深夜の悪夢、低血糖。

Pocket

 

夜中に突然腹が減ったわたしは、急いでサトウのごはんをレンチンした。おかずはキムチと鰹節のふりかけである。だが温めるまでの数分間で、わたしの体に異変が起きたのだ。

 

どんな異変かというと、極度の空腹と立ちくらみ、そして大量の発汗という明らかに不自然な事態が発生したのだ。空腹は毎日起きることだから割愛するとして、立ちくらみはどういうことだ。床に落ちた靴下を拾うためにしゃがみ、そして立ち上がった瞬間、思わず壁に手を当てなければ立っていられないほどの貧血を起こしたのだ。

(今日も一日元気に過ごしたのに、なぜだ?)

とりあえずわたしは、ソファに腰かけるとサトウのごはんが出来上がるのを待った。・・と、その時。部屋の気温が急に上昇しはじめたのだ。いや、正確にはわたし自身の体温が上がったというか、とにかく暑くて仕方がない状況となったのだ。

 

めっきり秋らしくなった今日は寒かったので、室内でも半袖の上にパーカーを羽織っていた。そこでわたしは急いでパーカーを脱ぎ捨てたが、それでも暑くて仕方がないため、目の前に転がっているミカンを鷲掴みにするとモグモグ食べた。

ところが、腕の毛穴から汗の玉が浮かび上がり、額や首、脇からも汗が流れてくるではないか。まるで、真夏にエアコンの効かない部屋に閉じ込めらえたかのように、大いに発汗しているのだ。おまけに、ランチョンマット代わりに敷いていた新聞紙の上に汗が滴りビショビショになるほど、頭頂部からつま先まで全身から汗が噴き出るのである。

 

挙句の果てには手足が震えているわけで、これは間違いなくアレだろう。・・そう、低血糖だ

思えば今日は、朝から今までろくな食べ物を食べていない。それなのに十分な運動をしたわけで、栄誉バランス的に色々と問題がある。

(・・いやまてよ、スタバでチョコレートケーキを食べたぞ)

たしかに、スタバで甘いものをそこそこ摂取したが、トータルでみるとあまり関係なかったのだろう。

 

・・そしてサトウのごはんが出来上がった。今度は汗と同時にヨダレが滴ってくるではないか。だがこれは低血糖とは関係のない、空腹による反応だろう。

そしてわたしは、一心不乱にサトウのごはんとキムチ、そして鰹節のふりかけを掻っ込んだ。もちろん、サトウのごはんは4パックしっかり食べたため、さっきまでの空腹は嘘のように消えていた。

(・・ふぅ。いつの間にか汗も手の震えも止まったな)

低血糖になったことなどないので、極度の空腹による異常症状かと焦ったが、満腹になり気持ちが落ち着いたところで色々とネット検索してみた。

 

まず、低血糖の症状が現れた場合、「糖分が不足しているから、チョコやお菓子を食べればいい」と思うのは誤りである。

低血糖というのは、「血液中のブドウ糖が不足した状態」を指す。そのため、チョコやお菓子のような油分を多く含む食品を胃袋へ送り込めば、消化に時間がかかるため意味がない。おまけに、ゆっくり吸収された糖分のせいで、後々高血糖となる恐れもある。

よって、手っ取り早い改善方法は、やはりブドウ糖(砂糖)を摂取することだ。とはいえ、我が家にはブドウ糖も砂糖も存在しないため、さっき急いで食べたミカンが代替してくれたのではないかと思う。おまけに白米も食べたことで、なんとか血液中のブドウ糖濃度が正常に戻ったのだろう。

 

こうして低血糖の恐怖から逃れたわたしは、別の不安に襲われた。——糖尿病。

血液検査や医師の診断、そして糖尿病患者病棟の看護師からも「ぜったいに糖尿病にはならない」と太鼓判を押されたわたしだが、低血糖といえば糖尿病患者に起きやすい症状である。

もしもそうならば、薬による治療を開始するとともに、「糖尿病IDカード」を持参しなければならず、食生活も何もかも見直さなければならない。

 

やはり暴飲暴食が祟ったのだ。後悔先に立たずと言われても、後悔する覚悟を持って勝手気ままな生活を送ってきたわたしは、この現実を受け入れなければならない。

いいんだ、人生の半分は楽しく過ごせたんだから、残り半分は苦しみと共に歩もうじゃないか——。

 

 

そして今日、低血糖を恐れたわたしは無駄な空腹を避ける努力をした。そのおかげか、今日は体調に異常はみられなかった。

シリアスになったり楽観的になったり、病気を恐れたり欲に負けたり、まったく忙しい日常である。

 

Illustrated by 希鳳

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です