするんだよね。かといって.50だと、抜けが遅くて反動を感じるんだよね。

 

4.50㎜がオススメの人:

だってさ、ちょっとでも直径デカいほうがいいでしょ。0.1㎜でも枠にかかれば、10点(満点)なんだから。

 

・・・・・。

 

とりあえず私は、安牌となりそうな4.49㎜を選択した。

 

いざ、初撃ち。

しかし「サイトの調整※もしていない」「トリガーの調整※もしていない」これは大変なことだと、当の本人(私)より明らかに、周囲に焦りの色が見えた。

 

※サイトの調整・・・ピストルの先端「ど真ん中」にポツがついていて、ピストルの手前「両端」にポツが2つついている。手前の2つポツの間に、先端のポツを合わせて、ポツがきれいに3つ並んだら、狙ったところに当たる仕組みなので、このポつとターゲットを合わせたときに、ど真ん中に当たる位置をあらかじめセットしておく必要がある。

※トリガーの調整・・・トリガーの重さを500g以上に調整するだけでなく、指の長さや角度によって、トリガーの位置や角度を合わせないと、「ガク引き」の原因になる。イメージは「ストン」と落ちるようにトリガーを引けることが理想なので、私はやや斜めに指が当たる角度にセットしていた。

 

**

 

細かいことは割愛して、試合当日(日曜日)。

銃検査とトリガーチェックをしに検査場所へ行き、おニューのピストルと所持許可証を見せた。すると、

 

「・・・こ、これ。散弾銃の許可証なんだけど・・・・・。」

 

(関係者一同呆然、かつ、顔面蒼白)

 

なんと、私がもらった所持許可証は、「ピストル」ではなく、「散弾銃」の所持許可証だったのだ

(たしかに、他の人は横長なのに私のは縦長だなぁ、と思ってはいた)

 

日曜日にも関わらず、たまたま当直だった担当警察官と電話がつながる。彼は驚愕した後ひたすら謝罪してくれた。

そもそも、ピストルの許可を出すこと自体ほぼナイので、散弾銃の許可証と間違えてしまったらしい。

 

「でも手続きはちゃんと終わっているので、安心して撃ってきてください!」

 

電話越しに激励を受け、私は不思議な気持ちで初試合に臨んだ。

その結果、何位かは忘れたが上位に入賞した。さらに段位も申請しており、初試合で「3段」を取得することに成功した。

 

3段点を撃つのは難しい。通常、3段点を目標とする選手が多い中、こんな初心者が3段点(しかもあと1点で4段点だった)を撃つなど、過去に例を見ない結果だろう。

 

ここまで聞いてると、

「警察官と自衛官しかいないピストル界に、民間人のニューヒロイン誕生!」

となりそうな流れだが、これこそが地獄の始まりだった。

 

そして、ここが私のピストル人生の頂点だったわけだ。

 

 

・・・これ以上書くとネガティブが止まらなくなるので、この辺りで終わりにしよう。

 

とにかくピストルは「奥が深い競技だ」ということを伝えておきたい。

さらに、メンタルに悪影響を及ぼすことも付け加えておきたい。

 

なぜなら、真剣に10点を狙って撃った結果、真剣に8点を撃ってしまう競技なんだから(エアピストル競技において8点は大失敗。8.9でも痛恨だが、8.0なんて撃ったら冷や汗と脂汗が止まらない。口は乾き、心拍数は上昇し、身体的・精神的ダメージは計り知れない)。

 

こっちはいつだって、10.9点しか狙ってないのに・・・。

(グスン)

 

 

 

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2件のコメント

ほえー、とピストル競技の知らない話が満載でとても楽しかった。そして、ヒューマンエラーは、いつだってあるものさフフフ。

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