会社の守護神は、社長や部長ではなく一介の事務職員である。

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職業柄、バックオフィスを担当するスタッフとのやり取りが多いわたしは、経験や常識、はたまた人間性や倫理観などを必然的に目の当たりにするわけだが、とにかく事務職員というのは「ウラオモテのない者が多い」と感じている。

無論、これも人それぞれなのは当然のことだが、とはいえテキストでの会話が多い分、言葉のチョイスや表現の仕方などちょとした部分に「その人らしさ」が漏れ出ることがあるのだ。

 

基本的に「業務連絡」というのは必要事項を伝えるだけでいいので、むしろ”余計な挨拶や定型文は不要”と考えるわたし。よって、機械のように必要事項をタイピングし送信するだけの作業だからこそ、人間味などを盛り込む余地もなく、作り笑顔やおべっかを使う必要もない——。

だからこそ、この辺りに「事務職員にウラオモテのない者が多い理由」があるのではないか? と思うのである。

 

たとえば、伝えづらい内容の文面を送る際に、「相手を傷つけたり刺激したりしないように」と、間接的な表現を交えつつ相手に寄り添う形で文章を作る者がいるとしよう。

これとは逆に、「誤解を招かないよう、事実を明確に伝えよう」という考えから、事務連絡であることを前面に出しつつ無機質な文章を作る者もいる。

このように、同じ内容の文面を作るにしても、そこに「その人らしさ」が現れるもの。そしてこれは、実際に会ってみても変わることのない印象であるため、メールなどのやり取りで受けるその人らしさは、紛れもなく「その人」を表している——すなわち、ウラオモテのないやり取りとなるわけだ。

 

言い換えれば、テキストという限られた手段での勝負だからこそ、事務職員のセンスや能力がものを言うのである。

 

見栄っ張りなニンゲンは、目立つことや爪痕を残すことこそが全て!という勘違いをしがちだが、わたしのようにクライアントから情報をもらって書類を作成したり、申請業務を行ったりする側からすると、「いかに正確でいかに読みやすい情報をもらえるか」が全て。

言うまでもなく誤記は論外だが、英数字の半角や全角がごちゃ混ぜになっていないか・・とか、電話番号や被保険者番号のハイフンがあったりなかったりしていないか・・とか、どうでもいい(と思われがちな)部分の統一がとれているだけでも、ストレスなく読み進めることができる。

そしてこれこそが、信頼関係を構築する絶対的な要素となるのだ。

 

「たかがハイフンの統一なんて・・」と思うかもしれないが、そんな些末なことにも配慮ができる感性こそが、ミスを回避するためになくてはならないポテンシャルなのだ。むしろ、そんなことすら配慮できないならば、そっちのほうが低能と言える。

結果として、こういう小さな配慮の積み重ねが感謝と信頼を生み、しいては仕事効率アップへとつながるのである。

 

(個人的な見解ではあるが、事務職員の能力が高い企業ほど安定しているように思う。事実、書類関係が杜撰であるにもかかわらずまともな会社・・というものを、わたしは知らないわけで)

 

そして先日、とある顧問先の事務担当者と対面で話をする機会に恵まれた。メールのやり取りで感じていた印象(もちろん、好印象)通りの人物で、むしろそれ以上に理解力があり、将来を見通すビジョンも持っていた。

(この会社は、彼こそが命綱だな・・)

職種としては現場作業をメインとする職人集団ゆえに、職人たちは自らのスキルアップと経験の蓄積に力を注いでいる。それを裏で支えているのが彼の仕事なのだが、ペーパーワークというのはヒトの目に触れない分、ややもすると軽視されがちな側面も——。

 

しかしながら実際のところ、契約を締結するにも給与を支払うにも会計処理をするにも、事務職員がいなければ成り立たない。そして、職人たちが気持ちよく仕事に就けるよう、また、従業員たちが安心して働けるように彼ら彼女らの背中を守っているのが、事務職員という守護神なのだ。

 

 

誠実さ、緻密さ、配慮深さ、機転の良さ・・これらの要素を持った者だけが、「事務職員」の名を語ってもいい——と、わたしは思うのであった。

 

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