うどん凍える夜

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繰り返しになるが、我が家に冷凍庫はない。

ビジネスホテルに設置されているミニバーというやつ、あの大きさの冷蔵庫がちょこんと置かれているだけだ。

 

ちなみに冷蔵庫で困ったことなどない。なぜなら、必要に応じて近所のコンビニへ走ればいいからだ。

 

言い換えれば、ある意味とても贅沢な暮らしといえる。コンビニほどの巨大冷蔵庫・冷凍庫を保有しているのだから。

 

 

とくに腹が減ったわけではないが、口さみしくなる午前2時過ぎ。

我が家のミニバーを開けると、忘れかけていた「はなまるうどん」を発見した。

 

(ウーバーイーツで2個頼んで、1個食べ忘れてた・・・)

 

はなまるうどんは優秀で、二層に分かれた容器で配達される。

一階部分に「汁」、二階部分に「うどん」と、コンビニの麺類ばりにちゃんと階層分けされているのだ。

 

この構造により、

「放置した結果、うどんが汁を吸ってブヨブヨに太る」

というあの悲劇から免れることができる。さすがの企業努力。

 

冷蔵庫からはなまるうどんを引っ張り出してフタを取る。すると、

・・・うどんが凍っている。

 

一階の「汁」はチャプチャプしているが、二階の「うどん」だけがカチコチに凍っているではないか。

 

我が家の冷蔵庫には冷凍室はついていない。だが、製氷機はついている。

うどんは製氷機の真下で保管されていたため、その冷たさで凍ってしまったのだろう。

 

しかし横並びで突っ込んであるペットボトルの水は、液体の状態を保っており全く凍っていない。

なぜうどんだけカチコチになるのかーー。

 

まぁよくわからないが、なかなか「冷凍状態」を目にすることのない我が家で、氷の結晶を見ることができたのは貴重な経験といえる。

しかしあまりに固まりすぎて、箸でつついてもびくともしない。

 

(やむなし、このままいくか)

 

まるで食品サンプルのような「うどんの塊」を鷲掴みすると、大きく口を開けてかじりつく。

 

ーーシャクッ

 

なんともいえない歯ごたえだ。

 

決して硬くはないが柔らかくもない。表面はカチコチにもかかわらず、

「モチモチした麺がシャーベット状になっている」

と、一瞬でわかる歯ごたえ。例えるなら「解凍途中の冷凍バナナ」のような食感。

 

(しかしこれだけ硬いと、溶けるまでに時間かかるな・・・)

 

本来ならば、うどんをしっかり解凍してから一階部分の「汁」と混ぜて食べるべきだが、この食品サンプル、もとい「うどん」は手ごわい。通常の状態に戻るまでに1時間はかかりそうだーー。

そこでわたしは考えた。その結果、とある食べ方を思いついた。

 

しゃぶしゃぶ方式。

 

うどんが凍ったままならば、逆にうどんの塊を汁につけて食べればいい。そう、豚肉をポン酢にボチャンとするかのように。

 

早速、汁にチョンチョンしたうどんにかじりつく。

(・・・まぁ普通)

そりゃそうだ、本来その汁と混ぜて食べる商品なのだから、それが普通に決まっている。

 

そこでわたしはちょっと冒険することにした。

凍ったうどんは味がしない。強いて言うなら生地に塩が練り込んであり、舌の上で微かな塩味を感じる程度。それ以外はどんなに味わっても「小麦粉の味」しかしない。

これならばパンやピッツァの生地と変わりないではないか。ならばーー。

 

わたしはキッチンからハチミツを持ち出し、凍ったうどんに垂らしてみた。

 

(んーーー、極めて普通)

 

これもなんというか普通だった。東南アジアのスイーツにありそうな味。

決して不味くはないが、今後この食べ方をゴリ押ししていこうとは思えないレベル。

 

仕方なくわたしは、相変わらず凍ったままのうどんの塊を持ち上げると、味付けせずにプレーンで食べ始めた。

シャクシャク。

音だけはいっちょまえの存在感を示す。

 

もはや美味いとか不味いとか、そういう話ではない。これは「うどんシャーベット」という新たな商品と捉えるべきだ。

 

 

こうして10分後には「うどんシャーベット」は姿を消した。

 

これがわたしのよくある日常的な深夜だ。

 

 

サムネは再び、ホナウド!

 

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