吾輩はゲスである

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久しぶりに登場の、トスンパである。

相変わらず、傲慢で強引なURABEから「今日疲れてるんで、代打宜しく」と短いメールが来たのがほんの5分前。

「冗談は生き方だけにしろ」

と返信したものの、一切レスがない。

 

いつもこうだ。

しかしスルーしようものなら「なんで書いてないの?」など、理不尽なクレームが明日の朝、メールボックスに溢れているのは目に見えている。

やむを得ないので、今日は私の大好きな、自衛隊の元偉い人の想い出について語ってみたいと思っている。

*

私には、年の離れた仲の良い友人がいる。

元陸上自衛隊の陸将補(=少将)で、各地の要職を歴任し5年余り前に退役(退職)した、60代なかばのおっちゃんだ。

いうまでもなく、将軍と呼ばれる階級=陸将・陸将補に昇ることができるのは同期から数%であり、民間企業で言えばトヨタ自動車の取締役といったところである。

その友人であるピースさん(仮名:65歳)から先日、二人で飲んでいる時にこんな話を聞いた。

 

「トスンパさん、実は私、防衛大学校時代にはとんでもない落ちこぼれだったんです」

 

聞けばピース元陸将補は、勉強は誰よりも抜群にできたものの体力に難があり、実技演習?のたびに所属している区隊に迷惑をかけっぱなしであったそうである。

そんなある日、重い荷物を背負っての山岳踏破の訓練があったときのことだ。

ピースさんは行軍に全くついていくことができず、遅れがちの中で仲間に肩を貸してもらい、それでも一歩も動けなくなってしまってその場にへたり込んでしまった。

すると同期の友人たちが背嚢(リュック)、小銃などあらゆる荷物を代わりに背負ってくれて、数人がかりで担ぎ上げるように両脇から支えてもらい、なんとかゴールまで辿り着けたそうである。

 

いうまでもなく、体力自慢の若者たちの少なくない人数が脱落していくような行軍の訓練だ。

そんな中で、他人の荷物を余分に背負って歩くなど並大抵の苦労ではない。

そんな想い出を遠い目で語りながら、ピースさんは、

「あの日の同期たちからの助力を、私は自衛官人生で忘れたことがありません。あらゆる意味で、私の原点なんです」

と聞かせてくれた。

 

「猛将で知られたピースさんに、そんな若者時代があったのか・・・」

 

にわかに信じることができず、後日、ピースさんと同じ区隊で訓練した別の元自衛官の友人、ラメールさん(仮名:65歳)に、こんな質問をした。

「先日、ピース元陸将補と飲んだ時にこんな話を聞いたんです。」

するとラメール元2等陸佐(=中佐)は、

「全く記憶にねえなあ・・・ただあいつは、体力は本当になかった」

と答える。

しかし、おちょくるネタとしては楽しいから裏を取ると言って、その場で同期の何人かに電話をはじめた。

すると3人めでやっとその出来事を覚えている人がいたらしく、

「あーーー!!そういえばあったな!!」

「あの野郎の〇〇、オレが持ったんだ!」

「背嚢は、体力自慢の**に押し付けたなwwww」

と、大盛りあがりで盛り上がり、電話を切ると、

「トスンパちゃん、思い出した!あったよ、そんなことwww」

と言った。

 

「しかしあの野郎、律儀によく覚えてるな~。そんなどうでもいいことwww」

「いやいやいや、スゴイ出来事ですよ?」

「どうなんだろうねえ。でもそう言われたら、アイツ部隊内では偉くなった後もいつも、助け合いを指導方針にしてたなwww」

「へー・・・ピースさんの自衛官人生の、文字通り原点的な価値観になっているのかもしれませんね」

「あ、でもねトスンパちゃん。これだけは勘違いしないでね?」

「?」

 

そういうとラメールさんは、こんなことを語った。

 

訓練中に落伍するやつなんてものはいつものことで、いちいち覚えてない。

いつものことで、正直助けようと思わないこともあるし、助けようと思わないやつもいる。

でも、ピースは昔も今も、アイツが困ってたらオレは何を置いても助けるし、余分に荷物を背負ってでも間違いなく助ける。

しかし、律儀なやつだなーww そんなどうでもいいコトをいつまでも覚えているなんてwww

 

そういえば、ピース元陸将補、防衛関係の雑誌でインタビューを受けたとき、大事にしている価値観を聞かれ

「掛けた情けはすぐに忘れろ 受けた恩は石に刻め」

と答えていた。

あのオッサン、本当に自衛隊の偉い人とは思えない純粋でカワイイ人だったが、こんな原点があったのか。

 

そんな出来事を本当に忘れていた同期のラメール元2佐も素敵だし、石に刻んでいたピース元陸将補も最高である。

改めて、自衛隊・自衛官のことを大好きになった出来事であった。

 

さて、そんなことを記しながら、突然の無茶振りを私に振ったURABEには、どんな見返りを要望しようか。

そんなことを考えながら「投稿ボタン」を押したいと思う。

 

私は、掛けた情けは石に刻むゲスである(ゲスゲス)。

 

画像引用:陸上自衛隊北部方面隊公式Webサイト

https://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/kunnrenn/rireki/r28/newpage1.html

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