友人は、トップオブお嬢さまのカトリック女子中高の出身。
大学もそのままエスカレーター式に上がれたが、彼女が特殊な学部を希望したため、お嬢さま生活はトータル6年間で幕を閉じた。
そんな彼女の中高は、寄宿舎生活を余儀なくされた。
彼女いわく、
「ガチお嬢さまは全員、寄宿生」
だそう。
寄宿生からすると通学生は、
「あら一般人の皆さまのご登校よ」
と、鼻で笑われていたというわけだ(超偏見)。
お嬢さま学校の敷地面積は、北海道大学に次ぐ広さだとか。
その象徴として、校門から校舎まで、タクシーのメーターが何回か上がるほどの距離がある。
つまり、走って脱走などしようものなら、シスターが車で追いかけてきて捕獲されてしまうのだ。
ゴルフ場が一部侵食するほどの豊かな自然のなかで、お嬢様たちは日々の生活や学業に励んでいる。
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朝は優雅なクラシックでお目覚め。
お布団をキレイにたたみ、洗顔などを済ませると、伝統あるベージュ色の制服に身を包み、朝のお掃除を行う。
寄宿舎も心も綺麗にしたら、朝食の準備だ。
お嬢様たるもの、テーブルセッティング(フォークやナイフの順番を揃えて並べる)やサーブなど、できて当たり前。
上級生とテーブルを囲み、お祈りで食事がはじまり、お祈りで食事が終わる。もちろん、出された食事は食べ終わるまで、席を立ってはいけない。
そして朝食が終わると、すぐに授業へと向かう。
夕方、授業が終わるとすぐに寄宿舎へ戻り、夕食のテーブルセッティングに入る。
夕食後は御聖堂で「夕の祈り(≒小さなミサ)」が行われる。
バッハのインベンションが流れる御聖堂へ集まり、お祈り台へ両肘を置く形で祈りをささげる。
カトリックの学校にとってミサは神聖かつ重要な儀式のため、体調不良などで欠席する寄宿生は、事前に許可を取る必要がある。
そして、その許可証を寝室(8~15人部屋)の入り口に貼っておくことで、シスターが欠席者の確認をする。
まれに抜き打ちで、シスターが各部屋を回り、ベッドの下まで確認をするらしい。
ちなみに友人は、その抜き打ちチェックに引っかかり、ベッドの下から引きずり出されて罰(庭の落ち葉拾い)を与えられたそうだ。
悪いのはシスターじゃない、友人だ。
夕の祈りが終わると、お風呂の時間だ。
同時に、スタディと呼ばれる勉強の時間でもある。
お風呂は学年ごとに時間が決まっており、自分の学年の時間に入浴できなかった場合、その日のお風呂はない。
たとえ先輩であっても、他の学年の時間帯に入浴することは許されないため、お風呂はシビアだ。
そして就寝前に点呼。
各部屋のリーダーが人数確認をし、消灯となる。
他にも面白い特徴として、高3の先輩は「エンジェル」と呼ばれ、「チャイルド」と呼ばれる中1の後輩のお世話(教育係)をする。
また、「プレイルーム」と呼ばれる娯楽室にはテレビがあるが、当然、先輩らの好みのチャンネルが選ばれるため、後輩たちは見たいテレビなどみれるはずもない。
今でこそ携帯があるので、個々で自由な楽しみ方もあるが、テレビは未だに先輩の特権だ。
いろいろと厳しいルールもあるが、それでも由緒あるエリートお嬢さまカトリック学校は、世のお父さまお母さまの憧れの的なのだ。
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ところ変わって某陸上自衛隊駐屯地。
午前6時に起床ラッパが流れ、全員一斉に起きる。
5分でジャー戦(下はジャージ、上は戦闘服というセミフォーマルな格好)に着替え、軽くベッドメイキングをすると、廊下に整列し、日朝点呼。
その後、洗顔などを済ませて掃除をし、食堂にて朝食をとる。
朝食後、その日の準備をし、朝礼。
朝礼後、それぞれの訓練や体力錬成に移る。
17時、課業や訓練が終了となり、夕食。
だが、風呂が混む場合もあるので、先に風呂を済ませてから夕食、という場合もある。
某駐屯地の風呂は、幹部用と陸士陸曹用で2つずつあるが、大勢が一気に入ると混み合うため、なんとなく時間を見計らいながら調整する。
その後、ようやく自由時間となり、就寝点呼の後、消灯。
なお、営内(駐屯地内)で生活をする自衛官は、外出の際に許可がいる。
まずは班長のハンコをもらい、それを当直室へ届ける。
その後、小隊長らのハンコが押され、無事、外出許可となる。
この外出許可なく就寝点呼の際に欠員があった場合、営内者全員で探しに行くという大事件となる。
(とは言え、普通は部屋で寝落ちしていたり、急な腹痛でトイレにこもっていたりなので、当直陸曹が確認に行って終了なのだが)
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ーー似てる
この2か所の生活様式は、非常によく似ている。
なんなら、お嬢さま学校の寄宿生は、平日外出などできない。こっそり外出したくても、寄宿舎から校門まで1キロ以上あるので、脱走すらままならない。
さらにお嬢さまらは、土日は自宅へ強制帰還させられるため、寄宿舎に残るには許可が必要。
外出に許可がいる自衛隊とは逆の仕組みだ。
そんな窮屈で厳格な集団生活を6年も送らされれば、お嬢さまらの心身は鍛えられ、高度な協調性が身につくだろう。
そしてこれは、有事の際に役立つのではないかと思う。
一般人があまり経験しない、「集団生活」というものから得られる効果は、有事の際こそ生きるはず。
もし、国を揺らがす有事の際は、自衛隊だけでなく、お嬢さま学校(ただし寮生活者)出身の女性陣も活躍できるはずだ、ということを強く伝えておきたい。
Illustrated by 希鳳
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