某SNSからの不穏な通知

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わたしは目が悪いので、コンタクトレンズがなければ社会生活がままならない。メガネで行動できなくもないが、矯正視力が0.4くらいなのでかなり自由が制限されてしまうのだ。

ちなみに、コンタクトを装着すると0.8くらいの視力だが、さらに度を上げれば1.0まで矯正可能。とはいえ、すでに度数が二桁を叩き出しているため、これ以上パワーを上げるとメーカーのラインナップでは耐えられなくなる・・ということで、なんとなく控え目な矯正視力に抑えているのである。

 

このような感じで”強度近視の代表選手”的なわたしは、視力矯正器具を使わない時間がほとんど存在しない生活を送っている。唯一、寝る時だけがフリーだが、時々メガネをかけたまま寝ているので、こうなると24時間なんらかの器具を装着しているわけで——。

 

そんなわたしは、起床のアラームをスマホでセットしている。そのため、枕元にスマホを置いたまま就寝することとなり、何らかの通知が届いた際についつい確認してしまう癖がついている。

この習慣から脱するために、一時期スマホの通知をすべてオフにしていたのだが、待ち合わの際に、「もうじきつく」とか「どこどこへ来て」といった即時性の高い連絡を受け取るためには、スマホの画面を睨みつけていなければならない・・ということが発覚。その面倒くささに根負けして、結局のところ通知をオンに戻したのだ。

 

というわけで、いよいよ意識が遠のく・・というところでブーッとバイブ音がすると、ついつい無視できずにスマホへ手を伸ばしてしまうのであった。

 

 

ブーッブーッブーッ

 

(・・もう時間か)

起床を伝えるバイブ音が轟く。しぶしぶ顔を横へ向けてスマホをチラッとめくるも、画面との距離が遠くて視認できない。とはいえ、その距離わずか10センチ——。メガネをかければ見える距離だが、裸眼ではまったく分からないのが強度近視のつらいところ。

おまけに、なにかを見る時というのは両目の視点が交差するところに対象物がくるわけだが、わたしの裸眼ではそれが叶わない。なぜなら、見える距離が近すぎるので、片目ずつでなければ視認できないからだ。

 

そんなこともあり、めくったスマホを目元まで手繰り寄せると、すぐさま「スヌーズ」をタップした。

 

スヌーズ機能というのは便利なようで恐ろしい魔力を持っている。「あと5分・・」という小さな怠惰を許容し続ける代わりに、スマホの主が遅刻をすることで人生を破滅へと導く可能性を秘めているからだ。

それでも、「スヌーズ」という文字が「停止」よりも堂々と真ん中に表示されるあたり、iPhone開発チームの底意地の悪さがうかがえる。そもそもアラームというのは、その時間に起きるためにセットするものであり、明日の予定を把握した上で設定される時間のはず。それなのに、スヌーズ機能という「甘え」が付随することで「あと5分だけ・・」が実現してしまうのだ。

こんな機能は撤廃するべきだし、そもそも停止ボタンよりもスヌーズボタンを大きく表示するのは本末転倒だろう。ニンゲンとは弱き生き物であるがゆえに、ぬるま湯を差し出されたらそこへ浸かるよう遺伝子に刻み込まれている。だからこそ、甘えを許すような選択肢を提供してはならないのである。

 

こうしてスヌーズが実行されたわけだが、ふと画面を見たわたしは不思議に思った。

(なんでXからの通知が、スヌーズなんだろう・・)

X(旧Twitter)のアイコンは、黒のベースにローマ字の「X」が白字で描かれたデザインでできている。そんなXの通知が、なぜかスヌーズの残り時間をカウントダウンしているのだ。

今はSNSをチェックする時間ではないし、一秒でも多く眠るためのスヌーズタイムなわけで、可能な限り有効活用しなければならない。だがなぜ、Xの通知がスヌーズなんだろう——。

 

偶然ではあるが、FacebookとInstagramからの通知も並んで表示されており、この三つ巴に違和感はない。そしてFacebookとInstagramのほうは通常の表示がされており、なんら不自然さは感じられないのだが、Xだけがなぜかスヌーズについて知らせてくれているのだ。

(え・・マジでなんでなんだろう)

目を閉じながらも悶々とするわたしは、Xとスヌーズの関係性について考えた。だが考えれば考えるほど両者に関連はなく、奇妙な現象であることが浮き彫りになった。なんでXからの通知がスヌーズなんだ——。

あまりに気になりすぎたわたしは、ついにメガネを掴んでスマホの画面を確認した。先ほどは裸眼だったため、左目のみで見ていたことでなんらかの齟齬が生じたのかもしれない。メガネをかけてちゃんと見れば、Xとスヌーズの関係性がハッキリするに違いない。

 

(・・・・・)

 

なんと、Xのアイコンだと思っていたそれは、スヌーズの表示を消すための「バツ」ボタンだった。強度近視のわたしが片眼でチラ見をしたことで、Xのアイコンと見間違えたのだ。おまけにFacebook、InstagramというSNS御三家と並んで表示されたことにより、なんら違和感なく受け入れてしまったのだ。

 

 

こうして、なんとなく目が覚めてしまったわたしは、スヌーズの限界を待つことなく起床したのであった。

 

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