腹文字(イニシャル)D

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都内の飲食店は20時閉店が多いが、大型商業施設内のレストランに限っては20時どころか、早い店は17時に閉店するありさま。

台場にある「アクアシティお台場」がまさにそれだ。

ましてや私は20時から柔術のスパーリングに参加するため、飲食店の閉店時間よりもスパーリングから逆算して胃袋を整えなければならない。

 

スタバで仕事を済ませた私は、18時半にSizzler(シズラー)へと入店した。

シズラーは世界5カ国に展開する、サラダバーがメインのグリルレストラン。

サラダバーには旬の野菜をはじめ、フレッシュなデリサラダやスープ、フルーツ、パスタ、デザートにドリンクなど総勢70種類を超える食材や総菜が顔を揃える。

それとは別に、グリルメニューとしてステーキやチキン、シーフードなどのプレートも用意されている。

 

簡単に言うと、新鮮で豪華なサラダ&フルーツ&デザート&デリ食べ放題に、余裕があれば肉や魚を別オーダーできる。

そして、あの究極の減量食「沼」で有名な、フィジーカーのシャイニー薊(あざみ)イチ押しレストランでもある。

 

話を戻すが、20時からのスパーリングに参加するためには、少なくとも19時半にはここを発たなければならない。

リミットは1時間。

 

(逆にちょうどいいか)

 

そうだ、別に時間がなくても構わない。

貧乏人根性が疼(うず)き、

「食べ放題ならば長時間粘って、最大限胃袋にぶち込むべき」

というゲスな考えが浮かんでくるが、量より質、短時間で美味しいものをササッと食べる楽しみ方もあるではないか。

ましてや後ろに予定が入っているため、必然的に食べる時間も量も制限されてしまう。

 

いつものシズラーとは違う「シズラー使い」を、今日は試みようと思う。

 

 

兎にも角にも時間のない私は、テーブルに着くやいなやスタッフを呼び、グリルメニューを注文をする。

「ラムチョップ&キングサーモンのグリル、マッシュポテトで。あとチーズトースト6枚」

スタッフの「え、おひとり様ですよね?」と言いたげな顔は無視して、すぐさまサラダバーへ向かう。

 

刻一刻とリミットが迫る私には悠長に吟味する時間などなく、直感で拾わなければならない。

大皿2枚を腕に乗せ、野菜やパスタ、フルーツをせっせと盛りつける。

 

一度テーブルに戻り、改めて出陣。

今度は大好物のカレーやデザートのアップルクランブル、クラムチャウダースープを漁る。

 

ラッキーなことにちょうど今、米が炊き上がった。

炊飯器一面に広がる真っ白な大地を、私が一番に耕せる。

白米好きな私はここぞとばかりにザクザク米を掘り起こし皿へと盛る。

山盛りの白米にシズラー特製ビーフカレーをたっぷりとかけ、シュレッドチーズをまぶすことで大満足の一品が完成。

 

アップルクランブルも、シズラーへ来たら忘れてはならないデザートの代表作。

これまた誰も手を付けていない状態で寝かされているではないか。

閉店時間までにアップルクランブルが完食されることはないだろう。

だったら少しでも、私が救いの手を差し伸べるべきではないか。

 

そう考えた私は、勇気を出してアップルクランブルをプレートいっぱいによそり、その上からソフトクリームをかぶせて、超ハイカロリーなアメリカンデザートを創作した

 

最後にクラムチャウダーは、用意されたスープだけで満足してはいけない。

スープへシュレッドチーズとシュレッドレタスを投入

これらの食材はトルティーヤの中身として陳列されているが、何をどれに入れようが自由なので、私はスープ系に入れて楽しむことにしている。

 

こうしてひとまず、私の夕食がおよそ出揃う。

テーブルに戻ると、ちょうどチーズトースト6枚が運ばれてきた。

 

この場合、「ソフトクリームが溶けるから」とアップルクランブルを食べようとするのはナンセンス。

真っ先に食べなければならないのは、チーズトーストだ。

マーガリンをたっぷりとしみ込ませた薄切りの食パンにチーズを振って、鉄板でカリっと焼いたシズラーの傑作。

冷めさせてはいけない。

すぐさま食べるのだ。

 

チーズトーストを平げたら、次こそがアップルクランブルの出番。

こうして、軽めのスタートから今後へとつながる流れを作る。

 

そうこうするうちに、メインディッシュであるラムチョップとキングサーモンが現れた

ラム専門店でもないくせに、シズラーのラムチョップは臭みもなく食べやすい。

そして脂の乗った美しいキングサーモンも、身が柔らかくあっという間に食べ終わってしまう。

付け合わせのマッシュポテトで小休止したら、次は野菜だ。

 

大皿2枚分の野菜たちは本腰を入れて食べなければならない。

なぜなら、生野菜は咀嚼(そしゃく)と嚥下(えんげ)にパワーを要するからだ。

今までの食べ物たちはよそ見をしていてもどんどん体内へと送り込まれるタイプだが、生野菜や生フルーツは本気で向かい合う必要がある。

 

息つく暇も惜しみながら、野菜とフルーツを制覇。

残すは山盛りに横たわるカレーのみ。

おっと、カレーの前にクラムチャウダーでお口直しだ。

 

ということは、本日のデザートはカレーということになる。

昨夜は劣化した油のせいでカレーを堪能できなかったわけだが、今日は油を使って調理したトッピングはなく、油のニオイもしないため、安心して体内へと流し込める。

 

(ふぅ、満腹だ)

 

時刻は19時半、ジャスト。

さぁ、スパーリングへ向かおう。

 

 

お分かりだろうか。

時間があろうがなかろうが、人間の本質的な部分は変わらないわけで、意地汚い私はやはり、可能な限り胃袋へ詰め込んでしまったのだ。

普段なら2時間以上かけて食べるであろう大量の食糧を、1時間に凝縮して食べ切った。

 

膨張した胃袋は、私の豊満なバストよりも突出している。

横から見ると、まるでローマ字の「D」のようなフォルムだ。

スパーリングで、もしマウントポジションなどとられた場合は、下からいろいろ噴射するだろう。

 

 

Illustrated by 希鳳

 

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