21個のミカンの生存率

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喉が渇いたので、肉のハナマサでミカンを買った。

店の外には、段ボール箱に何箱ものミカンがゴロゴロと転がっている。といっても赤いネットに詰められた状態だから、転がっているというよりも「土のう袋が山積みになっている」という感じか。

 

一袋には7個のミカンが入っており、驚愕の380円で売り出されている。買い物上手の友人から教えてもらわなければ、このチャンスを逃すところだったわけで、心より感謝である。

わたしは、とりあえず今夜の分ということで、3袋のミカンを厳選した。

 

ちなみに、ミカンを選ぶときは表面をざっと確認するだけでは足りない。これはミカンに限らず、パックに詰められたイチゴや柿も同じだが、目視できる範囲はいつだってほぼ健全なもの。

それよりも肝心なのは、果実と果実が触れ合う見えない部分である。ここの様子をイメージすることで、腐っていたりカビが生えていたりする確率を減らすことができるのだ。

 

わたしは赤いネットをつまみ上げると、ギュウギュウとひしめき合うミカンの隙間を覗き込み、腐敗の有無を確かめる。時にミカンを軽くずらして目視できる範囲を変え、時にミカンに鼻を近づけて異臭を試し、可能な限りの確認手段を駆使したわたしは、ついに最高の3袋を選ぶことに成功した。

 

満足げにミカンを抱えて帰宅すると、さっそく袋から取り出しテーブルへと並べた。Lサイズというシールが貼られていただけあり、どれも拳を握ったほどの大きさで、ミカンとしては十分である。

――肉のハナマサ、侮るなかれ。

 

(・・・むっ)

 

21個のミカンを並べ終えたところで、わたしはそのうちの3つに異変が起きていることを発見した。

一つは皮が破れて腐りかけている。もう一つは皮の表面が変色しブヨブヨに腐っている。残りの一つも皮が肝硬変のようになっている。

――これはダメだ。

 

腐敗している場所によっては、そこだけを取り除いて残りを食べることもできる。だが、てっぺんや底をやられていると、包丁で横から真っ二つにしなければならないため、わたしにとってはハードルが高い。

やむを得ない、この天地をやられた二つは捨てて、横をやられた一つは、無事な部分を食べるとしよう。

 

こうしてわたしは、無事なミカン18個と一部腐敗した1個を胃袋へ収めた。

 

 

結局、果実というのは店頭に並べられた時点で、置き方や詰め方によっては傷んでしまうもの。

高級なシャインマスカットも、雑に扱えばあっという間にダメになるわけで、購入の際には表面だけでなく裏側のチェックも怠ってはならない。

 

とはいえ、デリケートな果物を何度も手に取ったり持ち上げたりするのは「禁じ手」といえる。これはマナー違反であり、見ているだけでも胸糞が悪いからだ。

 

育ちの悪そうな下品なオバハンが、桃やイチゴをとっかえひっかえ持ち上げては乱暴に戻す姿を見て、

「触ったやつ全部買いなよ、ほら」

と言って、彼女が戻した果物を全部、かごの中へ放り込んでやったことがある。

 

つまりは、手に取った果物を素直に購入するのが運命であり、「おみくじのようなものだ」と観念するのも一つの楽しみ方かもしれない。

その結果、7個中5個のミカンにカビが生えていたとしても、それを笑って許せるような心の広い人間でなければ、幸せな人生は送れないというわけだ。

だがわたしは、心も狭いし卑しい人間である。7個中5個のミカンにカビが生えていたら、己の不覚を責めるとともに、ミカンを返品するだろう。

 

ちなみに、昔ながらの赤いネットや透明な袋に入ってる場合は、見える範囲が広いため異変を発見しやすい。だが、クッションに鎮座しているような立派なミカンは、隠れた部分がどうなっているのかを確認することが難しい。

そのため、帰宅するまでミカンの安否はわからないのである。

 

とどのつまりは、ミカンは安いほうがいい。安物がたくさん詰められているほうが、生存率も上がるというわけだ。

 

Illustrated by おおとりのぞみ

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