ブラジリアン柔術という格闘技を始めて、2年9か月。
きっかけは割愛するが、私に向いている格闘技だった。
本当は、道着というものを着て、他人と戯れることは避けたい、と思っていた。
大の大人が、なぜに汗まみれで組み合わなければならないのか、と。
だが、とにかくやるしかなかった。
元から筋肉質なフォルムではあったが、柔術を始めてからのゴツくなるペースの速さは恐ろしかった。
私は、出来れば、女性らしくてモテたいと、今でも思ってる。
強く思ってる。
しかしその願望とは裏腹に、フィジカルの隆起がハンパない。
とうとう、
「フィジカルモンスター」
というニックネームをもらうに至った。
テヘ。
そもそも、柔術はパワーでどうにかするものではナイ。
にもかかわらず、顕著なフィジカルの変化として、長袖のロンティーやニットの袖をめくると、前腕で止まる、という不具合が生じる。
厚手のトレーナーや固めのコットン素材だと、前腕がうっ血して、血圧測りますよ状態だ。
そういえば、元ビルダーの先輩に褒められたことがある。
「バスキュラリティ(Vascularity)は才能だ。
オマエのように、太く見事な血管で他を圧倒するバスキュラは、見たことがない。
ぜひ、ビルダーの世界へ!!」
(いや、いきません)
私はこう見えて、筋トレをしたことがない。
筋トレを強要されてもやる気はない。
あと、多分、腕立て伏せなどほぼできない。
このフィジカルはそういったトレーニングで付けた筋肉ではないから、筋トレでは使い物にならないのだ。
フィジカルモンスターにとって、不都合(不名誉)といえば、試合だ。
昨年の終わりころ、珍しくエントリーの多い試合があった。
エントリーが多ければ、それだけたくさん、試合ができるから楽しみにしていた。
ーーお、5人もいる。いいねぇ
初めて見る名前の人もいたので、ワクワクしながら私もエントリーをした。
その翌日、ベストボディちゃん(仮名)からメッセージが来た。
「リカちゃん、逃げられたね」
なんのこと?
「リカちゃんがエントリーしたら、全員、辞退したよw」
ナニーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!
携帯ですぐさまチェックすると、たしかにエントリーが私一人になっていた。
さらに消えたうちの一人は、体重を落として、一つ下の階級へ移動していた。
残りは全員、キャンセルしたようだ。
これは、実は初めてのことではない。
過去にも何度かあった。
そのときは、マサカ…と思っていたが、ここまであからさまにやられると、嘘だと思うことのほうが難しい。
こうして、試合が流れた。
その点、外国人は良い。
外国人の中に入ると、私は小さい。
これは、2020年のヨーロピアン選手権、青帯無差別級の表彰台。
私は、階級別(フェザー級)と無差別級と両方で優勝し、ダブルゴールドという嬉しい結果となった。
青帯の集大成として、いい試合ができた。
そして、戦ったすべての外国人から、
「You’re such a tough little cookie!!!」
というようなことを言われた。
外国人には、フィジカルでは勝てない。
そもそも、私は、適正階級(自分の身長から推測するに、ライトフェザー級、つまり現在の階級の一つ下)への減量をしないので、明らかに階級がミスマッチなのだ。
これが階級別(フェザー級)の表彰台。
それでもみんな、私よりデカい。
先に触れておくが、私は毎回5~9キロくらいの減量をする。
柔術は試合の直前に軽量をするため、MMA(総合格闘技)のように前日水抜きをして…という方法での減量はできない。
試合5分前に計量して、そのままマットへGoだ。
そもそもめんどくさがりな私は、計画的な減量などできるはずもない。
その結果、数日前に焦って絶食+水抜きで5~9キロ落とすというわけだ。
(このことについての異論反論は、一切受け付けません)
これにはワケがある。
普段の食べる量にヒントがある。
ある日の、私の摂取カロリーを計算した友達がいる。
「あんた、6,000㌔カロリー食べてるよ今日」
分かりやすく例えると、力士か、フードファイターくらい食べているということだ。
そんなわけで、やたらと食べる分、体重も増える。
その結果、一般人の体重に戻すのにまず9キロ、そこから、いわゆる適正体重にするのに、さらに4キロの減量が必要な計算となる。
それはさすがにできない――
ということで、外国人と試合をするといつもこんな感じで、私が一番小さい。
リトルクッキー。
*
つい最近、
ジムの友人が写真を撮ってくれた。
合計20枚くらい撮ってくれたが、どれも気に入らなかった。
私「なんかちょっと、太ってみえない?」
友「あ、じゃあ少し斜めになってみて」
友「んー、逆に正面になってみて」
友「ちがうな、横かな?横向いてみて」
私「あんた、写真撮るの下手だよねー」
・・・ちがう
私がゴツいんだ。
その日は薄手のカットソーを着ていたため、体のフォルムがピタピタに出てしまい、どうやってもゴツさを隠せなかったのだ。
なぜ気づいたかというと、私のとなりの女友達は、実物通りの細さに写っていたから。
今思うと、この2年半で得たものは、強靭なフィジカルだけでなく、ケガの痛みをマイナスに感じないメンタルも手に入れた。
フィジカルの強化は、メンタルの強化につながる。
これは、絶対だと断言できる。
例えばろっ骨なんて、5本くらい折った。
ある日、咳がひどいのでレントゲンを撮った時、
「ろっ骨に3カ所、ヒビ入ってたね。
もう仮骨生えてきてるけど」
と言われ、だから今まで肋骨が痛かったのか、と納得する始末。
中指の骨が折れたこともある。
フットロックを極められて靭帯が切れたこともある。
腕十字で腕の靭帯、デラヒーバで絡まって膝の靭帯をヤッたこともある。
でも、ずっと練習は続けた。
正確には「続けられた」。
つまり、
痛みを感じられるのは、生きてる証拠だ。
「痛い!」と思ったら、
「やった!私、生きてる!」
と思えば良い。
そうすれば、痛いことにありがたみを感じられるから。
「痛いこと」に感謝ができることこそ、柔術から学んだ最大の感謝なのかもしれない。
リトルクッキー🍪😆
日本では表現しない例えで新鮮☺
絶対カワイイイメージだろ?なのに、なぜ!!
すごいです
フィジカルモンスター
筋トレしてなくてアレっていうのが信じられません
僕もフィジカルモンスターって呼ばれたいです
ブリッジモンスターでいいんじゃね?