日本で「違法薬物の売買」を目撃する機会など、そうそうないだろう。
また「積極的な売春行為」を目撃することも、あまりないだろう。
しかし海外では、そういった場面に遭遇してしまう時がある。
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コロンビアのカリへ行ったときのこと。
カリの正式名称は、サンティアゴ・デ・カリ(Santiago de Cali)で、ボゴタ、メデジンに次いでコロンビアの第三の都市。
コロンビア(というかカリ)へ行ったのはたった一回だけだが、こんなにもリアルに犯罪臭のする国は、後にも先にもこの国だけかもしれない。
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まずコロンビアでは、大麻の個人的な栽培と消費が認められている。
大麻の消費や商業販売は違法だが、特定の医療用途であれば合法とされ、個人的な栽培と消費も犯罪とはみなされない。
栽培に関しては20鉢まではOKとのこと。
日本人が大麻を栽培(=所持)すれば違法になるが、この程度ならまぁカワイイものだろう。
さらにカリは、ただでさえ殺人率の高いコロンビアにおける殺人率がナンバーワンの都市だ。
カリには多数のマフィア軍団が生息し、麻薬カルテル(既に衰退したカリ・カルテルが有名)の活動拠点だったこともあり、普通に治安が悪い。
加えて強盗件数もナンバーワンと、カリは治安の悪いランカーのなかでもトップに君臨するほどの、ワルの実力がある。
つまり、犯罪とともに日常生活のある国がコロンビアであり、カリなのだ。
そんなことを考えながら道端に座っていると、目の前のアジア人女性がiPhoneを奪われた。
コロンビア人の子どもらから頼まれ、仲良く記念撮影していたとき、
「私のケータイでも撮って!」
と彼らに手渡したiPhoneをそのまま奪って逃げられた。
携帯電話を盗られてかわいそうだが、なんだかその無防備さが滑稽だった。
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ホテルに戻ると早速、仕事をするためWi-Fiに接続した。
しかし部屋のWi-Fiは弱く、インターネット接続にストレスがかかるため、電波の強い場所を求めてホテルを徘徊した。
滞在したホテルはそこそこのランク(四つ星)のホテルだが、ロビー階のエレベーターは鉄格子でカバーされていて2名の警察官が立っている。
サルサダンスの聖地とされるカリ。
そのためかどうかは不明だが、ホテル内の照明は淫靡な雰囲気を醸し出しており、ただでさえ怪しい。
そんなダーティーなホテルのロビーこそ、Wi-Fiが最強に入る場所だった。
私は一番広いソファを陣取りせっせと仕事を始めた。
南米人は年齢不詳だ。
日本人の私は若くみられることが多いが、コロンビア人はなんとも大人びて見える。
特に女性。
豊満なボディラインが浮き出るピタピタのドレスを纏(まと)い、オッパイも背中も太ももも、ほとんど隠れてないじゃないか!というくらいの肉体美を見せつけてくる。
10名ほどのセクシー美女がたむろっているところへ、同じ人数の男性陣がやってきた。
男性のほうが若く(幼く)見えるが、多分、同世代なのだろう。
ゾロゾロと男女カップルになり、散っていく。
散っていくのだが、エレベーターの前で先ほどの警察官からID(身分証明)チェックを求められ、もめている。
どうやら男性は宿泊客で女性が売春婦らしい。
男性がIDを提示し、腕を組んだセクシー美女とエレベーターに乗ろうとするが、警察官がそれを阻止する。
エレベーターの前にそびえる鉄格子を開ける権利を持つのは警察官。
ゆえにエレベーターの扉はそう簡単には開かない。
別のカップルを見るとトイレに入っていった。
私の見間違いでなければ、二人そろって同じトイレに入った。
そのほかのカップルも、思い思いの場所で濃密なボディタッチやらチューやらを交わしている。
そのうち、エレベーターの門番である警察官(一人)とカップルが大声でもめ始めた。
次に観葉植物のかげでコトを始めようとしていたカップルが、もう一人の警察官に引きずり出された。
他のカップル同士も揉め始めた。
ーーナンダコレ
仕事どころではなくなってきた私は、ひとまず静かな雰囲気のところで落ち着こうと考えた。
男子トイレをのぞくと明かりが見える。
(ということは、さっきのカップルは男子トイレに入ったんだな)
安心した私は、真っ暗な女子トイレのドアを開けた。
そして照明のスイッチを探して押した。
すると、
個室のドアから4本の足が見えた。
しかも4本とも裸足だ。
いや、もっと解説すると全裸だ。
なぜなら床に無造作に衣服+下着が置かれている(落ちている)。
私はそっと電気を消し、トイレを後にした。
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ホテルのフロントで、この光景が普通なのか特別なのかを尋ねてみた。
予想通り、これが日常なのだそう。
「売春婦が運び屋だから」
プロは「手持ち」では運ばないらしい。
体内に入れてくるのだそう。
だから女でないと運べないのだーー
ロビーが騒がしくなり、外から警察官が押し寄せてきた。
先ほどの若い男女カップル10組が全員、手錠をかけられ連れて行かれた。
しかし毎日これほどの逮捕者が出れば、留置場や拘置所はあっという間に定員オーバーとなるだろう。
どうなっているんだろうか。
ーーホテルの外で派手なパトライトが点灯し、ホテルの中は若者らが泣くわ喚(わめ)くわの大騒ぎ。
そんな騒々しい環境でも、せっせと仕事を続けた深夜2時の出来事だった。
Illustrated by 希鳳
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