めげずにUFOを探すも星空は変わらず、だが人間界は変化していくわけで

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手作り料理の魔力に憑りつかれたわたしは、友人が焼いてくれた"焦がしバタ-のチョコチップクッキー"を、遠慮することなくほぼすべて独り占めした結果、とんでもない満腹に襲われた。体育座りも厳しいほど胃袋が前方と左右に突出し、大量のバターが胃袋の表面をオイルコーティングしているようだった。

それでも、美味いのだから仕方がない。これがもっとマズければ、わたしだってこんなに苦しむことはなかったのだから——。

 

そして気づくと夕方過ぎから爆睡していたようで、現在は午前3時過ぎである。これほどの長時間睡眠を維持した経験は、記憶の上では思い出せないくらいに昔のこと。ベッドのマットレスがちょうどいい硬さだからなのか、はたまたラスベガスの乾燥した空気が性に合っているからなのか、久しぶりに快眠を手に入れることができたわけだ。

(長時間寝たおかげで調子がいい、ということはもしかすると・・)

むくりと起き上がったわたしは、寝静まった家のリビングを忍び足で通りすぎ、庭へとつながるドアを静かに開けた。すると二階から気配を察知したネコが下りてきて、われわれ二名は再び「UFOを目撃し隊」を結成したのである。

 

だが思うにこのネコは、もうすでにUFOを目撃しているのではなかろうか。何年もこの家で暮らしているのだから、一度や二度はUFOと遭遇するチャンスはあっただろう。それでもこうしてわたしの野望に付き合ってくれるのだから、いい奴である。

そしてわれわれはミッドナイトブルーの夜空を仰ぎながら、昨日よりもハッキリと見える夏の星たちを眺めた。あのリボンみたいな形のは・・オリオン座だっけ?カシオペヤ座ってのも聞いたことがある。

 

それにしても、星座っていうのは古代からあの形をキープし続けているわけで、よくよく考えてみると不思議なことだ。国立科学博物館の「宇宙の質問箱」によると、

「星座は紀元前3000年ころにこの地方に住んでいた、シュメール人やアッカド人が神話や伝説の英雄や神様、生き物にみたてたことから始まりました。この星座は、その後メソポタミア地方に住んだバビロニア人にうけつがれました。紀元前8世紀ころの粘土板などから、36個もの星座があったことがわかります。」

とのこと。その後、ギリシャに伝わったこれらの星座が、ギリシャ神話や伝説と結び付けられて、現在の星座の主なものとなる「ギリシャの星座」となったのだそう。・・ちなみに、各々が勝手に「あれはオレの名前をつけよう!」など、バラバラの星座を作り出すと収拾がつかなくなるので、今では全天を88個の星座に区切ることが国際的に決められている模様。

 

それにしても、急に一つ星が増えた!・・なんてことが起きないのも不思議である。時間帯や季節によって見える位置や角度の変化はあるが、それでも何千年いやもっと昔から星はそこに存在しており、われわれが見ている星はもうすでに消滅している可能性すらあるわけで。

だからこそ、突如UFOが現れてもおかしくはないのである。むしろ、普遍的に星が存在し続けることのほうが不思議・・というかおかしいわけで、神出鬼没に姿を見せるUFOのほうが、「存在して当然」とすら思えるからだ。

 

というわけで気を取り直したわたしは、再びネコと共に天を仰いだ——うぅん、美しい星空だ。

それからしばらく上空を警戒していたが、うんともすんとも言わない空に飽き飽きしてきた頃、わたしのスマホが散々震え始めた。いったい何事だ、こんな早朝に・・っていっても、日本は夜のちょうどいい時間帯か。

 

——黒帯、おめでとう!

 

・・・あぁ、そうか。相変わらずUFOとは遭遇できないし、星は何億年も同じ位置で輝いているが、それでも人間界を支配する時間というものは、刻一刻と流れていくものなのだ。

そしてわたしにとっての長い旅が、これからまさに始まろうとしているのであった。

 

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