早めに行動した結果、何が起きた?

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やはり「自分らしくない行動」は、それがどんなに素晴らしいことであっても実行すべきではない。なぜなら、自分を欺(あざむ)いてまで何かを貫き通したところで、成功を手に入れることはできないからだ。

——わたしは今日、改めてそう確信したのである。

 

 

今日は朝から予定が入っていたため、睡眠時間わずか2時間で起床を余儀なくされたわたし。

そんな中、せめてもの救いといえば、青く澄んだ空と煌めく太陽が顔を見せていたことだろうか。天気がよければ自ずと機嫌もよくなるわけで、なんとも単純かつ便利な性格である。

 

午前中の用事を済ませて、午後の予定までおよそ3時間の空白ができたわたしは、次の予定地の最寄り駅にあるスターバックスで、仕事をしながら時間をつぶすことにした。

仕事というか、なにかしらの作業が発生しない日などないわけで、予定の合間の繋ぎ時間は、わたしにとって貴重かつ集中できる作業時間となるのだ。

 

溜池山王駅の改札を出た目の前に、わたしのお気に入りのスタバがある。どの辺りが気に入っているかというと、店舗が広いこととコンセントが充実していることだ。

さらに、一人掛けの座席数がしっかりと確保されているため、わたしのような独り者にとって利用しやすいスタバといえる。

 

とりあえず、持参したタンプラーに"グランデサイズのアイスカプチーノ/無脂肪乳/氷無し/ミルク多め"を注いでもらうと、窓際の一人席を陣取った。さて、仕事をはじめよう——。

 

二時間ほどすると、耐えられないほどの眠気が襲ってきた。そりゃそうだ、ただでさえ睡眠不足の上に、快適な室温とシャレた雰囲気の店内でジッとしていれば、誰だって眠くなるに決まっている。

そして区切りのいいところまで作業を進めると、わたしはパタンとパソコンを閉じた。

(次の予定まであと30分——少し昼寝でもするか)

 

ここから5分で目的地に到着できる。今日は夜まで予定が詰まっているため、ここで眠気を我慢したら後がキツくなる・・よし、仮眠をとろう。

さっそくスマホでアラームをセットしようとしたわたしは、混雑する店内を見渡した。

 

(もしもアラームが鳴ったら、わたしが計画的に寝ていたことが客どもにバレる。そうすれば「スタバで寝るとか図々しい野郎だ!」と、白い目で見られるに違いない。シロガネーゼの端くれとして、それだけは避けなければ・・・)

 

そう思い直したわたしは、アラームをセットせずにテーブルに突っ伏した。

なに、30分程度の昼寝などしょっちゅうやっているわけで、アラームを使わずとも自然と目が覚めるに決まっている。

 

こうしてわたしは、しばし夢の世界へと旅立ったのである。

 

 

(ウッ!く、首が動かない・・・)

うつ伏せになり仮眠をとっていたわたしは、首の痛みで目が覚めた。

 

窓側の席は椅子とテーブルが高い。そのため、うつ伏せで寝ようとしてもイマイチしっくりこないのだ。

真下を向いておでこの下に手を置いても、座りが悪いというかリラックスできない。右を向けば知らない客が座っているし、そうなると必然的に左側を向いて寝るしかない。

(・・寝心地が悪いとはいえ、わずか30分の仮眠だ)

寝るためのポジション選びに時間を費やせば、その分睡眠時間が減ってしまうので、わたしは素早く左を向くと静かに目を閉じたのだ。

 

そして30分ほど経過したであろう頃に目を開けたわたしは、首が硬直していることに気がついた。

(イテテテ・・なんなんだこの首は!)

時間を見るためにスマホを探したいのだが、前を向きたくても首が微動だにしないのだからどうしようもない。挙句の果てには、視線の先に座るだらしないサラリーマンと目が合ったまま、微妙な空気が流れる始末。

(あのオッサンに好意があると思われたら厄介だ。どうせなら、右に座る若い男のほうが・・・)

首が回らないので、やむを得ず体ごと右に捻って正面を向いた。そしてスマホを見ると——なんと、予定終了時刻ではないか!!!

 

 

次の予定まで時間があったことから、わたしはスタバでくつろぎつつ仕事をこなした。それも早めに片付いたため、わずかな時間でも体力を温存しようと仮眠をとった。

そして、目が覚めると一時間半が経過していたのだ。当然ながら次の予定に参加することはなく、何もせずに予定が終了してしまったのだ。

(こんなことって・・・)

 

あぁ、やはり余裕を持って目的地に到着するなど、わたしらしくなかったのだ。「遅刻」が取り柄であり代名詞でもあるのに、今日に限って柄にもないことをするから失敗したのだ。

とどのつまりは、どんな時でも"普段どおり"を貫くべき。自分らしさを失うことなく、そして信念を曲げることなく行動することこそが、回りまわって成功への近道となるのだから。

 

——そうだ、遅刻したっていいじゃないか。寝坊して欠席するくらいなら、遅刻してでも出席するほうがよっぽどマシだからだ。

早め早めの行動・・なんていう愚かな考え、二度と持つものか!

 

Illustrated by 希鳳

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