これはあくまでわたし個人の感覚的な傾向によるものであり、その場所を悪く言ったり陥れたりする目的ではないことを、予め名言しておきたい。
その上で、東京駅の地下構内、中でも「東京キャラクターストリート」から「東京ラーメンストリート」までのエリアは、できれば二度と通りたくない・・と思うのであった。
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(なんだこの不穏な感じは・・人間の多さのせい?それとも、霊的ななにかなのか?)
久々に、大手町駅から東京駅まで地下道を歩いたわたしは、色々と様変わりした地下エリアに驚かされた。さらに、土曜日ということもあってか、多くの客でごった返す店は入店規制をかけるほど。
言うまでもなく活気があふれるのは素晴らしいことだが、その反面、圧迫感というか息苦しさを感じるわたしは、いち早く地上へ脱出したい気持ちに駆られた。
そう感じる一番の要因は、東京キャラクターストリートの”天井の低さ”にある。
地下商店街というものは立地条件からして天井が高い作りではないが、それにしても、この圧迫感は閉所恐怖症の傾向にあるわたしには耐え難い。加えて、右も左もヒト・ヒト・ヒトという超人混みの環境が、さらなる窮屈な環境を生み出していた。
無論、しばらく歩けば東京駅・・というか地上への脱出口が存在するが、この通りがどこまで続くのか、そしてどのような店舗が並んでいるのかを探るべく、とりあえず突き当りまで歩くことにした。
しかしながら、キャラクターストリートを抜けておかしランドを通過し、最終エリアである「東京ラーメンストリート」に差し掛かったとき、心霊現象など無縁のわたしが霊気を感じたのである。
(むっ・・なんだこの圧倒的な霊気は!?)
そもそも霊感がないのだから、それが”霊気”であるかどうかの判断などできないが、それにしても何というか、生温かいようなムンムンとした息苦しさを感じるのだ。
そんな異変を感じるわたしとは裏腹に、呑気な客どもは店舗前で列を作って順番待ちをしている——こいつらはなぜ平気なんだ?
通路の両脇には全国各地のご当地ラーメン店が並んでおり、ここへ来れば食に関する国内旅行が満喫できる・・という設定の模様。そして両サイドの店舗からは、ダシや揚げ物の香りがプンプン漂っている。
(そうか、霊気の正体は湯気か!)
そう、店舗から漂ってくる料理の匂いに加えて、漏れ出る生温かい熱気・・すなわち湯気の存在が、閉所恐怖症のわたしにさらなる圧迫感を与えたのだ。
天井の低い地下通路、しかも逃げ道が少ない上に人混みで溢れかえった環境のせいで、辺り一面の空気が淀んでいるところへ輪をかけて、店舗から漏れるラーメンの湯気が息苦しさを助長する——これこそが、霊感ゼロのわたしが感じる”霊気”の正体だった。
そんな”回避不可能な恐怖”により、食欲どころか過呼吸になりかけたわたしは、とにかく脱出口へと急いだ。それにしても、奥へ進めば進むほど息苦しさにより心拍数が上がる。おまけに、真っすぐ進むことすら困難な状況下で、それでも目を輝かせながらラーメンを選ぶニンゲンたちの顔が、それこそ異世界のキャラクターに見える——。
念のため、東京駅地下構内で霊的な現象の報告がないか、または歴史的にいわくつきの場所ではないかをネット検索してみたが、そういった事例は一つも見当たらない。
むしろ、「一つも見当たらない」ことが引っかかるといえば引っかかるが、わたし自身もそういった噂や都市伝説を聞いたことはないので、やはり霊のしわざではなくラーメンの湯気によるものなのだろう。
ここへきて「ついに霊感に目覚めたのか!?」と、ちょっと歓喜してしまった自分に恥ずかしさを覚えつつも、突き当りの階段を駆け上がって地上の空気に安堵したわたし。
要するに、あの恐怖というか閉塞感は「地下という物理的な環境に加えて、四方八方を物体で囲まれた狭い空間であったこと、そして湯気による高湿度な状況が酸素摂取率を低下させたこと」が原因だったのだ。
(いや、ワンチャン霊感に目覚めた可能性も)
・・・ないだろう。
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