ベストボディ目利き

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春といえばベストボディ・ジャパンの季節。ベストボディ・ジャパン、略してBBJの狙いは、

「日本だけでなく世界中が笑顔で満ち溢れ、心身ともに健康的な生活を過ごすこと。そのためのトレーニング文化や身体づくりの文化を、日本中に広めること」

にある。さらにはコンテストを通じて、多くの人々が健康で長生きするための一助となることを願っている。

 

日本には「国民皆保険制度」という、素晴らしい健康保険制度が存在する。それゆえちょっとした怪我や体調不良でも、カフェに行くかのようにクリニックを訪れることができ、処方箋が交付されれば簡単に薬剤を手に入れることができる。

だが本来、怪我は仕方ないにせよ病気に関しては未然に防ぐことが大切。病気になってから治すのではなく、病気にならないように体調管理を徹底することで、税金や保険料の抑制にもつながる。

 

この点からもBBJのコンセプトは、現代人に必要な要素で構成されており、さらにコンテスト形式を採用することで、より一層の努力と向上心をかき立てる役割も果たしているのだ。

 

そんなBBJとの出会いは、選手の友人がいたことがきっかけ。

BBJは健康美を重視するため、ただ単にスタイルがいいだけでは予選通過は不可能。鍛えることが難しい背中や尻のトレーニングや、女性ならば10センチのピンヒール(公式品)を履いて規定ポーズをこなすなど、やるべきことが山ほどあり、見かけほど優雅で簡単な競技ではない。

しかし健康美といえば筋肉。そしてわたしはフィジカルモンスターなどと揶揄されるくらい、ノートレーニングにもかかわらずモリモリの筋肉をまとっている。ということは、BBJで一花咲かせることができるのでは…。

「ゴメンね、URABEじゃ無理。書類審査で落とされると思う」

友人がわたしの肩を抱きながら謝るではないか。いったいどういうことなのか、理由を聞いてみる。

「筋肉がありすぎても、ダメなの」

(・・・・・)

というわけで、わたしがBBJのステージに上がることは叶わないが、別の友人を送り込むことならば可能。そして早速、ちょうどいい感じの友人をそそのかして、コンテストに応募させたのであった。

 

元来、真面目で責任感の強い「替え玉の友人」は、そそのかされた当初は相当な恨み節を抱えていた。なにせ、わたしを見る目が殺意で漲っており、言葉にせずとも憎悪の念を放たれていたからだ。

だがここで引き下がっては女が廃る。とにかく前へ進めと、あの手この手で煽てたり誤魔化したりしながら友人の尻を叩いた。

 

そして昨年の終わり頃、とうとう、わたしの目が節穴ではないことが証明された。替え玉の友人をBBJへ送り込んでから一年、なんと彼女は地方大会で優勝したのだ。

優勝とは、選ばれし一人が得られる称号であり、どんなに僅差であっても二位が優勝することはない。そんな唯一無二の恐ろしい順位を、たった一年でもぎ取ってしまったのだ。

 

しかし自分に厳しい友人は、優勝した時でさえ何かぶつくさ言っていた。そのときわたしは、とあることに気がついた。

――友人には、ぶつくさ小言を吐かせるくらいがちょうどいいのかもしれない、と。

 

 

そして本日、今年度一発目となるBBJコンテストの火蓋が切られた。今回もなにやらぶつくさと不安をこぼす友人だったが、ステージ上では堂々たる面構えでポーズを決め、ターンをかまし、颯爽と闊歩していた。

(結局のところ、こういう人に仕事を頼みたいものだ)

好きか嫌いかは問題ではない。やるかやらないかの二択しかないわけで、さらに「やる」ならば現時点での最高レベルを叩きつけるしかない。

 

とにかく、ぶつくさ言いながらもベストを尽くす友人を「替え玉」に選んだわたしは、鑑識眼がある。

 

サムネイル by 希鳳

 

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