(こうやって脱皮するのか・・)
友人が飼っている「ヒョウモントカゲモドキ」の脱皮の様子を、彼女のインスタを通じてジッと見つめる。コイツのカラダはなんというか、潤いとツヤのある柔らかなラバーとでもいおうか。触れたことがないので硬いのか柔らかいのかはわからないが、どちらでもしっくりくる見た目をしている。
おまけに手羽先のブツブツ(毛穴)のような小さな鱗(?)で全身覆われているが、あれはどんな手触りなのだろうか。気にはなるが、感触を確かめたいとまでは思わない。
ゴルフクラブのグリップ程度の大きさ(想像)のソイツは、半透明の皮タイツをひらひらさせながら、瞬きもせずにカメラを見つめている。そして少し時間が経ち、友人が新たな投稿をした。
「なんかきれいに脱皮食べないなぁ」
「普段は残さず食べるのに」
なんという衝撃ワード!脱皮を食べる?残さず食べる??――そんなものを残したとて、お母さんに叱られはしないだろうに!
念のため、読み間違いではないかと目をこする。
(いや、たしかにそう書いてある・・)
貪欲なのかキレイ好きなのか、ヒョウモントカゲモドキは剥がれた自分の皮をモシャモシャ食べるのだと知った。
しかしどう見てもレース、いや、ティッシュのようなフワフワの脱皮をまとった爬虫類の映像でしかなく、シュール。むしろ全身タイツを脱ぐかのように、完璧にすべての皮が浮き上がることに感動した。
それと同時に微かな親近感を覚えた。なぜならわたしは、年に数回脱皮するからだ。
朝起きてコンタクトを着けると、唇が真っ白になっていることに気づく。上も下も、大福餅の白い粉がついたかのように見事に真っ白。指で触れると、それはもはやわたしの唇ではなかった。
(あぁ、脱皮か)
不思議なことに浮き上がった唇の皮はガサガサしていない。多少のパサつきはあるが、そこまで乾燥に酷使された様子はみられない。
冬は乾燥の季節、リップクリームが必需品となる。とはいえ乾燥で唇が乾き、皮がめくれる程度の状況を「脱皮」とは呼ばない。あれは単に「皮がめくれた」だけだ。だがわたしは違う。季節に関係なく年に数回(主に2回くらい)、唇が脱皮するのだ。それこそ、ヒョウモントカゲモドキの「ソレ」同様に、唇すべての皮がキレイに浮き上がり、ペロンと剥がれるのだ。
もちろん、痛くもなければかゆくもない。昨晩までは普通に張り付いていた唇の皮が、数時間のうちに唇本体から離脱し浮き上がるのだ。指でツンツンすると脱皮が動く。それをそっと摘まみ、ペリペリとキレイに取り除いた。
こうして唇の脱皮の数時間後に、友人のヒョウモントカゲモドキの脱皮の様子を見たわたしが、アイツに親近感を覚えずにはいられなくなった気持ちも理解できるだろう。
だがわたしは人間だ。さすがに自分の脱皮を貪り食う勇気はない。まぁ食べたところでタンパク質の残骸なわけで無害だが、食べ物ではないものを食べるほど空腹でも貧乏でもないので、今のところはやめておこう。
「脱皮」という意外な共通点から親近感が生まれた、爬虫類と人間のお話でした。
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