赤い彗星ならぬ、黄色い水勢。

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(シャァァァァァァァァァ)

出るわ出るわ、ダムが決壊したかのごとく怒涛の尿が放たれた。そう、これこそが本来のわたしの「排尿」ってやつなんだ——。

 

 

頸椎ヘルニアの激痛を和らげるために、5種類の内服薬と2種類の神経ブロック注射を打っていたわたしは、突然の乏尿と無汗に驚かされた。いや、驚きをとおり越して不安を覚えた。

(こんなチョロチョロしか出ないなんて、どこか病気なんじゃないか?!)

どう考えても釣り合わない食べ物の摂取量と尿および汗の排出量に、ない頭を捻って考えた——これはどう考えても、薬の影響だ。

 

改めて、内服している薬のラインナップを確認すると、

・ロキソプロフェンNa錠60mg

・レバミピド錠100mg

・タリージェOD錠5mg

・ツートラム錠50mg

というもので、痛みや炎症を抑えたり神経性の痛みを和らげたりする薬のため、ヘルニア患者に処方されるごく一般的な内服薬である。

念のため、過去に頸椎ヘルニアを経験している友人に「おしっこの量が減ったどうか」を訪ねたところ、「どうだろう、よく覚えてない」との返答をもらった。要するに、そこまで顕著な変化を感じるほどの影響はなかった・・ということか。

 

それにしても、量にして2リットルのコーヒーを飲んでいるというのに、勢いもなければ量も乏しいチョロチョロ尿で、なおかつ丸一日トイレに行かなくても平気なくらい、まったく尿意を催さないのだから異常事態である。

さらにその影響か、ニンジン一本しか食べていないのに体重は減らず、シイタケ一個しか齧っていないのに体重が増え、こんな恐ろしい現実があるはずもない。

おまけに、体を動かしたところで汗はほとんで出ず、半身浴をしたところで期待するほどの汗もかけず、わたしの体はもはや代謝できない体となってしまったのか——。

 

試合が近いので体重を落とさなければならないのに、この状況ではどう考えても不可能。一体どうすればいいのか、ドクターに悩みを打ち明けたところ、

「体重をとるか痛み止めをとるか、どちらかですね」

と、究極の選択を迫られた。とはいえ、体重オーバーしていればそもそも試合もクソもないわけで、ここは迷わず「体重をとります」と即答。すると、

「・・そうですか。まぁ痛みには強いヒトだからどうにかなるでしょうが、念のため座薬を出しておきますね」

と、救世主たる坐薬をオーダーしてくれた。

 

そんなこんなで内服薬を断ってから12時間後、突然の尿意に襲われたわたしはトイレへと駆けこんだ。その結果が、冒頭の「シャァァァァ」である。

その瞬間といったら、まさに”歓喜”と呼ぶに相応しいものだった。「これこそが本来のわたしであり、本来あるべき姿なのだ!!」と、便座に座ったままガッツポーズをしてしまうほど、とどまることを知らない決壊したダムの水は、見事な勢いかつ膨大な水量を保ったまま、体内から下水道へと消えて行くのであった。

 

勿論、その後の練習でも大量の汗が滴り、マットに汗の水溜まりができるほど、大量の水分が体内から排出された。これを受けてわたしは思った——痛み止めで痛みを紛らわせた結果、わたしの代名詞でもある「代謝力」を落とすくらいならば、痛みと共に生きるほうがマシだ、と。

そういえば過去に歯科医で親知らずを抜いた際、4本一気に抜歯しようと大量の麻酔を打ったことがある。その帰り道、まさか自分の顎が落ちている(口を閉じているつもりが、顎が下がっていた)など思いもしないわたしは、惨劇さながらの状況を生み出していたことに気づかなかった。

あの時、麻酔が効いている自らの顎に触れながら思った——これはものすごく恐ろしいことだ、と。自身の一部であるにもかかわらず、触れても感触がないなんてことは、通常ならばありえない。そして、もしもこの状態が一生続くと思ったら・・考えただけで恐怖であり、絶望的な未来となるだろう。

 

というわけで、痛みと引き換えに代謝を取り戻したわたしは、寒さのあまり目を覚ました——なんと、大量の寝汗をかいていたのだ。

極寒とまではいかないこの時期に、羽根布団をかぶると寝汗をかく・・という事実を、わたしは忘れていたのだ。そして、決壊寸前の膀胱を抑えながらトイレへ駆け込むと、これまた見事な放水を披露してやった。

(・・・うん、完璧だ!!)

 

その後体重を測ると、なんと寝て起きただけで2キロ近く減っているではないか!!!

ていうか、昨日までの不安はいったいなんだったんだ——。

 

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