「ウチではお断りさせていただいてまして・・・」
なんと、受診拒否ときたか。キミたち日本人は、ワクチン二回接種とPCR検査が陰性ならば、安心するタイプではなかったのか?
三日に一度PCR検査をし、三回連続「陰性」を叩きだしたこのわたしを、帰国後14日間の待機期間中だからという理由で、バイキン扱いで追い払うとは――。
帰国後の待機期間中は、不急不要の外出を禁止されている。たとえば髪の毛を切りたいとか、ネイルを整えたいとか、そういったことが不要不急といわれれば従わざるをえない。しかし体調不良で病院を受診することに、不要不急などという概念が通用するのだろうか。
念のため事前に保健所へ電話確認をしてみた。
「その痛みが不要不急に当たらないものならば、受診してください」
ものすごい言い草だ。体に不調がある場合、その判断を自己に委ねるというのか。どのような痛みかわからないからこそ、診察と治療を希望しているというのに。
実際は渡米前から痛みがあり、左手が痺れる症状も現れていた。肩甲骨周辺に疼痛が走り、ひどい時は吐き気をもよおすことも。だが整骨院で治療を受けたことでかなり楽になった。
ところが先日の試合中、左腕にビリッと電流が走り肩から指先までが強い痺れに襲われた。思わず何度かグーパーを繰り返して神経の無事を確かめるが、その時点で問題はなかったため試合を続行、無事帰国を果たした。
しかし就寝時には、呼吸が苦しくなるほどの疼痛が現れるためなかなか寝つけない。体をどの角度に向けても痛みと痺れが続く。こうなると横になっても座っても状況は同じで、とてもじゃないが眠ることなどできやしない。
どうやら頚椎が原因の症状らしく、即効性のある治療方法はない。だが薬で痛みを緩和させることや、診断がつくことで痛みと痺れの正体を明らかにすることはできるわけで、少しでも眠りたいし楽に生活を送りたいと願うわたしは、近所の整形外科を受診することにした。
――このような経緯で訪れたわけだが、見事に門前払いを食ったのだ。
ほかの整形外科へ行こうか迷ったが、どこも同様の対応となるのだろう。歪曲した拡大解釈をすれば、
「首や肩が痛くて、指先まで痺れて眠れない」
程度では、不要不急の状態と判断されるのだ。
まぁ考えようによっては理解できなくもない。病院経営者にとって患者は顧客なわけで、たった一人の帰国者を受診したことで仮にコロナが発生したら、一時的だとしても大勢の顧客を失うこととなる。
コロナがそこまで恐ろしい病気なのかどうかは置いておいて、海外渡航者は帰国後しばらくは「差別の対象」となることがハッキリした。
変異株の水際対策として、ここまで厳重かつナーバスに管理できるのは日本ならではであり、嫌味を込めて「さすが」と言わざるをえない。
だが、ビジネス目的の外国人は最短3日の待機期間で行動制限が解除されることを思うと、入国から5日目に病院を受診した場合、同じく帰国した日本人と一体なにが違うのだろうか。
また、医療機関から門前払いを食った場合、もしもその患者が死んだときは誰に責任があるのだろうか。海外へ行った患者がわるいのだろうか。帰国後、怪我や病気をした患者がわるいのだろうか。
いうまでもなく健康体で、熱もなければPCR検査も陰性、おまけにワクチン接種も済んでいる優良児も、変異株という恐怖の存在(?)の前では弱者でしかない。
これまでは、長時間フライトによる腰への負担や手足のむくみを解消するためにも、帰国後は毎回運動を欠かさなかった。それが今では運動禁止も同然のため、帰国から2日経っても足のむくみがスッキリ落ちない。
また、体内時計の調整ブーストとしてフローロールでもしたいところだが、他者との接触禁止令が敷かれている以上、一人暮らしにとったら罪もないのに軟禁状態を強いられるのだ。
これが「健全な待機期間」の在り方なのだろうか。軟禁状態による健康不安はなぜ考慮されないのだろうか。わたしは不思議に思うが、不思議に思わない人間が増えた結果、それが当たり前となって誰もが疑うことを忘れるのだろう。
もしかすると、これこそが「民主主義のなれの果て」なのかもしれない。
サムネイル by 希鳳
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