(スーパーミリオンヘアEXって・・なんだ?)
MRIを撮るためにメディカルスキャニング溜池山王を訪れたわたしは、待合室に貼られた多数の注意事項を見ながら、つくづく「イマドキ」を感じた。
数年前にMRIを撮った際には、「金属製のものを身に着けている場合、MRI検査は受けられません」という大前提のもと、例としてこのようなものが挙げられていた。
・腕時計、アクセサリー類、メガネ、補聴器、コルセット等
・ヒートテックの肌着、ワイヤー入りブラジャー
・ペースメーカー、心臓ステント、人工関節等
・湿布、使い捨てカイロ、絆創膏等
・カラコン、タトゥー、アートメイク等
・ラメ入りの化粧品やネイル
見ての通り、どれも常識の範囲内というか、装着している本人が自ら申し出るであろう品々が列挙されていた。さすがに「カラコンやマツエク(金属製や磁気式のもの)などもダメ」というのは、時に失念してしまいそうではあるが、とはいえなんとなくダメだろうな・・という感覚は分かるので納得できる。
こんな感じの数年前と比べて、イマドキはさらにバージョンアップしていた。その筆頭となるのが、冒頭に挙げた「スーパーミリオンヘアEX」だ。
「ヘア」というからには毛髪に関係する何かなのだろうが、一体どのような商品なのだろう——すかさずネット検索したところ、なんと女性向けの増毛パウダーのことだった。
薄毛や白髪をカバーし、ボリュームアップを演出するハイグレードの増毛パウダーこと、スーパーミリオンヘアEX——。
たしかに、髪の毛に増毛パウダーが付着しているかどうかなど、パッと見では判断できない。そのうえ、使用している本人もまさかダメだとは思っていないため、何気なくMRI装置に入ってみてびっくり!!増毛パウダーが強力な磁場により吸い取られ、MRI装置が故障する・・という、とんでもないオチが待ち受けているわけだ。
ちなみに、スーパーミリオンヘアEXよりも大きく貼られた禁止アイテムがあった——それは、「砂袋・アンクルウエイト」だ。
手首や足首に巻く筋トレ用のウエイト(重り)のようだが、本人も無自覚で装着していたりすると、MRI装置に入ってびっくり!!サンドウエイトの砂に混じった鉄粉が磁場に引き寄せられ、患者やスタッフへの物理的接触・・すなわち重大な事故を誘発する危険性がある。
それだけではない。鉄粉入りの砂がMRI装置に衝突し内部のコイルにダメージを与えたりすると、数千万円から数億円規模の修理が必要となるため、医療機関は戦々恐々としているわけだ。
(もしかすると・・医療機関側は患者自身の怪我なんかより、後者のケースを最も恐れているのではなかろうか)
増毛パウダーや白髪染め、砂袋やアンクルウエイト以外にも、様々な禁止アイテムが列挙されていたが、とにかく「美容」に関するものの多さに驚いた。
たとえば、フェイスリフトの糸が顔面から頭部にかけて入っている場合、糸の素材によっては火傷のリスクがある。また、アイラインやアイシャドウにおいて、ラメ入りだったり鉄系成分が入っていたりすると当然ながら危険。さらに、ネイルにおいてもラメや金属粉が入っていると同様の危険性があるので注意が必要。加えて、髪を染めた直後のヘアカラー剤というのも、鉄分を含んでいる可能性があるため禁止されている。
1.5T(テスラ)から3Tという超協力な磁場を形成する、モンスターマシンことMRI装置。この数値は、地球の磁場の約3万倍から6万倍に相当するわけで、目に見えない分なおさら恐るべき強さの磁力である。
事故が起きてからでは遅いのは当然のことだが、美容や医療の成長もめまぐるしく進歩しているため、外見からでは判断できないレベルの自然な整形・形成が可能となっている。そのため、患者自身が失念するほど見事に溶け込んだ「何か」が原因で、MRI検査にて大事故を引き起こす可能性があるわけだ。
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これといって懸念材料のないわたしは、壁に張り出された禁止アイテムを眺めながら、世の中に出回る珍しい商品(?)に目を輝かせるのであった。




















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