嬉しい悲鳴の裏にある悲劇

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(ものの見事に食い物ばかりが集まった・・・)

とにかく、どれをとっても好みの食べ物ばかりが集結したことに、むしろ本人であるわたしが驚かされた。

 

なぜこのように「好物」が集まったのかというと、今日、わたしの晴れ舞台である「ピアノ発表会」が行われたのだが、拙い演奏を聴きに集まってくれた友人・知人らが、わざわざ花や食べ物を持ってきてくれたことで、思いもよらぬ幸せな状況が実現したのである。

 

 

おぉ、この鮮やかなブルーは、わたしの大好物であるエシレのマドレーヌとフィナンシェで、あちらのジャン・フランソワの食パンは、何もつけずに手でちぎりながら食べるのが最高の逸品。いずれも"わたし"というニンゲンをよく理解しているからこそ選ぶことのできる品々だ。

そして、なんだこの座布団みたいなバカデカいフォカッチャは?他にも、シュトーレンかと見間違うほどのドライフルーツとナッツたっぷりのセーグル・フリュイに、小柄でバターずっしりのアルブッロが詰め込まれた茶色い袋は、レジーナのパンである。

さらに、嫌でも目に入る赤のタータンチェックといえばウォーカーのショートブレッドだ。しかもなにやら珍しい、ソルテッドキャラメル・レモン・ストロベリーの三種類が入ったフレーバーアソートじゃないか。

おまけに、この上質な青紫のパッケージは、目黒に店を構えるOGGI(オッジ)のオレンジピールとプティショコラの箱である。自ら購入するにはつい躊躇してしまうが、頂き物としては最高に嬉しいオトナチョコである。

おっと、この薄いブルーの缶はなんだ? ホテル・ズ・プログレスというブランドのチョコレートらしい。とりあえずフタを開けると、なんとそこには深緑・薄緑・白緑の花びらのような、抹茶味のチョコレートがびっしりと敷き詰められていた。

・・と横を見ると、クニャーネの店という文字が飛び込んで来た。クニャーネとは、「京都・たま木亭」の看板商品である、筒状のパイ生地にカスタードクリームを絞ったサクサクのパン菓子のこと。しかも抹茶好きを見抜かれているため、夏季限定の抹茶クニャーネがゴロンと転がっているわけで。

大好物のオンパレードにテレテレしていると、日の丸がデザインされた立方体の箱を発見した。「直島ホワイト塩ショコラ」と書かれたその菓子は、瀬戸内の豊かな自然と温暖な気候により生まれる塩を使って作られた、円形のホワイトチョコレートがぎっしり詰められていた。

——こんなにも甘いもの尽くしでは、糖尿病になってしまうのでは——などと、あまり意味のない心配をしていたところ、なんとまさかの"しょっぱいもの"が現れた。その名も「味な物語 サラミソーセージ」。しかも食べてビックリ、これまで食べてきたサラミソーセージと比べて、桁違いに美味いではないか。

 

直に口に入れられるものに加えて、わたしのオフィスで使用できるスターバックスカードが忍ばせてあるなど、どこをどう見てもわたしを理解している者にしか選ぶことのできない菓子やコーヒーのラインナップに、喜びよりも驚きを隠せなかった。

(よくぞここまで、わたしの好みの核心を突いたものだ・・・)

可愛らしい色合いの花束とともに、両手いっぱいの菓子をぶら下げたわたしは、言われるまでもなく帰宅を急いだ。そして、テーブルにそれらを並べると片っ端から開封して味見を始めた。

 

——どれも期待を裏切らない美味さじゃないか。さすがわが友よ!!

 

 

・・さて、ここからが本題である。

この眩いばかりの菓子たちの送り主に、わたしは心から感謝を伝えたいわけだが、いったいどこのどなたが下さったのか、もはや知る術もないのだ。

 

いやいや、そんな失礼なことは口が裂けても言えない。もちろん、どこのどなたからの贈り物であるかは、当然ながら完璧に把握している。

さらに、喜び勇んで瞬殺してしまった菓子もあるわけで、「美味かった」ということだけを覚えていて、どんな菓子だったかを忘れてしまった・・などということが、あるはずもない。

 

送り主の顔を思い浮かべながら感謝の言葉を呟きつつ、頂き物に舌鼓を打っているわけで、なにも心配することはない。

もちろん心配はないのだが、もしも気が向いたらでいいので、わたしに与えた食べ物を自己申告してもらえると、なお嬉しいのである。

 

——なんてことを、どうしたって言えるわけがない。

 

Illustrated by 希鳳

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