これは朗報である——。
今まで、なんとなくふんわりと「ダメなんじゃないか」と思われていた疑問を、料理嫌いなこのわたしが解決したのだ。・・いや、そもそも「ダメなんじゃないか」とも思っていなかった可能性が高い。なぜなら、そうすることが当たり前だと刷り込まれていたからだ。
ところがわたしは、そういった固定観念に左右されず己の舌を信じることで、これまでうやむやにされてきた疑問を解決したのである。
・・・ここまで引っ張っておいて、いったいどんな解決を図ったのかというと、いわし団子(いわしのつみれ)などの魚肉ねり製品は、生のまま食べられるという事実を明らかにしたのだ。
これまでも、ウインナーならば冷たいままポンポンと口へ放り込んでいたが、いわしのつみれは今回が初挑戦となった。近所のスーパーで値引きシールが貼られたねずみ色のダンゴを見た途端、すぐさまかごへと放り込んだわたし。だがその時「これって、生のまま食べてもいいやつなのかな・・」と、小さな疑問が浮かんだ。
ダンゴの裏に貼られたシールを読むも「加熱してからお召し上がりください」といった表記はみられない。それどころか、「生ものですのでお早めにお召し上がりください」と書かれているじゃないか。
「生ものですから・・・」の表記は、およそ生で食べられるものに使われる常套文句である。なぜなら、加熱が必要な生肉や生魚にこのような注意書きがされているのを、見たことがないからだ。というか、正確には「加熱が必要な肉や魚を買ったことがない」というべきかもしれないが。
とにかく、わたしの野生の勘が働いたのだ。「これは、生のままでも食べられる」と。
念のため、料理上手な友人たちに画像を送り、これが生でも食べられるのかどうかを確認したところ、
「おでんのネタっぽく火を通すべきだわ。そのままではダメ」
「普通はおでんや鍋に入れたり、素揚げにして食べるよね」
というような渋い返事をもらったのだが、彼女たちの返信が遅かったため、いわし団子はすでに胃袋へと送り込まれていた。
もちろん、匂いも味も確認した上で飲み込んだので、仮に"生で食べられないもの"だったとしても、わたしは大丈夫だという自信があった。それゆえ、彼女らの返信は意味がないも同然だったが、とりあえず礼を伝えてすでに食べたことを報告したのである。
そこでわたしは、いわしの裏に貼られたシールに記載された「魚肉ねり製品」という言葉について調べてみた。大阪検疫所食品監視課によると、
「魚肉ねり製品とは、魚やイカ、エビなどのすり身とこれを原料とし、食塩等を加えて練って、整形した後、加熱によりゲル化した練り製品(かまぼこ、さつま揚げなど)をいいます。」
と定義している。つまり加熱してあるわけで、そのままでも食べられるのだ。たしかに、かまぼこや魚肉ソーセージなどは、誰もがそのまま食べているだろう。だが、さつま揚げやいわしのつみれとなると、ほとんどの人が加熱調理してから食べているのではなかろうか。
その理由は、「生のままで食べてはいけないから」というイメージもあるだろうが、単純に「加熱調理したほうが美味しいから」ということだろう。そしていつしか、加熱したほうが美味い→加熱しなければならない・・と変化していったわけだ。
そういえば過去に、買ったばかりのシャウエッセンをそのままむしゃむしゃ食べていたところ、友人に驚かれたことがある。何がおかしいのかわたしには分からなかったが、世間一般的には加熱調理して食べるものであり、それをコンビニを出てすぐに開封し、素手でつまんで食べているのだから奇妙に写ったに違いない。
ちなみに、シャウエッセンなどのウインナーは「加熱食肉製品」と呼ばれ、
と定義されている。さらに食肉製品としての分類があり、加熱食肉製品の中に「包装後加熱」と「加熱後包装」があるのだ。そしてウインナーの多くは「加熱後包装」だと思うが、いずれにせよそのまま食べられる製品なのである。
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要するに、料理嫌いあるいは料理が不得手な輩は、「魚肉ねり製品や加熱食肉製品を選べばいい」のだ。これならば調理の手間がかからないし、店で買ってすぐに食べられるわけで、その場で欲を満たせる"最高のご馳走"といえるからだ。
「でも、加熱したほうが美味しい・・・」
そんな戯言は受け付けない。美味い食べ物が食べたいのならば、料理上手な友達に頼めばいい。または、レストランでシェフに作ってもらえばいいだけのこと。
そんなことよりも空腹を満たして、「とにかく食べたぞ!」という満足感を得るには、これらの製品と果物に頼るしかないのだ。
——賞味期限ギリギリのいわし団子とさつま揚げ、高級もめん豆腐、ちくわを大量に購入したわたしは、遠足前夜の児童のようにワクワクしながらつまんでいるのである。
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