拷問と褒美に弄ばれるわたし

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ロッテが誇る洋酒チョコ「Bacchus(バッカス)」は、なんと発売60周年を迎えていた。

そして、60周年を迎えられたことへの感謝を込めて、期間限定で「バッカス 春夏仕立て」がリリースされたのだ。

 

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近所のコンビニで、わたしのお気に入りである「バッカス」と「ラミー」を購入しようとしたろころ、なにやらパッケージがシャレたデザインに一新されていた。

バッカスは深緑と薄緑のバイカラーで、爽やかな春らしいカラーリングになっている。手に取ってみると"春夏仕立て"と書かれてあり、

「とろっととけ合う味わいと華やぐ余韻、"今だけの"バッカスをどうぞ」

と魅力的な文言が添えられているではないか。

 

ちなみにバッカスは、「ブランデーの中でも芳醇な風味を誇るコニャックを、口どけまろやかなミルクチョコで包んだ、冬季限定の一粒タイプの本格洋酒チョコレート(商品紹介ページより)」である。

普段ならば、冬の間という短い期間にしかお目にかかることのできないバッカスだが、60周年記念として春と夏にも味わうことができるのだそう・・ということは、ほぼ一年を通してバッカスと触れ合うことができるのか?

これは朗報だ、すぐさま試食しなければ——。

 

ちなみにその隣には、妖艶な紫のグラデーションで「Rum×Raisins~ナッツを添えて~」と書かれた、ラミーとは異なるラム酒とレーズンのチョコレートが並んでいた。

こちらは、「ふくよかな甘みのレーズンをラム酒香るチョコレートでとじ込めた大人のお酒チョコレート(商品紹介ページより)」とのこと。さらに、レーズンと共に細かく砕かれたマカダミアナッツが混ぜ込んであり、芳醇な甘みのレーズンチョコとナッツの香ばしさとで、ラミーの仲間として新たな側面を見せてくれる模様。

 

さらにもう一つ、「ストロベリー×ラズベリー」という、ベリー味の洋酒チョコレートも発売されていた。

「濃厚な甘さが特徴のストロベリー果汁と爽やかな酸味が特徴のラズベリー果汁を絶妙なバランスで配合。一粒で緻密な甘酸っぱさが口いっぱいに広がります(商品紹介ページより)」ということで、バッカスやラミーとは一線を画す、上品で甘酸っぱいオンナの色気漂うチョコなのだ。

 

そんな、贅沢かつ期間限定の三種類をカゴに入れると、わたしは急いでコンビニを後にした。

 

 

(クソッ・・舌が痛くて食べられないじゃないか)

誤って舌を派手に噛んでしまったわたしは、溢れ出る血を飲み込みつつ、クールな表情を浮かべて平静を装った。

人間とは愚かな生き物である。なぜなら、流血すればあたふたするくせに、血が止まれば痛みを忘れてなんでも食べようとするのだから。

 

そもそも、口の中に傷やトラブルを抱えるときは、チョコレートのような刺激物はNGである。おまけに、辛いものや酸っぱいものが沁みるのは想像に難くないが、にもかかわらずデコポンとせとか、さらにイチゴまで購入しているわたしは、真性のバカなのかもしれない。

そして、あの三種類の洋酒チョコレートの魅力に憑りつかれたからには、どれほど舌に沁みようが食べるほかないわけで、すぐに食べるつもりだったからこそ、レジ袋も「不要」を選んだのだから、ここで食べなければオンナが廃る。

いざ、バッカスたちを頬張ろう——。

 

(ぬぉぉぉぉぉ!!!いってぇぇぇぇ!!!!)

 

チョコレートというより、とろっと絶妙な味わいと風味を放つ"ブランデーソース"が、傷口を見事に直撃した。その刺激たるや、叫び声のほかに説明のしようがないほど、なんとも絶妙な激痛だった。

そう・・今さらだが、アルコールは傷に沁みるのだ、大いに沁みわたるのだ。

 

それでも、どれほどの痛みを感じようが、わたしはバッカスを手放すことができなかった。それどころか、残り二つのチョコレートも開封すると、次々に口へと放り込んだのだ。

——もはや止められない。舌を突き刺すような痛みに耐えるのと、期間限定の洋酒チョコレートを味わうのと、どちらかを選ぶとしたら後者に決まっている。顔は苦痛に歪み、たまに通行人がこちらを見るが、今は他人を気にしている場合ではない。

 

(イ、イテェ・・だがうまい。クソッ、痛い・・それでも、うまい・・・)

 

そんな"拷問と褒美"を交互に繰り返しながら、結局、わたしは食欲を堪えることなどできないのだ・・と、今さらながら痛感するのであった。

 

サムネイル/ロッテ「季節を味わう洋酒チョコ」

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