プロボウラー、かつ、プロオイラー。

Pocket

 

今日はいろんな人と出会ったが、中でも生まれて初めて"プロボウラー"と接触できたことは、わたしにとって多くの学びと感動をもたらした。「出会った」ではなく「接触した」というのは、プロボウラーである彼女がわたしの前腕をマッサージする・・という、ちょっとしたラッキーに遭遇したからだ。

ちなみに「ボウリング」と聞くと、ラウンドワンなどのレジャー施設で楽しむ"娯楽スポーツ"のイメージが一般的。だが、わたしにとってはそうではない。なぜなら、身近な友人がハイレベルなアマチュア選手であるため、毎度聞かされるボウリング話は、お遊びのそれとは違いシビアで過酷な競技・・というイメージだったからだ。

しかも、その友人でさえトップアマとはいえないのに、さらにプロボウラーともなれば、わたしにとっては想像もつかない雲の上の存在といっても過言ではない。そんな人物と会うことができたのだから、今日はちょっとした記念日である。

 

そういえば、これまでの人生においてボウリング場へ足を運んだ回数は片手で数えられるほどしかないわたしにとって、ボウリングが上手い人たちが"投げる前にボールを拭く行為"というのは、「単なるカッコつけ」なのだと思っていた。あんなに硬くてツルツルの樹脂でできた球が汚れるはずもなく、それでもいちいち布で球を撫でるのはある種のパフォーマンスなのだろう・・と、勝手に決めつけていたのだ。

だが、よくよく思い返してみるとボールの表面は若干ベタついていた気がする。とはいえ、ボウリング歴数回の"プロ素人"にとっては、そのベタベタが投球に影響することなど皆無なため、ポテトチップスを触るよりも油っぽくないボールの表面をぬぐうことは、さすがにしなかった。

ところが、プロにとって・・いや、ある程度のレベルのプレイヤーにとって、レーンに塗布された潤滑油——いわゆる"レーンオイル"の分布およびボールへの付着は、勝負を左右する重要な要素となるのだそう。そのため、ボールを拭く行為は当然のことながら、ボウリング場が公開するオイルパターンやボール表面に付着したオイルの状態が、より良い一投のための貴重な情報源となるのだ。

(・・カッコつけだなんて言って、ごめんなさい)

 

さらにド素人を驚かせたのは、"プロはボールを10個以上持っている"ということだった。「マイボール」という呼称からもてっきり一つだけかと思っていたが、実際にはいくつものラインナップを揃えており、試合ともなれば持ち込みの上限である「6個」を持参するらしい。

——いったいなんのために、そんな大荷物で行くんだろうか。

 

「ボールのカバー(表面)にヤスリをかけて摩擦を出すことで、(レーンに塗られた)オイルの影響をコントロールするんだよ」

 

プロの試合ともなると、当たり前だが全員がベストなコースを攻めてくるため、必然的にライン上のオイルが剥がれていく。そうなると、ボールは左へ曲がりやすくなる・・つまり、フック回転になってしまうのだ。

そうなると、一番右奥にある「10番ピンだけが残る」という、なんとも面倒な状況に陥りやすい。このスペアを取るのが難しいことくらい、ド素人のわたしにも容易く想像できるわけだが、このような状況を作らないためにも、表面の摩擦が異なるボールに交換することで投球をコントロールするのだそう。

要するに、常に同じ投球ができることこそが、プロの力量なのだ

 

女子プロいわく、「再現性の高さがプロボウラーの素質」とのこと。毎回同じボールを投げられるからこそ、レーン上のオイルコンディションが確認できる・・というのは、当たり前といえば当たり前。無論、アマチュア上位の友人も深く頷いており、ボウリングが上手いイコール再現性も高いというわけだ。

これらの事実からも、同じことを繰り返すのが苦手なわたしにとって、ボウリングという競技がいかに難しくいかに不得意であるかがよく分かる。よって、わたしがどれだけ多くのボールを用意しようが、二度と同じ球は投げられないため意味がないのである。

 

——そんな話を聞きながら、わたしは女子プロに前腕のアロママッサージをしてもらっていた。プロボウラーとして活躍するかたわら、アスリートアロマトレーナーやオイルソムリエの顔を持つ鈴木晶子プロは、身長168センチのスラっとクールな女性。

この長い手足から繰り出される剛速球で、これまで何万本ものピンをなぎ倒してきたのだろう。そして、ボウリングといえばオイルコンディションを見抜くプロでもある。そんな"オイルのプロ"だからこそ、あらゆる方面の"油"について知り尽くしてわけで。

・・・そう、言い換えるならば「プロオイラー」なのだ!

 

 

というわけで、ボウリングという競技の奥深さに加えて、レーンオイルがもたらす状況変化のマネジメントについて、プロボウラー直々にレクチャーを受けるという贅沢な時間を過ごさせてもらったわたし。

ベルガモットのいい香りに癒されながら、「ボウリングのオイルコンディションについてでも、食用・美容のオイルについてでも、オイルに関する相談は彼女にするのが正解だろう」と思うのであった。

 

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です