射撃をしていて思うことは、
「私はいつだって、完璧な射撃をしている」
これに尽きる。
*
北関東を訪れたついでに、久々の射撃をした。
クレーという直径110ミリの皿を撃破するのが、クレー射撃。
なかでも、スキートが私の種目。
左右のタワーからクレーが飛び出してくるのを、25回撃ち続けることで1ラウンドが終了する。
それを5ラウンド(=125点満点)繰り返し順位を決める。
私はかれこれ3年、射撃をまともにやっていない。
久々の射撃にもかかわらず、いや、久々の射撃だからこそはっきりとわかったことがある。
――私は、完璧な射撃をしている
*
クレー射撃は「クレーが割れるか割れないか」の2択しかない。
割れれば1点、割れなければ0点。
非常にシンプルでわかりやすい競技だ。
誰もがクレーを割るために弾を装填し、トリガーを引き激発する。
しかし、なぜか百発百中とはいかない。
クレーが一部分でも欠ければ「割れた」となるので、ほんのちょっとでも散弾が当たればいいのだ。
にもかかわらず、ほんのちょっとも欠けないことがある。
しかも、そういうことがよく起きる。
ターゲットを割るために撃ってるのに、なぜ当たらないのだろうか。
一つは、集中力のつなぎ目がずれた場合。
クレーが放出されるタイミングは一律ではない。
よって、クレーを撃ち落とすためには、常に集中した状態で放出口(クレーが出てくる穴)をにらむ必要がある。
しかしあまりに長い時間にらみ続けていると、集中力の持続が困難となるため、仕切り直すことになる。
不運にもその瞬間、クレーが飛び出てきてしまったときだ。
残念ながらこれは間に合わない。
「しまった!」
と思いながら狙い直しても、まず確実に外れる。
もう一つは、集中しすぎて身体が硬直してしまった場合。
銃を構えたままクレーが放出されるのを今か今かと待つ間、足は地に根を張り、腕はダビデ像ばりに固まり、クレーが飛び出た瞬間、身体は岩のように不動の状態となっている。
「あ!!!」
脳は反応するも身体は置いてけぼり。
そして硬直から解放された頃は時すでに遅し。
銃をコントロールすることは不可能となる。
仮に銃ではなく指先でクレーを狙ったとすると、どんなに急にクレーが飛び出しても狙い損ねることはない。
なぜなら、指は自分の身体の一部だからだ。
指で指すように銃をコントロールできれば、それはいくらでも狙い直せるし、撃ち損ねることもないだろう。
しかし、なかなかこれができないから、射手は苦労する。
*
射手が立っているところからクレーが飛ぶところまでは、15メートルほど離れている。
そして散弾銃ゆえ、100粒ほどの鉛がクレーめがけてブワッと飛んでいく。
つまり、手元の数センチの誤差は15メートル先では数メートルの誤差になる。
一瞬のできごとだが、その一瞬のミスが結果を大きく左右する。
逆に、動き出しから狙いから銃コントロールから、意識的に正確に実行したとき、結果が悪いことなどありえない。
結果の良し悪しは、すべて必然的なものだから。
たまたま偶然クレーを撃ち損ねる、ということはありえない。
理由があるからクレーは割れないのだ。
――そう、私は完璧にミスをし、完璧に外しているのだ。
*
銃の激発音はデカいため、必ず耳栓をする。
私の耳栓は私の耳のカタチに合わせて作られた、完全フィットのイヤープラグだ。
激発音ほどのデカい音から耳を保護するため、耳栓をしていると静寂が訪れる。
ふと、頭上で人の気配を感じた。
顔を上げると、目の前にドクターペッパーがぶら下がってた。
「はい、どーぞ」
クレー射撃日本代表の有村が、テーブルにうつ伏せて寝ていた私に、ドクターペッパーを突きつけた。
眠い目をこすりながら耳栓を外し、ドクターペッパーでのどを潤す。
ー―よし、もう1ラウンド撃ってこよう
クレーを割るも割らぬも私の実力だ。
どんな結果となろうが、それは完璧な実力による完璧な結果。
それ以外に思うこと、感じることなど何もないのだ。
僕では到底及ばない下半身の安定した射撃👍
ゴールド復帰も目前だ、下半身重点的にやってくれ!