新型コロナ対策として、スポーツジムやアパレルショップの入り口で、検温をしてから入場する方法が主流となっている。
私の所属するトライフォース赤坂でも、練習前に検温を行い、37度以上の人は帰宅しなければならない。
使っている体温計は非接触型で、おでこの表面から発せられる赤外線量を測定するものだ。
他人が検温する姿を見ていて思うのは、若干、ロシアンルーレットぽい。
体温計の形がピストル型のため、自らのおでこにリボルバー(回転式拳銃)を突き付けてるように、見えなくもない。
カチッ
運命の引き金を引き、体温を測定する。
*
昨日の私は、少々人間離れしていた。
体温計でおでこを撃ち抜き、温度を確認すると、
「34.7度」
という数値が現れた。
「その体温計、少し低めに出るから気にしなくていいよ」
と、ジムの仲間は言う。
しかし、彼女らの言う「低め」は、0.5度とかそのレベルなわけで、1度も違わない前提だ。
もう一度、おでこを撃ち抜く。
カチッ
「33.6度」
(さっきより1度下がった・・)
それを見ていた、大学病院勤務の薬剤師の友人が、
「これね、検温モードにもよるんだよ」
と、私の手から拳銃を、いや、体温計を奪った。
そして得意げにモード選択をし、
「これで正しいおでこの温度が測れるから」
と、自らのおでこに向かって「カチッ」とお手本を見せてくれた。
その結果、彼女の体温は36度台と普通だった。
私は体温計を奪うと、再度、おでこを貫いた。
カチッ
「29.7度」
もはや、重度の低体温症だ。
人間は体温が30度を切ると、半昏睡状態となり、瞳孔は散大する(私が得意なやつ)。
心拍は微弱、呼吸数は半分以下になる。
薬剤師の友人に表示部分を見せつけた。
「あらー、それ測り方が下手なんだよー」
そういうと、今度は彼女が体温計を奪い、私のおでこに狙いを定めた。
カチッ
「ウフフ(今度は正しく測れたはずだよ)」
彼女はからかうように微笑んで、数値が出るのを待った。
「33.2度」
(・・・・・・)
その場にいた誰もが絶句し、もはや私に再検温を促す者は、いなかった。
*
そういえば少し前、都内の某ユニクロへ行ったときのこと。
入り口でおでこに体温計を当てられ、検温された。
一列に並び、店員さんにカチッカチッと測ってもらう。
結果、熱がなければ入店できる。
そして私の順番が来た。
カチッ
「・・あれ」(店員さん)
カチッ
「・・あれ・・どうしよう」(店員さん)
なぜか私の時だけ、上手く検温ができないようだ。
それが、高温すぎるのか低温すぎるのか、はたまた温度が測定できないのかは分からない。
しかし、彼女は焦りながら何度も、カチッカチッと私のおでこを撃ち抜いている。
「あの、すみません。
ちょっと体温計が壊れてしまったので、お待ちください」
そういうと、小走りでバックヤードに駆け込んで行った。
背後からは苛立ちと殺気を帯びた冷たい視線を感じる。
私のせいで、何十人ものお客さんが足止めをくらっているのだから、当然だ。
ーーこのままでは暴動が起きる
危険を察知した私は、すばやくユニクロ店内へ消えた。
すると、暴徒化しかけた来店客らも一斉に、店内へとなだれ込んだ。
(ま、いっか・・)
*
とどのつまり、あのときも私の体温が異常に低かったのだろう。
20度台とか、ありえない体温だったため、店員さんは焦ったのだと推測できる。
そんな私は今日も元気いっぱいだ。
ちなみに、日本パラグライダー協会(JPA)のサイトには、低体温症の症状が詳しく記されている。
軽症(35~33度)
無関心状態、すぐ眠る。歩行よろめく。口ごもる話しぶり。ふるえ最大。(協力的にみえて協力的でない。まともそうに見えてまともでない。)中等症(33~30度)
33~32度 会話がのろい。閉じこもる。逆行性健忘。意思不明。運動失調。31~30度 錯乱状態。支離滅裂。しだいに応答しなくなる。震え停止。歩行や起立は不可能。
重症(30度以下)
30~28度 半昏睡状態。瞳孔散大。心拍、脈拍微弱。呼吸数は半分以下。28~25度 昏睡状態。心室細動。
25度以下 腱反射消失。仮死状態。
20度以下 脳波消失。心停止。
16度 救命しえた成人の偶発性低体温症の最低体温。
このように、体温ごとに出現する症状は異なる。
これを見ると、私は危うく昏睡状態に陥るところだったわけで、体調管理には今まで以上に気を配るようにしたい。
Illustrated by 希鳳
映画「ディアハンター」を思い出した!
ウラベは1/6を引き当てるタイプ
なんだその映画は!
見たことないけど、まぁ1/6で私が死ぬってことはわかった笑
重いベトナム帰還兵もの