防犯カメラの抑止力は、プロにとっていかほどの脅威となるのか

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先日、わたしの実家へ不審者の訪問があった。

「修理屋ですが、屋根の状態を確認させてください」

そう言って自宅へ上がり込んで、ロケハンするタイプが流行っている模様。おまけに、振り込め詐欺の電話も未だにかかってくるらしく、かつて犯人から「息子さんが会社の金を使い込んで・・」と告白された父が、「ああ見えて、じつは娘なんですよ」と、残念そうにわたしの性別を開示した事件は記憶に新しい。

このように実家へ魔の手は迫るも、両親・・とくに母は気の小さい臆病者なので、そういった不審者の案件に関してはすぐさまわたしに報告してくる。そのため、振り込め詐欺に引っ掛かることはないのだが、仮に自宅へ上がられてしまえば、その先にどんな被害が待っているのか分からない。よって、何人(なんぴと)たりとも玄関へ入れることのないよう、厳しく言い渡しているのである。

 

「玄関の門に頑丈なカギをつけたほうがいいって、お父さんが言うんだけど」

背面飛びで余裕で超えられるであろうわが家の塀と門に、立派なカギを設置したところでどうなるというのか。昭和生まれの古い人間である両親は、"犯人は門を突破して、正面玄関から正々堂々と侵入してくる"と信じているのだろう。

いまどき、そんな律儀で分かりやすい犯罪者がいるはずもなく、お飾りの立派なカギをかけるよりも"防犯対策に力を入れるほうが効率的"と踏んだわたしは、Amazonで防犯カメラを検索した。

 

(こんな安い値段で買えるのか・・)

わたしが暮らしているマンションはエントランスにカメラが設置してあるので、訪問者の顔を確認してから応答するか否かを決定できる。もちろん、不審者が必ずしもインターホンで開錠を依頼するとは限らないが、ベランダ側から侵入するには多くの目撃者に通報される可能性と、よじ登る途中で落下するリスクを覚悟しなければならない。となれば、居住者の後をついてエントランスを突破するか、宅配業者やガスや水道の点検を装って接触するのが無難——。

そんな生活環境だからこそ、個別に防犯カメラを設置するという考えに至らないわけだが、一軒家の場合はたしかにカメラがあるほうが安全である。ましてや、道路側から敷地内が丸見えのわが家・・・そうか!ならばそれを逆手にとって、外から見えやすいところに防犯カメラを設置すれば、それが抑止力につながるのではなかろうか。

 

それにしても、最近の防犯カメラが高性能・低価格であることには驚きである。暗視範囲が30メートルあるのもすごいが、自身のスマホと防犯カメラをアプリで繋げることで通話も可能。つまり、不在時の訪問者と顔を見ながら話すことができるわけだ。おまけにGoogleアシスタントにも対応しているため、呼びかけ一つで複数のカメラ映像を確認することが可能——と、これほどまでに多機能でありながら、数千円というお手頃価格で購入できるのだから、なんとも便利な世の中になったものだ。

加えて、防犯カメラとしてだけではなく、ペットの様子を確認したり老人や子どもと会話をしたりと、様々な使い方ができる生活必需品の一つといえるだろう。

だが問題は、電源がコード式であることだ。これではわが家の玄関には設置できないため、ソーラー式を選ぶしかない。ソーラー式はコード式よりも若干高価ではあるが、電源がなければ防犯カメラの意味がない——ってことは、ダミーカメラでもいいんじゃないか?

 

最近の防犯カメラは高性能だが、最近の"ダミー防犯カメラ"もかなり本格的にできている。人感センサーで自動点灯したり、夜間は赤色LEDが常時点滅していたりと、本物さながらの機能が搭載されているのだ。おまけにソーラー式というわけで、これはむしろ安価でそれっぽい偽物を買う方が、断然お得なのでは——。

 

その時、わたしはとある友人の顔を思い浮かべだ。

(そうだ、あいつに確認しておこう)

幼少期から様々な犯罪行為を嗜んできた友人に、ダミーの防犯カメラの存在について意見を求めた。すると「多分、ダミーであると見破ることはできる」「ダミーの裏に本物のカメラを仕掛けている場合がある」など、なかなか参考になる話を聞かせてくれた。ふむふむ、ということはダミーを目立つところへ設置して、その裏で本物の防犯カメラを取り付けておけば——。

「でも、いざとなったらカメラごと破壊するだろうね。それと、侵入するなら素顔は晒さないはず」

 

——あぁ、そうだろうな。セコムなどの高度なセキュリティーシステムを突破してきた友人にとって、一般家庭の防犯カメラなどおもちゃ同然。そして不法侵入を成功させるレベルの輩は、そんなちんけな防犯カメラなど恐れていないのだ。

(いっそのこと、友人を実家に送り込んでやろうか・・)

 

防犯対策というのは、なかなか手ごわいものである。

 

Illustrated by 希鳳

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