(まさか、わたしのケツがデカいからなのか・・・)
わが家のウォシュレットが復活した。というか、TOTOメンテナンスのスタッフによる便座交換にて、一件落着したというだけだが。
わたしの名誉のためにも念を押しておくが、決して、無理な使い方をしたり不要な衝撃を与えたりしたことはない。便座の上に立つとか、便座の上でジャンプするとか、そんな非常識なことをするはずもなく、いつだって静かに行儀よくチョコンと座って用を足していたわけで。
それでも、なんらかの理由で便座の根元部分に存在する軸が破損したため、リモコンからのセンサーが阻害されてウォシュレットが使えなくなったのだ。
「体重が重くて便座が割れることはありますね。一応、100キロまで大丈夫な設定なんですが」
いやいや、待ってくれ。さすがに体重は100キロもないし、椅子に深く腰掛ける習慣もないのだから、便座の根元に圧力や衝撃を加えるシチュエーションはあり得ない。
それとも何か?わたしのケツが立派すぎて、自分では気がついていないが便座後方に想像以上の圧力を与えたとでもいうのか?
(・・・そう思われているのかもしれない)
20代前半と思しき業者の兄ちゃんは、顔色一つ変えずに淡々と状況説明をしているが、内心「本人は否定するだろうが、こいつのケツならあり得る」と、笑いを堪えているのかもしれない。
——そうだ、もしかするとこれはよく起きる現象かもしれない!
身に覚えのないわたしは、これはよくある破損なのではないかと疑った。なぜなら、身に覚えがないからである。
「んー、お子さんのいる家庭だとありがちですが・・・」
兄ちゃんは言葉を濁した。子どもがふざけて便座の上に立った結果、根元が割れることはあるのだそう。だが、わが家においてそれはあり得ない。
もはや原因は不明だが、わたしのケツ圧が疑われている現状を打破するべく、わたしは話題を変えた。
「こういうリモコン式のウォシュレットって、便座の横にボタンがついてるやつと比べてどのくらい高いんですか?」
たしか、メーカー品ではない袖リモコンの便座は2万円程度で購入できるが、壁リモコンの場合は10万円以上する・・と聞いたことがある。果たしてそのくらいの差があるのだろうか。
「そうですね。リモコンが離れている場合は機能も豊富なので、どうしても高額になります」
なるほど、言われてみればその通りである。袖リモコンは、ウォシュレットのオン・オフと水量調整くらいだが、壁リモコンはそれらに加えて、ノズルの位置調整や自動洗浄機能、便座のフタの自動開閉など様々な機能が付いている。
その分、壁リモコンからのセンサーが届かなくなると、ウォシュレットの機能が一切使えなくなるから恐ろしい。
それよりも、個人的に勉強になったのは「便器」と「便座」は別物・・という認識だった。当たり前といえば当たり前だが、もっとも普及している「組み合わせ便器」の場合、便器とタンクは「トイレ」だが、ウォシュレット付の便座は「家電製品」となるのだそう。
一方、タンクレスや一体型、システムトイレの場合は、ウォシュレット付き便座が故障した際は"便器を含めたトイレ本体を交換しなければならない可能性"もあり、とんでもない事件となるのだ。
このリスクを考えると、便座だけを独立して交換できる「組み合わせ便器」がリーズナブルかつ安心できるので、わが家は組み合わせ便器でよかった・・とホッとするのであった。
*
そんなこんなで、わたしの尻に安寧が戻ってきた。
それはまるで、止まっているエスカレーターを歩くかのような妙な違和感・・といえば分かるだろうか。なんせ、ウォシュレットが付いている便座に座りながら、ウォシュレットを使用できない状況ほど不快なことはないわけで。
「クソっ!隣のトイレにすればよかった」
と、地団太を踏んで悔しがるほどの後悔に苛まれるのは、まっぴらごめんである。
だがこれで、安心して自宅に籠ることができる。ありがとう、ウォシュレット。ありがとう、TOTO。
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