今日は朝から用事があったため、家を出るときの気温は一桁だった。
極寒というわけではないが、そもそも12月に入っているため、真冬といっても嘘にはならない時期である。
暑すぎるか寒すぎるか、どちらかを選ばなければならないとなれば、断然、暑すぎるほうを選ぶわたし。
理由は簡単。寒ければ死ぬわけで、そんな究極の選択を迫られるのならば、厚着しすぎて汗をかくほうがマシだからだ。
かといって、朝起きるのが辛いほど殺人級の寒さではないため、羽織るジャケットも本格的な冬仕様とまではいかない。
そのため、あと一か月くらいしたら、クリーニング店から冬物ジャケットを回収する予定である。
というわけで、今はまだコートやダウンジャケットを着ずに、厚手のフーディーや裏起毛のスウェットの下に、たくさんのインナーを着こむことで凌いでいるわけだ。
「それじゃ寒いでしょ?!」
と思われるかもしれないが、日中の最高気温は15度近くまで上がるため、朝晩に外出しなければまったくもって問題はない。
その分、かなりの重ね着となるため、体の自由が奪われがちなのが不便なところ。
特に下半身は、ユニクロの暖パンの下にヒートテックのレギンスを履いているため、しゃがむと後ろに転がりそうになるほどキツキツになる。
それでも「寒いよりはマシ」という気持ちは変わらないので、足元に小銭が落ちていても拾うことはないのである。
ちなみに本日の上半身は、数えてみると「6層」の衣服で成り立っていた。
内側から順に、ヒートテックのブラトップ、長袖のヒートテック、半袖のTシャツ、薄手のロンティー、厚手のロンティー、そしてフーディーという厳戒態勢。
一番外側の「フーディー」はいわゆるアウターのため、ジャケットと同じ役割であり説明の必要はないだろう。
その下の「厚手のロンティー」は、店内に入って暑かった場合、フーディーを脱いで厚手のロンティーで過ごすためのもので、いわば「室内のアウター」である。
ではなぜ、その下に「薄手のロンティー」を着ているのかというと、もしも店内が微妙な温度で、そこそこ暖かいが若干寒いような場合に、最低限「寒くない状態」を維持するべく着用している、お守り代わりの長袖なのだ。
ならば、さらにその下に着ている「長袖のヒートテック」と「半袖のTシャツ」にどんな意味があるのかというと、店内がものすごく暑かった場合に、思い切って薄手のロンティーまで脱ぐ機会があるかもしれない。そんなときに、ヒートテックしか着ていなければ悲惨なことになるため、念のためTシャツを着ることでオシャレを保っているのだ。
このように、脱皮すればいくらでも体温調節ができる状態で出かけたわたし。だがしばらくすると、腰のあたりでモタつくような感覚に見舞われた。
(・・シャツが丸まっているのか?)
フーディーと厚手のロンティー以外は、すべてズボンの中、というかレギンスの中にお行儀よくしまい込んでいるため、歩くたびに若干のズレが生じて気持ちがわるいのだろう。
そこでわたしは、他人にバレないようにズボンへ手を突っ込み衣服を伸ばすと、ギュウギュウとレギンスの中へ押し込んだ。――今度はきちんと収まった感じがする。
しかししばらくすると、またもや様子がおかしい。よくよく気にしてみると、それは腰あたりではなく、もっと下の、そう、尻あたりで感じるのだ。
(おかしいな、さっききれいに押し込んだはずなのに・・)
仕方がないので、またもやさりげなくズボンの中に手を突っ込むと、違和感の原因を探った。やはり上半身の着衣にシワやたるみは確認できない。ということは・・・。
なぜかわたしの手のひらは、尻をダイレクトに触っている。本来ならば、ここにはパンツがあるべき部分だが、どういうことかパンツの布が見当たらないのだ。
「もしかすると今、誤ってパンツの中に手を突っ込んでいるのかもしれない」
と、改めて手の甲でパンツらしきものを確認するも、触れているのはレギンスでありパンツではない。
じゃあ、パンツはどこへ――?
そうだ。これこそが違和感の原因である。
今日は、ユニクロの「エアリズムウルトラシームレスショーツ・ヒップハンガー」を履いていたわたし。これは尻全体を覆う形状のため、歩くたびに布と臀部がこすれてパンツが脱げていくのだ。
とくに尻がデカくて尖っているわたしは、摩擦係数も必然的に大きくなるため、歩けば歩くほど、パンツは腿の付け根へと強制的に落ちていくのである。
(こんなもの、いま履き直したところで何歩か歩けばまた下がる。だったら、直すだけ無駄じゃないか・・)
本来、あるべきところに留まっていないパンツというのは、ものすごく気持ちがわるい。とはいえ、直したところですぐにずり落ちるのは目に見えている。
もはや諦めて、このパンツを履いてきた自分を恨むべきだろう。
*
こうしてわたしは、一日中、尻を丸だしの状態で過ごしたのである。
防寒対策として何枚も重ね着をした割には、下半身は一枚足りない状態という、なんともお粗末な結果となってしまったのだ。
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