呪いの女王里香(リカ)ちゃん

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時間は我々に対して平等に与えられている。そして一日は24時間と決まっている。そんなことは分かりきっているし、その枠組みの中で生きてきたのだから、今さらジタバタする気もない。

だがなぜか意思に反して、やめられない止まらない状況に陥ってしまったのだ。――その罠とは、アニメだ。

 

アニメを見る趣味など元からないわたし。せいぜいテレビアニメの劇場版が始まると、気が向いたときにネタで映画館へ向かう程度の関心レベル。

しかし海外へ行くとアニメとの距離がグッと近づく。海外は日本と違いチャンネル数が非常に多い。世界のニュースなど地域ごとにいくつも選択できるし、金融や経済、政治専門チャンネルも多数ある。

 

とはいえやはり安心できるのはアニメだ。こちらもいくつかある選択肢の中で、わたしのお気に入りは「カトゥーン・ネットワーク」。24時間延々とアニメを流してくれるので、時差ボケで眠れないときも、お金がなくて外へ出かけられないときも、部屋にこもってずっとアニメを観ることができる。

日本ではケーブルテレビ以外で無料視聴することは難しいため、引きこもるには金が必要となるが、海外ならばたやすく籠城できるわけだ。

 

カトゥーン・ネットワークの中でも、とくにお気に入りは「ファミリー・ガイ」という、日本ではとても放送できないコメディーアニメだ。グリフィン一家が主人公となる作品だが、登場人物全員が「難癖」を抱えている。人種差別に障がい者差別、セックス依存症から妄想癖などなど、ピーーーの連続でとてもじゃないが日本では楽しむことのできない作品。

 

だがこのアニメのいいところは、そういう「まともじゃない」人間ばかりで構成されているところ。皮膚の色や手足の欠損、宗教の違いから知能指数まで、タブーとされる事柄をズバズバと痛快に描いており、そういう人々が「普通に」暮らしている設定なのだ。

もしもこのような差別的状況のアニメを日本で作るなら、せいぜい貧乏人と金持ちくらいしか登場させられないだろう。だが、いま流行りの多様性とかダイバーシティという言葉、それ自体が「差別がある前提」ということに気づいているのだろうか。

「差別はよくないから、多様性として受け入れようね――」

つまり差別あっての多様性というわけだ。

 

まぁそんなこんなで刺激的かつ非日常的、ありえないトラブルのオンパレードをブラックジョークで描く「ファミリー・ガイ」。海外へ行ったらぜひ視聴してもらいたい。

 

 

そして話は日本にもどる。わたしが、トイレにも行けず仕事も再開できない状況に追いやられた原因は、友人の一言が発端。

「この牙だらけの化け物、リカちゃんて言うんだよ」

メッセージとともに送られてきたのは、顔に目鼻は付いておらず、ほぼ口でできている化け物のイラスト。正確には、ほぼ口から飛び出たギザギザの牙がチャームポイントの化け物だ。どうやらこいつの名前がわたしと同じ「リカ」と言うらしい。

(うぅむ、なぜに漢字まで同じなのか・・・)

偶然にも流行りの映画の化け物と同じ名前を持つわたしは、その謎を解明するべく、アマゾンプライムでテレビ放映分を一気にさらうことにした。そのアニメの名前は「呪術廻戦(じゅじゅつかいせん)」。

 

そしてこれが運の尽きとなった。次から次へとバトンが渡されるため、トイレへ行くどころか洗濯機が止まったにもかかわらず干すことができない。柔術着が臭くなるのは避けたいが、かといって一時停止をしてまで干しに行く勇気もない――。

こうして気づくと、翌日の早朝になっていた。

 

「リアタイじゃないんだから、ちょっと止めて用事を済ませればいいじゃん」

そんなことは分かっている。だがわたしは、だったらその分すらも先に進めたいのだ!これこそが、テレビアニメを一気に観るという真の恐ろしさ。何を差し置いてでも先へ進みたいという欲望に駆られ、理性を失い己を制御できなくなるのだ。

 

いま思えば海外アニメは、BGM代わりに流しっぱなしにしていた。なかには心を動かされる作品もあったかもしれないが、多くはコメディー路線でバカバカしさを売りにしており、真剣にじっくり観る必要などない。

だが日本のアニメはどうだ。生理現象すら食い止めるほどの訴求力がある。視聴者が目を離した1秒間に、見落としてはならないヒントが隠されていた――という巧妙さこそが、わが国が世界へ誇るアニメ文化の醍醐味。

 

こうなったらすべて見終わるまで、通常の社会生活を営むことは困難となる。

 

 

結局のところ、わたしは自分と同じ名前の化け物のエピソードを消化するためにも、映画館へ行かなければならないようだ。

日本のアニメ制作者よ、頼むから力作を世に送り出さないでくれ。このままでは睡眠不足と仕事との狭間で、廃人になりかねない。

 

サムネイル by 希鳳

 

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