わたしはゼリー飲料が好きだ。もちろん、本家本元である「ゼリー」も好きだが、スプーンを使わなくてはならない・・という作業が面倒くさいので、片手でちゅるちゅる飲み干せるゼリー飲料のほうが好きなのだ。
しかも、夏のこの時期こそゼリー飲料が似合う季節なわけで、コンビニやホームの自販機で見かけるたびに、あの独特なのど越しを楽しむべくスマホをかざすのであった。
通常、ゼリー飲料といえば「ウィダーinゼリー」や「蒟蒻ゼリー」のようなスパウトパウチ(プラスチックに薄いアルミをコーティングした容器)に入ったものを思い浮かべるだろうが、それよりももっと”飲み物に近い状態”の商品がある。
——そう、シャカシャカと振って飲むゼリー飲料のことだ。
中でもお気に入りは、JRの駅構内で見かける「From AQUA 天然水ゼリー」で、冷涼感のあるスッキリとしたラムネ味が湿度の高い日本の夏にピッタリ。
通常サイズの515gもいいが、電車を待つ間にグイッと飲み干せる280gのペットボトルが、これまたちょうどいいサイズ感といえる。あと一分で電車が来る・・という時でも、強めにシャカシャカ振って飲めば余裕で間に合うから便利なのだ。
そして今日、街中の自販機で「ぷるっシュ!!ゼリー×スパークリンググレープ」という、容器がスチール缶の”振って飲むゼリー飲料”を発見したわたしは、さっそく試してみることにした。
この「スチール缶に入った振って飲むゼリー」というのは、実は珍しい。缶といっても、飲み口にキャップが付いている缶飲料ではなく、プルタブで出来た通常のアレ。いかんせん、ゼリーという半固体状の飲み物は液体と比べれば飲みにくいため、飲み口は大きいにこしたことはない。だが、あえて開口部の狭いプルタブ缶で出してくるとは、なかなかのチャレンジャーである。
おまけに、単なるゼリー飲料というだけでなく、ナタデココまで入っているとなれば、なおさら飲みやすさが求められる。にもかかわらず、この開口部で大丈夫なのだろうか——。
とはいえ、ゼリー飲料の粘弾性には幅があるため、これはきっとサラサラしたゼリーなのだろう・・と勝手に想像したわたしは、「10回以上ふってから開缶してください」という指示を忠実に守り、力強く10回振ってからプルタブを引き上げた。
(・・・・・)
なんと、飲み口からは一滴の水分どころか、一塊のゼリーも一粒のナタデココすらも落ちてこない。
いつもならば、すかさずキャップを閉めて振り直すわけだが、今回はプルタブのため元に戻すことができない。にもかかわらず、強度の高い粘弾性を砕くにはシェイクする以外に方法はない・・という事実に加えて、相当な強さで振らなければ飲み口からゼリーが流れ出ないため、軽く揺さぶる程度では何も変わらない——え、じゃあ一体どうすればいいんだ?!
とりあえず、口から缶を離して上下に軽く揺さぶってみたが、案の定なにも垂れてこない。そして、開口部からは溢れんばかりにゼリー本体が見えているのだが、舌でつつこうが舐めようが微動だにしない。ならば指で押さえて振ってみよう・・と思っても、飲み口が広すぎて指で塞ぐことは不可能。
(こうなったら、思いっきり吸うしかない・・)
最後の手段として”自力で吸い上げる作戦”に出たわたしだが、横長に開いた口に対して縦長の形状で切られている開口部は、無駄に吸引力を弱めてしまい上手くいかない——ダメだ。まさか、このまま一口も飲まずに捨てる羽目になるのか・・・。
だが、高等生物たるニンゲンのわたしは、知恵を振り絞って考えた。どうしたらゼリーを吸い上げられるのか。どうしたら、縦長の開口部へ横長の唇を当てることができるのか・・分かったぞ!唇と開口部を同じ形状にすればいいんだ!
そして、すかさず飲み口を水平にするとそこへ唇を押し当てた。これなら密着度を高めることができるため、吸引力を上げることが可能——ちゅるん。
こうしてわたしは、見事にゼリーとナタデココを吸い込むことに成功したのだ。
開口部から顔をのぞかせるゼリーを舌でつついたり舐めたりしたため、舌の両サイドが若干傷ついてしまったが、それも今となっては激闘を裏付ける勲章である——。そんなことを思いながらも、飲み物というより食べ物の食感のスパークリングゼリーを、全力で吸い続けるのであった。
*
今回の教訓として、
”プルタブ式のゼリー飲料を飲む場合は、たとえ表示で10回以上と書かれてあっても、最低でも20回は振る”
ということを、肝に銘じてもらいたい。でないと、最悪の場合飲めないまま捨てることになるだろう。
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