保険薬局をたずねて三里(さんり)

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わたしは今日、もしも"池袋の七不思議"というものが存在するならば、間違いなくその一つにカウントされるであろう怪奇現象を発見した。それは、駅東口周辺で、処方箋を受け付けてくれる「保険薬局」が非常に少ないという不便な現実だ。

そもそもドラッグストアや薬局自体が少ない・・という地域事情もあるが、たとえば池袋駅に接する明治通りを渡った目の前にあるマツモトキヨシなど、あれほどの存在感を誇示しているにもかかわらず、処方箋を扱っていないのだから驚きを隠せない。

にもかかわらず、インバウンド対策としてネイティブの中国人や韓国人を店員として雇用しているため、「処方箋を扱っていますか?」と尋ねたところ、「(質問の意味がよく分からないから)向コウデ聞イテクダサイ」と、レジを指さされる始末——。

 

とりあえず次の予定が迫っていたので、言われた通りにレジ対応をしている日本人の店員に尋ねたところ、「申し訳ありません、当店では扱っておりません」とのこと。ならば、近場でどこに保険薬局があるのかを聞くと「今日やっているか分かりませんが、マクドナルドの隣りにあるアイン薬局が処方箋を扱っています」というので、さっそくアイン薬局へと向かった。

(おぉ、さすがは保険薬局。日用品や化粧品まで並べているドラッグストアとは、本気度が違うな)

ザ・薬局という雰囲気の空間には、薬剤師と思われる女性陣がズラリと待ち構えていた。今度こそ間違いなく、処方箋を受け取ってもらえる——。

「今から30分以上お待ちいただくことになりますが、よろしいでしょうか?」

おいおいおい、冗談だろ・・・。

 

自宅周辺のクリニックには、「門前薬局」と呼ばれる医療機関とコバンザメの関係にある薬局が存在するため、クリニックを出たらすぐさま薬局へ飛び込むことができる。

しかも、この形態が「当たり前」だと思っていたわたしにとって、先ほど受診したクリニック——同じビルや近隣にも、〇〇クリニックという看板がいくつも掲げられていた——の近くに、薬局やドラッグストアが一切見当たらなかったことに、ある種の違和感を覚えた。

(・・変だな。これだけ病院やクリニックが乱立しているのに、どこも院内処方なわけがないだろうし)

それでも、駅の方へ向かえばドラッグストアくらいはあるだろうから、さほど気にすることもなく歩き出したのだ。そして、マツキヨからのアイン薬局へとつながったのである。

 

この事実に対してあまりに納得のいかないわたしは、とりあえずAIの考えを参考にしつつ、己の気持ちを整理しよう・・と思った。そこで、

「池袋駅周辺のクリニックと保険薬局の数を比較して」

と問いかけたところ、

「クリニック415件、保険薬局65件、薬局一件あたりの平均クリニック数6.4件」

との結果を得られた。加えて、

「クリニック数が圧倒的に多く、薬局の数は比較的少なめという傾向が見られます。池袋は通勤・買い物需要が中心のエリアなので、住民密着型の薬局が少ないという背景も影響していそうです」

という立派な補足まで与えられたわけで、なるほど、商業施設やオフィスビルが多い池袋駅周辺では医療機関の数も多くはないため、それに付随して処方箋を扱う薬局も少ないというわけか——。

(いや、でもクリニック415件って・・・)

 

あとは、わたし自身も自宅近辺の医療機関を受診するように、どちらかというと居住地にあるクリニックや薬局(いわゆるかかりつけ医、かかりつけ薬局)を利用する可能性が高いため、通勤・通学や買い物で訪れる池袋駅周辺では、受診の機会も少ない=処方箋薬局も不要・・ということなのかもしれない。

(でも、クリニック415件って・・・)

 

そんなこんなで、次の予定地である石神井公園駅へ移動したところ、たった数百メートルの間に3件もの保険薬局が乱立しているではないか。しかもどこもガラガラ——。

(池袋のアイン薬局で30分待たされるくらいなら、急行で10分の石神井公園で薬をもらうほうが、経口投与までの時間が短くて済むじゃないか)

 

 

池袋とは、まことに不思議な街である。

 

llustrated by おおとりのぞみ

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