吾輩はエコである

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突然だが、ピーラーという道具をご存じだろうか。そう、野菜や果物の皮をむく調理器具のことだ。料理をしない人には馴染みのないネーミングかもしれないが、案ずるなかれ。我が家にもピーラーは存在しない。

さらに包丁すら置いていないので、不審者が侵入してきた際には対抗できる武器がない。おっと、包丁を人に向けてはいけないので、この話はなかったことにしよう。

 

ということで、ピーラーと包丁について思うことがあるので、書き留めておきたい。

 

 

自炊が日課の私は本日もまた、定番のラインナップで調理を開始した。我が家には段ボール箱単位で、サツマイモにジャガイモ、そしてニンジンの備蓄がある。

しかしあまりの量の多さに、サツマイモはカビが生え、ジャガイモはボコボコと発芽を始め、ニンジンも茎の部分にカビと同時に新芽が生えてきた。

それでも大半はまだ食べられるので、これらの「異物」を取り除いて調理をしている。

 

我が家の調理器具といえば、毎度おなじみの電子レンジに加え、新入りの焼き芋メーカーが快進撃をみせる。

焼き芋メーカーは極太のサツマイモだと2本しか収まらないが、細めや小さめの個体ならば3~4本ねじ込むことができる。さらにニンジンも形や大きさによって複数寝かせることができるので、サツマイモとニンジンを上手いこと組み合わせて、焼き芋メーカーで調理しているのだ。

しかしジャガイモだけは、彼らのみで収納させなければならず、小ぶりなもので4個、中~大は2~3個が限界。げんこつのようないびつな球体のジャガイモは、焼き芋メーカーにピッタリとはフィットしない。それでも、レンチンよりはるかに美味い焼きジャガイモができるため、毎日の食卓に欠かせない食材となっている。

 

私の一食は、サツマイモ4本、ジャガイモ4個、ニンジン2本というように大量消費が見込まれるため、調理後の食材をアルミホイルに包んでは冷蔵庫にストックしている。そのため、タイマーが鳴るとせっせと食材を洗い、カビや芽を削ぎ落とし、焼き芋メーカーに並べてタイマーを回す、という作業を延々と繰り返すのだ。

さて、ここで問題。ピーラーも包丁もない我が家で、カビはまだしもジャガイモの芽をどうやってくり抜いているだろうか。

 

――正解は、爪と指だ。

 

焼き芋メーカーに野菜を丸ごと収納する調理方法を知ってから、私の指は調理器具としての能力を開花させた。

人間の体というものは、使えば使うほどに成長し進化を遂げる。その証拠に、私の親指と人さし指はジャガイモの芽をキレイにくり抜き、周辺の皮も剥ぎとり、さらに根の深い部分まで削り取ることができる。

サツマイモのカビなど、親指ワンスクープでキレイさっぱり消え去る。しかも包丁を使うよりもはるかにギリギリのラインを攻めることができ、フードロスの観点からも指スクープのほうが断然エコ。

 

ここでポイントとなるのは、「爪」ではなく「指」だ。厳密には指の先端だが、ここの硬さがものを言う。

ちなみに、爪で芽やカビをこそぎ取るのは素人でもできる。だが「素手調理(Bare hands-Cooking)」を続けていると、いつしか指の先端が硬くなり、あたかも調理器具の代替品にでもなったかのような機能性を宿すのだ。

さすがに文旦の皮は剥けなかったが、これも時間の問題。もう少し訓練を積めば、いずれあの厚い皮を突破する日が来るだろう。

 

こうして、スイスイとカビを刮(こそ)ぎ落としサクサクと芽を穿(ほじく)り出し、あっという間に完璧な可食部の誕生。もはやジャガイモを指で割るほどに、私の親指は鍛え上げられていた。

 

 

それぞれの野菜を焼き芋メーカーに並べると、ニンジンが飛び出てしまった。そこでニンジンを3つに割ると、パズルの要領で隙間を埋めるように詰め込んでいく。

(できた!)

こうして、本日の一食分の下ごしらえが完了。

 

ちなみに私の親指は、文旦以外の柑橘類ならばほぼすべて突破できる。また、野菜のヘタや茎を引きちぎる際も、指か爪か歯を使って処理するため、包丁もピーラーも出番はない。

挙句の果てには、素材そのままを調理するため、箸やフォークなどのカトラリーは一切不要。

 

したがって、私は非常にエコである。

 

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