ーーサイズの大きい柔術着があり、縮めるためにも乾燥機にかけたい。そうだ、友人の家にあるじゃないか!
ということで練習後、夜中に友人宅を襲撃した。
「それさ、水分含んで重たくならない?」
どんな意図の質問かと思えば、友人の洗濯乾燥機は外国製のため、もしも壊れると修理に莫大な費用と時間がかかるとのこと。
ーーそんな不便な家電製品、これを機に壊して日本製に買い替えればいい。
とその時、洗濯機にまつわる衝撃的な思い出が2つほど、脳裏をよぎった。
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数年前のこと。コインランドリーを通りかかると「靴が洗える洗濯機」と書かれた看板が目に留まった。室内に入り縦型洗濯機を覗くと、お手製ブラシがくっ付いた軸棒が見える。
(なるほど、このブラシと靴が擦れて汚れが落ちる仕組みか)
しかしこの程度の仕組みならば、自宅の洗濯機でもやってできないことはない。
わたしは早速、試してみることにした。
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友人の洗濯機はドラム式。どうやら、除菌イオン洗浄で「靴が洗えるモード」というものが、元から付いているらしい。これは好都合だ。
持参したランシューやスニーカーを何足かぶち込むと、スタートボタンを押す。
ーーおよそ15分後。
リビングでくつろいでいた我々の耳に、明らかに強盗が侵入し、洗濯機を叩き割る音が聞こえた。
急いで洗濯機の元へ駆けつけると、なんと、洗濯機のドアが外れて吹っ飛び、洗っていた靴が転がり落ちていた。
(誰かが壊したんじゃなくて、靴がドアに当たって吹っ飛んだんだ)
強盗じゃなくてよかったね、と友人をなだめるも、みるみる頬が紅潮していく。
どうやらわたしが「靴を洗うモード」を選択しておらず、通常の洗濯モードだった様子。そのせいで靴は激しくかき回され、勢い余ってドアを蹴り破ったのだ。
わたしはそっと靴を取り出すと、素早く逃げた。
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かれこれ3年は経つだろうか。我が家は狭くて貧乏ゆえ、安価な縦型洗濯機を使用している。
ーー洗濯機など消耗品。メンテナンスするくらいなら、その都度買い替えたほうが最新型が手に入ってお得だ。
そんな歪曲した都合のいい考えから、「安くて壊れにくい」とレビューが好評だった、韓国製の洗濯機を購入。
ある日の昼寝後のこと。わたしはお気に入りの低反発まくらに、ヨダレを垂らしたことに気づいた。しかも最悪なことに、枕カバーの付いていない部分に顔をすりつけていたため、まくら自体を洗わなければならない状況。
とりあえず表面をウェットティッシュで拭いたり、ファブリーズを打ち込んだり、色々と対処してみるも気分的にスッキリしない。
(これごと洗うしかないか)
「小さめの枕だし、なんとか洗えるだろう」と考えたわたしは、低反発まくらを洗濯機に放り込むと、その他の衣類と一緒に洗濯を開始した。
(脱水が終わるまで時間がある。コンビニでも行ってくるか)
近所のコンビニで立ち読みし、適当な食糧を調達して帰宅すると、室内はシーンとしていた。
ーーおっと、洗濯が終わったのか。
早速、衣類を取り込みに洗濯機が置かれている部屋のドアを開けた。その瞬間、一体何が起きたのか、わたしには理解できなかった。
洗濯機置き場は、浴室と隣接するスペースに配置されている。ところが、さっきまでそこに立っていた洗濯機がいない。
恐る恐る視線を下げると、そこには、浴室のドアを蹴破った洗濯機がゴテンと寝ているではないか。
洗濯機が、横になっているーー。
まったく意味が分からない。一体、誰が何のためにこんな嫌がらせをしたのか!?
身の危険を感じたわたしは、すぐさま家中を捜索した。クローゼットからベランダから、人間が隠れそうな場所を片っ端からチェック。浴室の天井を外して配線だらけの屋根裏まで、懐中電灯を頼りに隈なく確認した。
しかし誰も隠れていない。
恐怖よりも、怒りと不快感でイライラする。だがこのままでは仕方ない。とりあえず洗濯機を起こし、元通りに設置。そして念のため、スタートボタンを押してみる。
ヴーーーン
さすがは「壊れにくい」と定評のある韓国製。わたしは、この安い洗濯機を誇らしく思った。とその時、バスタブの中に何やら黒い物体が。
よくよく見ると、あのヨダレを垂らした低反発まくらではないか!
ーー謎が解けた
水を吸った低反発まくらが、脱水のタイミングで遠心力により洗濯機をなぎ倒し、その勢いで上蓋を突き破りバスタブまで飛んで行ったのだ。
後から気づいたのだが、まくらに付いている注意書きには、
「絶対に洗濯機で洗わないでください」
と書かれている。
(なるほど、こういうことだったのか)
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ということで、ふと思い出した「衝撃的な洗濯機の思い出2選」は、このような内容だった。
教訓としては、ドラム式よりも縦型洗濯機のほうが、何かと壊れにくくて便利だということ。
倒れても、フタが取れても、水道ホースが抜けても、縦型ならば復活する。あんな大ケガを負った直後とは思えないほど、軽快に洗濯を続けてくれるのは「縦型ならでは」だろう。
とは言え、低反発まくらは洗濯機で洗わないほうが良い。
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