殺人の方法や遺体処理について妄想を膨らませたり

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――野生訓練最終日

 

ちょうどイノシシが罠にかかった、と猟師から一頭のイノシシをもらった。

朝、山へ見回りに行くと、仕掛けておいた罠に中くらいのイノシシがかかっていたそうだ。

 

その場で止め刺し(イノシシの心臓を一刺し)し、車に乗せて解体場へ移動。

イノシシを滑車で吊るし、腹をかっさばいて内臓を取り出す(血抜き)。

 

その軽くなったイノシシを、私がいる射撃場まで持ってきてくれた。

 

射撃場の脇を流れる河原で、猟師は解体を始めた。

まずは首回りに切り込みを入れ、全身の皮を剥がす。

次に四肢をもぎ取り、最後にあばらなどから肉をベリベりとはぎとる。

 

こうして私の目の前に出されたイノシシは、ぜいたくな肉の塊となっていた。

 

40~50キロのイノシシがこのように食材となるのは簡単なことではない。

その解体技術は猟師ならではだ。

 

と、そこで過去の殺人事件が脳裏をよぎった。

 

バラバラ殺人事件というものが報道されるたびに思うが、素人が中型あるいは大型の脊椎動物を解体することは、リアルに難しい。

さばく順序や部位・方法があるため、そのノウハウなしで、かつ、初めてさばく場合など、心理的にもかなりの負担がかかる。

 

だからこそ、過去の殺人犯は全員失敗しているのだ。

 

 

ちょうどその場に広島のプロハンターがいた。

彼は職業柄、ジビエ料理店へ食材を卸すことをルーティンとしている。

そのため、大量の骨や内臓などの残渣が出る。

プロはそれらを専門の焼却処分場へ運び、およそ800度の高温で処理する。

その結果、残渣は微塵も残らない。

 

私はふと思った。

これが殺人事件に使われたら――

 

 

この世は諸事情でいろいろな殺人事件が起きる。

 

ちなみに私が過去に考えた(冬場の)殺人方法は、つららだ。

太くて長いつららで眼から脳を貫けば、時間経過で証拠隠滅までできる。

つららを頸椎に刺せば、場所的につららができる軒下ならば事故の可能性まで出てくる。

 

自然つながりでいくと、台風時の濁流に飲み込まれることでも殺人事件は成立する。

大雨により増水した川には、目視できない深さで大量の岩が転がっている。

その岩にぶつかり、あるいは巻き込まれて死ぬことがある。

これについても正直、殺人か事故かの区別は難しいだろう。

 

方法としては手軽だが即効性はないものとして、食塩を150~200グラム包み込んだミニ肉まんを、一口で胃袋に収めてもらうことでも殺人は完成する。

真面目な話、食塩中毒(急性症候性高ナトリウム血症)には注意せねばならない。

 

 

このように、なんの凶器がなくとも殺人は実行可能だ。

 

 

 

最近、タブーとされていた分野へ警察の介入があった。

被害届が出されれば捜査しないわけにはいかない。

その結果、禁断の扉を開けることとなった可能性がある。

 

数か月後、一人の人間が失踪し、二度と現れない事件が起きるかもしれない。

 

――この場合の手段は、何だろう

 

これについてぼんやりと考え始めたことが発端となり、私の豊富な想像力が暴走した末、殺人の方法という不可解な境地にたどりついた。

 

そしてむしろ、殺人行為より遺体処理のほうが困難を極めるはずだ。

 

 

――こんなことを考える普通の人はいないだろうが、念のため、そんなことを考えた野生訓練最終日だった。

 

 

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