皆さんの好みはダブルだろうか?それともシングル?
・・いやいや、ベッドのサイズではない。もちろんトラックのキャブでもないし、スーツの違いでもなければフィギュアスケートのジャンプでもない。ではいったいなにを指しているのだろうか?
――そう、トイレットペーパーの話だ。
たかがトイレットペーパー!と侮るなかれ。用を足した後に気持ちよく個室を出られるかどうかは、トイレットペーパーにかかっているのだから。
もちろん、その手前にあるウォシュレットの存在こそが、すべての結果を左右するという意見に異論はない。だが公共施設や公衆トイレにおいては、ウォシュレットにお目にかかれる確率は低いため、そうなると期待するはトイレットペーパー一択となるのである。
個人的には断然ダブルが好み。柔らかい紙質にふんわりとした手触りが特徴で、物理的にも感触的にも指先に厚みが出る。その結果、ウォシュレットでビシャビシャに濡れた肌でも、指先を濡らすことなくたっぷりと吸水することができる。
一方シングルは、古紙や再生紙といった一枚の紙からできているため、どうしても硬めの肌触りとなる。またダブルと違って「空気の層」がない分、水分を吸い上げるスピードも速い。そのため、巻き取った紙の量が少ないと指先に若干の湿りを感じることがあり、それが尿ではなくウォシュレットの水だとしても、とにかくその感触が苦手なのだ。
かといってトイレットペーパーの無駄遣いは許されない。場合によってはトイレが詰まる恐れもあり、資源の無駄というだけでなくリアルに非常事態を招く恐れがあるわけで。
それでも、シングルのほうが長さがあるため交換の手間が省ける。よって、学校や病院、区役所、駅構内といった公共施設では、シングルタイプを好んで使用するのだ。
そしてもう一つ、「トイレットペーパーがその後の運勢を決める」といっても過言ではない、とあるタイミングが重要である。
それは、片手でいかにスパッと紙を切ることができるか、というある種の挑戦だ。
ダブルの場合、ほとんどの製品にミシン目がついている。よって、ゆっくりと引っ張っていればいつかはミシン目にたどり着くので、その時点でスナップを利かせて、まるでテーブルクロス引きのようにパンッと弾けば一発でカットできる。
しかし、勢いよく引いたはいいが、運悪くミシン目がすべってしまった場合などは最悪。ガラガラガラと無駄に何回転か引っ張ったあげくに、紙が地面に着いてしまい呆然とすることも。よって、ミシン目の位置を注意深く観察しておかなければならない。
これに比べてシングルは、わたしの知る限りミシン目がついているタイプを見たことがない。さらに紙質も厚くて張りがあるため、ワンハンドでスナップを利かせて勢いよくちぎろうものなら、ものすごい勢いでロールを回転させて大惨事となる。
では、逆の手できちんと押さえながら切ればいいのでは?
それはそうだが、シングルの場合はこれすらも上手くいかないことがある。ペーパーホルダーのフタに沿わせて勢いよく真横へ切り裂いたところ、極太のつららのような形状で紙が残ることがあるのだ。
(しまった・・・後から使う人に「やっぱりアイツはだらしないわ」とか思われたらしゃくだ。切り口をキレイに揃えておかないと)
外面(そとづら)を重視するわたしは、無駄に残した長いつららを巻き取ると、左手でフタを抑えて右手で静かに紙をちぎった。
ズズズズ・・・・
ま、まずい!紙が頑丈すぎて、ゆっくりスライドさせたらそのまま回転してしまった。わたしはいったい、トイレットペーパーを何メートル巻き取れば気が済むのか。
こうなったら、キレイな直線にはならないが、両手で紙を持って破るしかないだろう。とはいえ、これでは残ったほうの紙にシワがつくので衛生的とはいえない。かつ、次に使う人もこのシワを見ながらトイレットペーパーを引き出すわけで、いずれにしてもわたしが野蛮で無神経な人間だと思われかねない。
ならば先端を三角に折りたたんでシワを隠してしまえばいいのではないか?
いや、これも不衛生だと非難される可能性がある。コロナ禍で異常なまでに清潔さを求めるようになったツケが、こんなところで影響するとは――。
ほらみろ。だからこそ、ダブルのほうがいいんだ。
たかが用を足してトイレを出るだけのことに、ここまで頭を悩ませる必要など本来ないわけで、それでも現実的にトイレットペーパーが変な形で切れてしまったら、そのまま放置するわけにもいかない。
むしろ、ダブルで切れ目のあるタイプにもかかわらず、切れ目以外のところで切り取られていたりしたら、それこそ気になってしょうがない。
・・・こうして、わたしのトイレ滞在時間が長引くのである。
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