生け贄もだいたい子供

Pocket

 

動物に例えるとゴリラとしか言われない私。特に否定する理由もないし、カピバラに似てると言われても微妙ゆえ、霊長類の仲間であるゴリラでよかったと思う。

ゴリラに似てると言われるからといって、その生態まで似るわけではないが、好きな食べ物の上位に「バナナ」がくる。

 

感動したのは、柔術の試合会場で見ず知らずの外国人から、房でバナナを与えられたこと。――あれはなぜだろう。計量前で体重を増やせなかったため、試合後のご褒美としてありがたくいただいたが、なぜ急に私にバナナを房で渡してきたのか疑問は残る。

先日もお節介な友人から、

「ほらバナナ食べなさいよ」

と、頼んでもいないのにバナナを押し付けられた。ありがた迷惑と言いたいところだが、まったく迷惑ではないのでありがたいで終わった。

 

 

昨日、スーパーでバナナを購入した。私の食の好みは変わっており、なんでも未熟な状態がベスト。たとえばステーキならばレア、モチも焦げ目のつかないやや硬め、米や麺も芯のあるアルデンテ、となると果物だって熟れていない状態がいいに決まっている。

そして目の前にあるバナナは美しい緑色をしている。これこそ、私が最も好む歯ごたえのある未熟なバナナではないか。早速バナナを抱えてレジに並ぶ。

 

「これ、やばくないですか?今朝届いたんだけど」

顔なじみの店員が話しかける。

「なんで?いい感じの色じゃない?」

ヤバいの意味が分からない。

「だってこんなのまだ食べられないでしょ」

(あぁ、キミみたいな凡人にはちょっと早いかもしれないね)

そう心の中で嘲笑しながらバナナを大切に持ち帰る。帰宅するや否や、さっそくバナナを引きちぎる。

(ん?うまく折れないな)

普通ならギコギコしてると房からちぎれるはずだが、こいつは一向にちぎれない。イライラするのでフンッと引っ張ってちぎる。いよいよ皮を剥きバナナとご対面、となるはずが皮も剥きにくい。

(まだ青いからな、瑞々しさが裏目に出たか)

冷静さを保ちながらも強引に皮をひん剥く。青いバナナの皮というものは、すんなり割けない。繊維に沿ってきれいに割ける皮は、ある程度死んだ状態でないとそうならないのかもしれない。

そしてなんとか顔を出したバナナにかじりつく。

――シャクッ

(なんだこの歯ごたえは、バナナとは思えない食感!)

これぞ私が求める、歯ごたえのあるバナナ。感動しながらバナナをよく噛む。

(・・・・)

無味というだけでなく苦みがある。バナナが苦い。

(これはハズレを引いたのかもしれない、別のヤツを試してみよう)

私は再び、バナナを房から引きちぎり皮を剥ぎかじりつく。

(・・・・・)

――ニガイ。

バナナが苦いというのは、ちょっと想定していなかった。そこで冷蔵庫からヨーグルトを取り出し、口の中で苦いバナナとミックスしてみる。多少はまろやかで苦みが緩和されると思ったが、予想以上に苦みが際立ち、決して豊かなハーモニーを生み出すことはなかった。

 

舌に苦み成分がまとわりついて膜をはるような感覚、わかるだろうか。甘党の私は今日、バナナにも苦いヤツがいるということを知った。硬くて無味までは許せるが、苦いのは受け入れ難い。もう少し黄色くなるまで寝かせておこう。

 

 

未熟な食べ物が好きな私にとって、オススメ未熟料理はパンケーキ

パンケーキの最もうまい食べ方は、パンケーキミックスをボールでかき混ぜトロトロになったあの状態を、スプーンですくう方法だ。

「焼かずに食べるの?!」

そうだ。

「お腹壊すじゃん!」

壊したことなどない。舌の肥えた私ならではの食べ方とでも言おうか、焼く前のホットケーキミックスが一番うまいと断言する。ゆえに、あんこは嫌いだが粉ものが好きな私はたい焼き屋で、

「あんこ無しで焼いてください」

と、皮だけのたい焼きをオーダーする。しかしたい焼きは、真ん中にあんこが入っているからこそ、中まで火が通らなくても完成する作りになっているのだ。あんこがない分、中央の深部まで火が通らず何度も焼き直す店員。

「あの、中は生でいいから」

たまらず声をかける私。

「え、それはダメです」

否定する店員。

「いいから、失敗作も全部ちょうだい」

イライラしながら皮だけのたい焼きを買い取る私。「失敗作も全部」と言ったが、結果的にすべて失敗作になるわけで、焼けば焼くほど失敗作が増える、準ネズミ講方式。

「お金は1つ分で結構です・・」

不安げな表情で店員が告げる。ラッキーとばかりに130円を払い、皮だけのたい焼きを4つほおばる。

(んー、うまい)

中はとろっと生焼け。できれば外も生焼けがいいくらいだ。

 

Thumbnailed by オリカ

 

Pocket